Ep.58 オープニングセール その21
●前回のあらすじ:
地味な女社長は、理不尽な竹槍完売勝負を承諾してしまった。
店主は絶望するが、営業マン風の男は何か妙案があるのかと社長に尋ねた。
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに
・地味な女社長: 前作主要キャラの一人ターニャ・レニ・ヴェンツェル«Tanja Leni Wenzel»。田舎育ちで地味な服装だが男爵号を持つ貴族
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?
●その他の人物:
・刀のお嬢様: 女社長ターニャと同様に前作の主要キャラの一人。公爵令嬢ユア・スワーネリ・アルンスタ・ガコエワ«Jua Svanhild Arnstad Gakoeva»。先王から聖勇者の称号を授かった冒険者。武器は東国刀で二刀流。現在は行方不明になっていることがターニャから言及されている。(前作では「ゆあ・スヴァンヒルド」と表記)
・高貴な女聖職者: ですわ口調で、相当なお嬢様と思われる高貴な聖職者。インヴィリ«Yngvild»と名乗った。
本作でターニャが店主に武器屋再開を持ちかけたのが、前作の魔導車レースの数ヶ月後という時系列になっています。
軒先への商品陳列と引き換えに、竹槍百本を一週間で完売しろという、この裏通りの顔役からの勝負を受けた地味な女社長だが、負ければ店をたたむことになる。
武器屋としては商品にならない竹槍を売るという理不尽な戦いを了承したならば、社長には何か妙案はあるのだろうか。営業マン風の男はそれを尋ねたのだ。
「え?妙案?そうね。この通りの住人向けに、武器屋の広報を兼ねて、ウチの湯沸かし器のセールスをするって言ったじゃない?それを使うのよ」
「は?」
「じゃあ、説明するから、私に合わせなさい」
社長は自信あり気な笑顔でウィンクすると、低くかすれた声で、かつ不思議なアクセントで喋り始めた。
「ヴェンツェルグループ、湯沸かし器のご案内です……。いつでもお湯が使える、すご〜く便利な商品なんですよ?」
「え?何ですか?」
「いいから、合わせて」
「あ、はい。……すごおい。でも、お高いんでしょ?」
「いえいえ、高くはできません……」
「えっ?お安くなるんですか?社長〜、ありがと〜う!でも、そこの武器屋さんが襲撃されたってて聞きました。物騒じゃないですか?」
「防犯アイテムの竹槍もおつけしまーす……」
「夫婦で暮らしてるんですけど……」
「二本おつけします……」
「ええ!?すごおい!でも、セットになったらお高いんでしょ?」
「いえいえ、高くはできません……。ヴェンツェルグループ湯沸かし器・竹槍セット初回限定価格……」
店主が急に立ち上がった。
「いや、ないでしょ」
店主は眉間にシワをよせて更に迫った。
「設置工事費用はどうするんですか!工賃は!」
社長は余裕の表情だ。
「初回限定で、工賃無料のご案内です……」
店主は驚きを隠せなかった。
「えええ!社長、ありがと〜」
「ぎゃああ!社長!工賃無料はダメです絶対!店長さん、あなたはツッコミでしょ!?」
営業マン風の男の指摘に、店主はハっとした表情で立ち尽くした。だが、社長は余裕で微笑んでいた。
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