Ep.40 オープニングセール その3
●前回のあらすじ:
武器屋オープン当日。
ガラの悪い冒険者が店に訪れ、商品を破壊し始めた!
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに
・地味な女社長: 前作主要キャラの一人ターニャ・レニ・ヴェンツェル«Tanja Leni Wenzel»。田舎育ちで地味な服装だが男爵号を持つ貴族
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?
「壊れろゴルァ!」
ガラの悪い冒険者の両手に握られたバトルハンマーが店に陳列・ディスプレイされた数々の真新しい商品に振り下ろされ、耳をつんざくような音と共にぐちゃぐちゃになっていく。
受話器をおいた地味な女社長ターニャはガラの悪い冒険者に詰め寄った。
「あなた、よしなさいって言ってるじゃない!」
「んだ?さっきから頭の悪そうな服で何楯突いてんだゴルァ!?」
「社長!いけません!」
店主もまた、営業マン風の男と同じように冒険者と社長の間に入った。
「おっさん、あんたも懲りねえな、へっへっへ……」
「……?」
「っせんだゴルァ!」
ガラの悪い冒険者の前蹴りが店主の腹に突き刺さった。店主は「ぐふぉあ!」という声と共に膝をつき前に倒れ込みプルプル震え始めた。
「ちょ、ちょっと!」
「なあ、ねえちゃん、俺と一緒に楽しいことしようぜゴルァ?でははは!」
ガラの悪い冒険者の手が、女社長の髪に伸びた。
「さ、触らないで!」
女社長が冒険者の手をはたくと、冒険者はそのまま手首を掴んだ。
「抵抗しようってのか、可愛いじゃねえかゴルァ」
ガラの悪い冒険者がそう言った時、店の扉が開いて呼び鈴が鳴った。入ってきたのは筋骨隆々の湯沸かし器設置作業員の二人だった。
「おはようござ……何だ?店が!あ!お前!ターニャ様に何してんだ!?」
「お、どうした?あ!何だ?店がぐちゃぐちゃだぞ!」
二人うち一人は、のっしのっしと歩いて冒険者に近いた。女社長が「やってしまいなさい」と言うと、男は「はい」と静かに言った。
「んだゴルァてめえ?」「社長を離せ」「あ!?」
ガラの悪い冒険者が作業員の言葉に従うか従わないかの時間的余裕などなく、作業員は片手で女社長の手首を掴む冒険者の手首を握り、もう片方の手で指を引き剥がし、そのまま逆関節まで一気に持っていった。すると鈍い音と共に指の何本かが手の甲まで反り返った。
「ぎゃあああああ!」ガラの悪い冒険者の叫びが店内に響く。
そしてそのまま手首を捻り、今度は腕をキメたと思うと、そのまま力任せに肩関節を外してしまった。
「ぐぎゃあああ!ああっ!あああっ!」ガラの悪い冒険者はさらに悶絶した。
その作業員は、落ちていた商品の鞭を手に取り、無力化されたガラ悪い冒険者をぐるぐるに縛り始めた。それを見たもう一人の作業員は「社長、店長さん大丈夫ですか?……お前、相変わらず情けねえな、大丈夫か?」と、二人を案じながら、悶える営業マン風の男を渋く心配していた。
奥の扉が開いて「一体何の音だい?」と店主の元妻が出てきたが、店の惨状を見るなりすぐに「ちょっと、こりゃ一体どうしたんだい!?」と立ち尽くした。
すると、忙しない馬の蹄の音が外から聴こえ、店先でその音が消えた。そしてすぐに再びドアが開き呼び鈴が鳴ると、数名の武装した男が入ってきた。ネイビーブルーを基調とした軍服調の着衣に軽鎧と軽兜を身につけ、すでにサーベルを抜刀している。彼らが王都憲兵隊、通称『都憲』だ。
「動くな!王都憲兵隊だ!男爵様、お怪我はありませんか!?」
「と、都憲!?男爵様って?」店主は誰のことが判らず店内を見渡した。
しかし、すぐに女社長が片手を上げて憲兵に自分を示すと、店内の惨状について説明を始めた。店主は「社長さんって、貴族だったんだ……」と半ば唖然としながら説明の様子を窺っていた。
憲兵隊は小一時間ほど事情聴取や現場の調書をとり、ガラの悪い冒険者を連行して行った。
店主と営業マン風の男の二人は、作業員に支えられながら、改めて荒れ果てた店内を見渡した。
「ああ……一生懸命準備したお店が……。これ、どうしましょうか……。もうすぐオープンの時間です……」
最後までお読みいただきありがとうございます。
もしよろしければ、↓から★★★★★をいただけるとよろこびます。
次回もご期待ください。




