Ep.6 チェーンフレイルの修理
「こんちわーまいどありー。先日のチェーンフレイルお届けにあがりましたー」
工房の丁稚奉公の少年が修理依頼品を納品に来た。
「あいよ。あい、受け取りのサイン。いつもご苦労さん。これもってきな。」
店主は少年にリンゴを2つ渡した。
「ありがとうございます!すいません、配達まだあるんで。ゆっくりできなくて」
「いいってことよ。気にすんな。早く一人前になれよ!」
「はい、まいどありがとうございます、それじゃ失礼します!」
「おう、まいどあり」
少年は今日も元気だった。
「俺にもあんな日々があったなあ。少年、すくすく育ってくれよ」
店主は目の前のチェーンフレイルに目を落とした。
「あ、勢いに任せてしっかり検品しなかったな。ま、大丈夫だと思うけど」
切れていたチェーンはしっかり繋がっていた。振ってみた感じも悪くない様だった。
「よし。これ以上は確かめようがねえしな。さて、あの兄ちゃん、ほんとに今日受け取りにくんのかな」
店主は閉店時間のほんの少し前まで待っていた。
「なんだ、こねーのかよ。急かしておいて。ふぁーあ。」
あくびをして呟く。
「あんたー!ご飯よー!」
店主に妻の声が超えた。
「おう!……。飯できちゃったな。」
店の扉から首を出して周囲を見渡した。
「あ〜もう今日は絶対来ない、来ない!もう店じまいだな!」