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Ep.37 オープン直前 その12

●前回のあらすじ:

心肺停止の店主に除細動装置も限界に来ていた。

しかし高貴な女聖職者の法力で、店主は鼓動を取り戻した。


●主な登場人物:

・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに

・地味な女社長: 地味な服装の若い女。どのような会社を経営しているかは不明

・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに

・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役

・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?

 営業マン風の男が、高貴な女聖職者を大祭殿の寄宿舎まで送り届けようとトラック型の魔導車をかっ飛ばしていた。


「こほん、あなた、さっきからもう少し静かに運転なさいよ」


「よく言われます。申し訳ありませんが、これがどうにもならないのですよ。もう六回は事故ってます、あははは」


「まあっ。大丈夫かしら……」


「それにしても、急なお願いをきいていただき、ありがとうございました」


「礼には及びませんわ。王族の往診で祭殿の勤めが果たされなかったとあれば、それは正すべきことですわ」


 そんな会話を交わしながら寄宿舎前に着き、魔導車を停めた。だが彼女は一向に車を降りる気配がない。そうだ、彼女は高貴なお嬢様故に、ドアが開けられるのを待っているのだ。そう気づいた営業マン風の男は、一旦降車すると反対側に回ってドアを開けた。彼女が降車するのを見てから、荷台を開けて彼女のトランクを取り出して渡した。彼女は静かに「ありがとう」と言うと、寄宿舎の門へと歩き出そうとした。営業マン風の男は、彼女の背中に言った。


「あの!我が店長を救っていただき、本当にありがとうございました。よろしければ、すばらしき恩人のお名前をおききしても?」


 高貴な女聖職者は立ち止まり振り返った。


「え?な、名前?わたくしの名前ですの?」なぜか彼女は焦っていた。


「はい」


「わたくしは、ええと、ガ、いや、オ、いや」


「は?」


「ええええと、名乗るほどの者ではありませんわ!おほほほ」


「ええ?大法術司さまになられるのにそれはないでしょう?かなり立派な高僧さまではありませんか!」


「ああああ、し、しまった……言うんじゃありませんでしたわ……。ええ?そうかしら?うう……。ええ。そそそ、そうですわねぇ、あ……そうですわ。こほん、わ、わたくし、大祭殿の法術士でインヴィリ«Yngvild»と申しますわ。では、ごきげんよう、お大事になさい。おほほほ……」


 彼女はそれだけ言うと、足早に門をくぐり、営業マン風の男の前から姿を消した。


「何だ?ていうか、一体どこのお家のインヴィリお嬢様だ……?」



 営業マン風の男がギルドに戻ると、医務室では店主が意識を取り戻していた。ベッドで上半身を起こしていて、傍には受付嬢の姐さんとギルドの女聖職者が横に座っていた。


「店長さん!目が覚めたんですね!」


「いやあ、すみません。大事にしてしまって。でも、もうすでに歩けそうな感じがします。彼女から聞きました。すごい聖職者さんが治してくださったって」


「ほんとですよ。一時はどうなることかと。その聖職者さま、何でも大法術司になることで内定されてるらしく、ものすごい人ですよ」


 受付嬢の姐さんが尋ねてきた。


「その大法術司って言うのは、そんなにすごいの?」


 ギルドの女聖職者が答えた。


「はい。私は下級の聖職者ですけど、彼女は私より年下で二十歳そこそこ。それなのにもう直ぐ上級になろうとしているんです。普通は相当な経験を積んだ者でなければなれません。相当な才能をお持ちなんでしょう」


「ええ。それに、空中から杖を出しましたからね。あんなの見たことありませんよ」


「ふうん、そうなのね」


「空中から杖が?どんな杖だったんだろう、わたしも見たかった」店主は興味津々だった。


「彼女の能力より、杖に興味が湧きましたか?それ、武器屋の職業病ですよ!あははは」


「本当ね、店長さん面白い。ふふふふ」


 「いやあ、面目ない」と店主が頭を書いていると医務室の扉が開いて、間違って店主を撲殺しようとした棍棒男が入ってきた。


「今回は本当に済まなかった。あんたの提案を受けて、向こう一年間はあんたの店でメンテナンスと買い替えをやってもらうことにするよ」


「よかった。それはありがとうございます。お互いのためになりますね」


「あと……もし用心棒が必要な時は、俺を指名してギルドに依頼を発注してくれ。報酬を投げ打ってでも、俺が全力であんたを警護するよ」


「そこまでしていただかなくても……。困ったな……」


「いや、俺も男だ。しっかりケジメをつけさせてくれ」


「そうですか。そういうことでしたら、必要な時はありがたくそうさせてもらいます」


 そう言うと、二人は握手を交わしたのだった。この光景を見た受付嬢の姐さんは言った。


「この前のガラの悪いやつとは大違いね!」


「そう言えば、彼はどうなったんですか?」


「彼はギルメンが叩き出してやったわよ」


 それを聞いた営業マン風の男が尋ねた。


「憲兵には突き出さなかったんですか?じゃあ、そのまま自由の身に?」


「そ、そう……ねぇ」

最後までお読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ、↓から★★★★★をいただけるとよろこびます。

次回もご期待ください。

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