Ep.55 オープニングセール その18
●前回のあらすじ:
お店がオープンすると、ギルドの事務長と受付嬢の姐さんが、新人冒険者を引き連れてやってきた。
しかし、店主の元妻と姐さんのバトルが始まった。
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに
・地味な女社長: 前作主要キャラの一人ターニャ・レニ・ヴェンツェル«Tanja Leni Wenzel»。田舎育ちで地味な服装だが男爵号を持つ貴族
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?
●その他の人物:
・刀のお嬢様: 女社長ターニャと同様に前作の主要キャラの一人。公爵令嬢ユア・スワーネリ・アルンスタ・ガコエワ«Jua Svanhild Arnstad Gakoeva»。先王から聖勇者の称号を授かった冒険者。武器は東国刀で二刀流。現在は行方不明になっていることがターニャから言及されている。(前作では「ゆあ・スヴァンヒルド」と表記)
・高貴な女聖職者: ですわ口調で、相当なお嬢様と思われる高貴な聖職者。インヴィリ«Yngvild»と名乗った。
本作でターニャが店主に武器屋再開を持ちかけたのが、前作の魔導車レースの数ヶ月後という時系列になっています。
「な、何でアンタがそんなことを知ってるんだい……。ま、まさかウチのを誘惑したんじゃないだろうね、この泥棒猫!」
ギルド受付嬢の姐さんは、しらを切った。
「何の証拠があるの?だいたい、男が他の女にたらしこまれるとしたら、恋人や奥さんに魅力も努力も足りないってことかも」
「な、なんだって?」
「それに武器屋の女将が、私の服装程度で下品なんて言ってどうするの?女冒険者なんて、みんな露出狂みたいな格好じゃない。こんなので驚いてるんじゃ、私のほうが適任じゃない?」
小競り合いを目立たせまいと、口調は穏やかなのに、だんだんヒートアップしていく二人の言葉の内容が店主の注意を引いた。彼は地味な女社長とギルド事務長の立ち話に同場しながら、背中から聞こえてくる女の小競り合いに聞き耳を立て、何が起こっているのか把握に努めた。
「あんたみたいな女狐なんか、火属性の魔法で焼かれてしまえばいいんだよ」
「何よ。あなたなんて、焼いたら焼豚なんだから」
一体どうして初対面の二人が、女狐だの焼豚だのと罵り合っているのだろうか。何か非常にまずい事になっているのは間違いない。
「あーあー」
高揚する二人の殺気に、元妻に抱かれた赤ちゃんが反応し始めた。ギルドの姐さんは、赤ちゃんの顔を覗き込んだ。そして、人差し指を出して、赤ちゃんの鼻筋をそっと撫でた。
「あらー、可愛い子でちゅねー。でもパパには似てないから、ママに似たのかなあ?あれれえ?このお鼻は、ママのとも違いまちゅね〜。どうちてでちゅかね〜」
店主はどっと汗が出てきた。社長たちの会話はもう耳に入ってこない。聞こえるのは後ろで起こっている小競り合いだけだ。今、托卵のカマをかける必要なんてないだろう。
「なっ……どどど、どういう意味だい!」
店主は、流石に二人を振り向くと、勝利を確信したかのような姐さんのニンマリ顔と、狼狽する元妻の姿が目に映った。
元妻の托卵を強く疑わせる反応と、女には見せる姐さんの攻撃性。店主は女という存在に混乱した。
「怖い、女は怖い……!」
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