Ep.38 オープニングセール その1
●前回までのあらすじ:
一度は武器屋をつぶした店主だったが、出資を受けて再オープンに動き出した。
営業で冒険者ギルドに行くと、トラブルや誤解で暴行を受けたが、それを乗り越えた。
いよいよお店は再開される。
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに
・地味な女社長: 地味な服装の若い女。どのような会社を経営しているかは不明
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?
「おはよう。いよいよオープンね」
武器屋の再オープン当日、地味な女社長は店主を激励するために店舗を訪れた。
「社長!おはようございます。おかげさまでオープンに漕ぎ着けることができました。本当にありがとうございます……って、どうなさったんですか、その服装は?」
地味な女社長は、今日は派手だった。目の覚めるような真っ赤なブラウスにジェケット、熱帯植物のようなはっきりとした明るい緑色のスカートだった。いつも地味な服装なのに、急に慣れないことをして不自然になった典型例だ。
「まるでスイカのようですね」店主は思わず口に出してしまった。
「……同じことを妹にも言われたわ。変かしら?」
店主は変だと思っているが、さすがにここは一つ思いとどまった。
「いや、へ、変というか、……そうだ、武器防具業界ではあまり赤い色の服は着ないんです。流血みたいな雰囲気になっちゃいますでしょ?縁起が悪いというか」
「え?そうなの?土建屋と同じなのね。ほら、労災が多い職種だからそんな感じなのよ。そうだわ、オープンともなれば同業者の方々がお祝いに来るかもしれないわね。ただでさえ出資者が女なのに掟破りな服装でいたら、舐められると言うか、お店に迷惑かけちゃうわ。ちょっと魔道通信機借りるわよ。着替えをとって来させないと……」
そう言うと、今日は派手な地味な女社長はカウンターに向かい、魔道通信機の受話器をとって操作した。
「あ、もしもし?私。西区の武器屋の件だけど、確か今日も湯沸かし器の設置工事の続きをやるって言ってたわよね。担当者に私の着替えを持たせてくれるかしら?まだ家に妹がいるはずだから、言えば出してくれると思うわ。なんかね、赤がダメらしいの、ほら土建業と同じで。私、今日は華やかな服装にしちゃったじゃない?だからいつもの感じので。いつもの。え?はぁ?地味?地味じゃないわよ!失礼ね!言い方ってもんがあるでしょ?じゃあすぐ持ってきなさいよ!」ガチャア!
社長は頭にきたらしく、受話器を叩きつけてガチャ切りしていた。
「ったく……。そうだ、それより大変だったみたいじゃない。体は大丈夫なの?」
店主は社長の沸騰とその収まり具合に唖然としながら答えた。
「あ……はい。担当さんが優秀な聖職者さまを連れてきてくれて、この通り全快しました。そういえば、意識がない間のことをうっすらと覚えているんですけどね。私は河原のようなところを歩いていて、そこで刀のお嬢様とお会いした気がします。不思議ですね」
「刀のお嬢様って……もしかして」
「ええ。いつか居酒屋に社長といらっしゃった、いつも東国刀を帯びてらっしゃるお嬢様です。以前、当店にも何度かお見えになりましてねえ。お元気にされてますか?」
「実はあの娘……一緒に住んでたんだけど、一年前から行方不明なのよ。それこそ居酒屋に行った少し後に危険な仕事を頼んじゃって、その後……。向こうの世界で店長さんと会ったってことは、やっぱり、もう生きてないのかな……」
地味な女社長が自信のない表情を見せた。店主にとって、それはいつも強気な彼女が見せる初めての表情だった。しかし、社長はそう言った後、表情を改め首を横に振り「ううん、きっとユア«Jua»は生きてるわ」と一人呟いた。そして店主に言った。
「もしあの娘がいたら、今日もお祝いに来ていたと思う。この辺の裏通りを散策して、変わった物を買うのが好きだったから」
店主は笑顔を見せた。
「はい。また来ていただいた時に喜んでいただけるお店になるよう、頑張ります」
「ふふ、そうね。でも、あの娘が喜ぶ店じゃ、マニアックすぎて経営が傾くわよ?」
開店前の出入り口のドアが開き、呼び鈴が鳴った。営業マン風の男だ。
「おはようございます。魔導車、裏口の方に駐車させていただきました」
「相変わらず駐車にも時間かかるのね。やっぱり私が運転したほうがよかったんじゃない?」
「そんな。一緒に来るのに社長に運転なんて。さ、開店まで最後の確認といきましょうか!」
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