Ep.50 オープニングセール その13
●前回のあらすじ:
突然現れた全身ピンクの服に身を包んだ少女は、バイトが採用されなければ、父親の借金の方で身売りされると言う。
採用するという社長と、人件費を考える営業マン風の男で意見が割れた。
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに
・地味な女社長: 前作主要キャラの一人ターニャ・レニ・ヴェンツェル«Tanja Leni Wenzel»。田舎育ちで地味な服装だが男爵号を持つ貴族
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?
●その他の人物:
・刀のお嬢様: 女社長ターニャと同様に前作の主要キャラの一人。公爵令嬢ユア・スワーネリ・アルンスタ・ガコエワ«Jua Svanhild Arnstad Gakoeva»。先王から聖勇者の称号を授かった冒険者。武器は東国刀で二刀流。現在は行方不明になっていることがターニャから言及されている。(前作では「ゆあ・スヴァンヒルド」と表記)
・高貴な女聖職者: ですわ口調で、相当なお嬢様と思われる高貴な聖職者。インヴィリ«Yngvild»と名乗った。
本作でターニャが店主に武器屋再開を持ちかけたのが、前作の魔導車レースの数ヶ月後という時系列になっています。
営業マン風の男は、いつもの冷静さを欠いて荒々しくなってきた。
店主としても、ピンクの娘の話には疑問を抱かざるを得なかった。何故ならば、身売りされるような借金を、アルバイトでどうにかできるのだろうかという率直な疑問が湧いたからだ。もしその前提が崩れれば、家族の境遇の信憑性にも話が及ぶ。
「あのー、私もこの娘の話は信じられないとは言いませんが、検証の余地はあるのかなあと思います」
「そ、そんなあ、私、嘘なんかついてませんよ?それに、とてもお役に立出るんです!ほら、この盾がかわいくなるように、ピンクの絵の具で塗っておきました!わあ、かわいい!」
ピンクの娘が指差す軒先に置かれた陳列台の一角には、ピンクに塗りたくられた革の盾が無残な姿になって置かれていた。それを見た営業マン風の男は頭を抱えた。
「あ、あ、あああ……。しょ、商品が……。しかも革!革に絵の具が染み込んで元に戻せませんよ!」
「何よ。良かれと思ってやったことじゃないのよ。それに単価の低い商品で良かったじゃないの?」
「社長!?完全にそっち側ですか!?」
ピンクの娘は、おもむろに指を指した。
「それに、さっき大通りで買ってきたお魚も陳列しました!」
その先には、ザルにのったトラ鯖が陳列されていた。
「あ!ホントだ!脂がのって美味そうだなあ!今日の夕飯は焼き鯖定食かなあ?……っておい、武器屋で生魚は売らねーだろ!生魚は!ザルまでもらってきてんじゃねー!ドリップ滴ってるから!」
営業マン風の男は、ますますヒートアップして、体の動きが角ばってきた。店主は彼の肩に手を当て沈静化を試みる。
「ちょっと落ち着きましょう、深呼吸、深呼吸」
「落ち着いていられません!人件費大変なんだから、絶対ダメ!絶対に!」
「あんたねえ、ケチな男は嫌われるわよ?」
「それでもダメです!私が好かれても店の帳簿は良くなりません!」
「んもう〜。頭硬いわねえ」
「ちょっと落ち着きましょうか?」
営業マン風の男の頑な態度に思いつめたピンクの娘は、両拳を胸の前で握って声を張った。
「ううううっ!分かりました!じゃあ、もう私!頑張って私が商品として陳列されます!かわいい、かわいい看板商品です!これでどうでしょうか!」
「「え!?」」
「なるほど!パーティーに一人、不思議なピンク少女はいかがでしょうかあ!?ダレたパーティーに緊張感が蘇ります!……って、おい!身売りが嫌でバイトしたいんじゃなかったのかよ!」
「あ!そうだった!」
ズコっ!店主と社長は膝から崩れた。
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