Ep.44 オープニングセール その7
●前回のあらすじ:
アルバイト志望の少女は、道具屋と間違えて来店したが、どうしても武器屋でバイトしたいと言う。
地味な女社長はそんな彼女を追い払った。
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに
・地味な女社長: 前作主要キャラの一人ターニャ・レニ・ヴェンツェル«Tanja Leni Wenzel»。田舎育ちで地味な服装だが男爵号を持つ貴族
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?
●その他の人物:
・刀のお嬢様: 女社長ターニャと同様に前作の主要キャラの一人。公爵令嬢ユア・スワーネリ・アルンスタ・ガコエワ«Jua Svanhild Arnstad Gakoeva»。先王から聖勇者の称号を授かった冒険者。武器は東国刀で二刀流。現在は行方不明になっていることがターニャから言及されている。(前作では「ゆあ・スヴァンヒルド」と表記)
・高貴な女聖職者: ですわ口調で、相当なお嬢様と思われる高貴な聖職者。インヴィリ«Yngvild»と名乗った。
本作でターニャが店主に武器屋再開を持ちかけたのが、前作の魔導車レースの数ヶ月後という時系列になっています。
あっけにとられた地味な女社長は、バイト志望の少女が駆け去って行く後ろ姿を呆然と見つめ続けていた。少女が躓いて転ぶの姿に「変な娘。追い返して正解だったわ」と漏らした。
「どうしたんですか?」
店の中から出てきたスタッフが社長に尋ねたが、彼女は「何でもないわ」と答えるのみだった。
「社長」
後ろから聞こえた声に、地味な女社長が振り向くと、営業マン風の男だった。
「あら、おかえり。どうだった?」
社長は、そう尋ねたものの、彼の表情が明るくないことは一見して感じ取れた。いや、むしろ苦々しさを噛み締めているような雰囲気がある。おそらく良い報告ではないだろう。
「それが、近所の店舗さんたちからの同意は得たのですが、アパート居住者たちの意見を統合する顔役さんと折り合いが付きませんでした……」
「そう。で?何の問題が?」
「彼が言うには、我々の良いようにルールを変えようとするのが気に入らない様でした。不可抗力による臨時の処置であることは伝えたのですが……」
営業マン風の男は、軒先に並べられた展示台に目を落とした。
あのガラの悪い冒険者に店の中をメチャクチャにされたために、こうして外に商品を展示させるを得なくなった。こんな理不尽な状況なんだから、臨時のルール逸脱が認められても良いのではないか。確かに通りの景観は大切だが、今回はやむを得ないたろう。相互協力ができないのなら、あちらにもしものことがあっても協力できない。
彼の脳裏には、そんな思いが走っていた。だが、社長はあっさりしていた。
「あらそう。取りあえず準備を続けるわよ」
「よろしいのですか?」
「仕方ないわよ。これが駄目なら、今日は、いいえ数日は店を閉めて中を修理しないといけないわ。……それか、止められるまで営業するかのどちらかよ。とにかく、今は作業を継続。私が直接話すから案内しなさい」
社長は埃を落とすように手や服をはたき、「じゃあ、あなたは店の前をお願いね」と、横にいたスタッフに声をかけた。そして、営業マン風の男が来た方向へと歩き始めた。
「社長!ご案内します!」
営業マン風の男は駆け足で社長の前に出ると、彼女を先導するのだった。
二人を見送ったスタッフは、社長の服装を案じた。真っ赤なブラウスとジャケットに、鮮やかなグリーンのスカートというスイカのようなカラーコーディネートが気になっていたからだ。
「社長、そのおかしな服装で……?」
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