Ep.43 オープニングセール その6
●前回のあらすじ:
地味な女社長が軒先で商品陳列していると、アルバイト志望だという少女が訪れた。
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに
・地味な女社長: 前作主要キャラの一人ターニャ・レニ・ヴェンツェル«Tanja Leni Wenzel»。田舎育ちで地味な服装だが男爵号を持つ貴族
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?
●その他の人物:
・刀のお嬢様: 女社長ターニャと同様に前作の主要キャラの一人。公爵令嬢ユア・スワーネリ・アルンスタ・ガコエワ«Jua Svanhild Arnstad Gakoeva»。先王から聖勇者の称号を授かった冒険者。武器は東国刀で二刀流。現在は行方不明になっていることがターニャから言及されている。(前作では「ゆあ・スヴァンヒルド」と表記)
・高貴な女聖職者: ですわ口調で、相当なお嬢様と思われる高貴な聖職者。インヴィリ«Yngvild»と名乗った。
本作でターニャが店主に武器屋再開を持ちかけたのが、前作の魔導車レースの数ヶ月後という時系列になっています。
「アルバイトって、うちじゃ募集してないわよ?」
「そうなんですか?でも、このチラシに……」
「ちょっとかして」地味な女社長は、剥ぎ取るように少女の手からチラシを取ると「ええと……?」と呟きながら文面を目で追った。
内容はアルバイトスタッフの募集要項に間違いはないのだが、それは武器屋ではなく道具屋の求人だった。
「道具屋?これ、ウチじゃないわよ?ウチは武器屋よ。道具屋はお向かいさんね」
「あっ、そうなんですか!?すみません。間違ってしまいました!」
少女は目を丸くして胸の前で両手を握ると、その拳をぷるぷると振るわせた。そして、社長が差し出した求人チラシを受け取ると、一礼してから振り向き、向かいの道具屋にパタパタと駆け込んで行った。
道具屋のドアが勢いよく閉まると、社長は「まったく、そそっかしいわね」と言いながら陳列された商品を綺麗に並べる始めたのだった。
その後、二分か三分が経過すると道具屋の扉が開く音がした。社長がその音の方を向くと、扉から出てきたのは、先ほどの少女だった。社長は、目が合っちゃった、と少し気まずさを意識したが、逆に少女は笑顔になって駆け寄ってきた。
「すみませーん!」たいして幅の広い道でもないのに、少女は馬鹿でかい声で叫んだ。
「な、なによ?面接はどうしたの?もう終わったわけ?」
社長はたじろいだが、少女はその様子にかまいもぜず、社長の前に立って再び胸の前で両手を握った。そしてキラキラとした瞳で話し始めた。
「あの!私、ここの武器屋さんで働きたいので断ってきちゃいました!」
「え!?いや、だから、ウチでは募集してないって言ったわよね?」
「そうなんですか?」
「そうよ。仕事が必要なんでしょ?事情を説明すれば、今ならまだ道具屋さんも面接してくれるわよ。何なら私が口をきいてあげようか?」
しかし、少女は揺るがなかった。
「あの、私、この武器屋さんで働きたいんです!」
「だからぁ、募集はしてないのよ。第一何でウチなの?」
「一目見て、とっても雰囲気が良くて、いいお店だと思ったので!」
社長は自分の店が褒められ、満更でもない表情に急変した。
「あらそう?何だ、わかってるじゃないの」とは言ったものの、その表情はすぐに曇った。
「え?待って。今、お店の中はボロボロで作業中じゃないのよ。雰囲気なんてないわよ」
社長は、開いたドアから覗く店の中を指さすと、大工作業が見え隠れする痛んだ店内が見えた。大男たちが、台に木材を乗せて鉋をかけたり、棚を組んだりしている様子が少女にも見えた。そして社長は続け様に言った。
「そういうことだから。ね?ほら、道具屋さん行くわよ?」
社長が少女の手を引こうと手首に触れると、少女は激昂して社長の手をはらった。
「私じゃダメなんですか!?それなら、私じゃダメな理由を説明してください!じゃないと納得できませぇん!」
社長は困った。そして思った。この娘、頭が弱いのね。それに、よく見ると服装も変だわ。上も下もフリフリのピンクでミニスカートに白タイツ。真っ赤なヘアバンドも趣味が悪いわ。もう少し落ち着いた色味にするとかできないのかしら。まぁそれは良いとして、これはもう、さっさと追い返すのが得策ね。
そう結論づけると、諭すように説明を繰り返した。
「あのさあ、ダメっていうか、募集してないって言ってるじゃないのよ。ほら、もう道具屋さんに行くか、帰るかなさい?」
すると、少女は胸の前で握っていた拳を左右に広げて、顔の横で左右互い違いに上下させ始め、高く通る声を発した。
「もぉいいですぅ!ちちんぷいぷいのカンカンですぅ!うわぁぁぁーん!」
こうして、少女は泣き叫びながら走り去って行ったのだった。
「な、なんなのよ一体……」
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