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Ep.36 オープン直前 その11

●前回のあらすじ:

意識不明で心停止の店主、除細動装置も効かなかった。

大祭殿では、ほぼ上級聖職者に協力してもらえることになった。


●主な登場人物:

・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに

・地味な女社長: 地味な服装の若い女。どのような会社を経営しているかは不明

・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに

・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役

・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?

 魔導心拍再生装置は限界を超えたチャージで振動し、また発光していた。


「マズイです。取説を確認したところ、チャージ量・千で安定稼働できるのは上のモデルみたいで、このモデルでやると暴発して、チャージ量数千に相当するパワーが照射される可能性があるとのことです!」


「何だと?だが構わん!一発勝負だ!チャージできたら教えてくれ!」


「はいっ!」


「ちょっと待って、店長さんはどうなっちゃうの!?」


 受付嬢の姐さんが心配する声は、医療スタッフには届いていなかった。極限の状態で彼らも視野狭窄に陥っているのだ。そしてまさに今、心拍再生装置の魔石が煌々と輝き、チャージ完了を知らせるブザーが不気味に鳴った。しかし、それと同時に魔石にクラックが入り使用限度に達したことを示した。魔石のクラックからは光が漏れ出し、振動で今にも砕けそうだ。


「チャージ完了しましたが、魔石にヒビが!これが最後の一発です!」


「了解!出力、千から数千!さあ、最後の一発だ、離れろ!動けよ心臓!うおおおおおおっ!」


「や、やめてっ!ダメよ!」


 医療スタッフのリーダーが両手に持っている魔導心配再生装置の小手パーツを上にかざすと、魔導力が溢れて小手が発光した。リーダーの両拳は、眩しい黄金色の光に包まれ、バチバチと放電のような音を出し始めた。そしてリーダーは額に汗が滲む中、目を凝らし、いよいよ装置を振り下ろそうとした。


「いやあああ!」「光ってるけど、大丈夫なのか!?」


 受付嬢の姐さんの悲鳴が医療室に響き渡り、事務長にも疑念が湧いた。だが、その時、医療室の扉が勢いよく開き、それと同時に響いた男の声がリーダーの手を止めた。営業マン風の男だ。


「お待たせしました!連れてきました!どうぞ、こちらです、お願いします!」


 リーダーが息を切らしながら入り口を見ると、お嬢様風の旅装束の若い女が見え、自信とプライドとカリスマに溢れた立ち姿が強烈な印象を放った。

 高貴な女聖職者は、室内の張り詰めた緊張など無関係かのように、冷静につかつかとギルドの医務室に入った。そして横たわる店主を一目見るなり、ギルドの女聖職者に話しかけた。


「見えて?もう魂が抜けかかってますわよ?早くしないと三途の川を渡ってしまいますわね……」


 ギルドの女聖職者は首を横に振った。高貴な女聖職者は「そう」と静かに言うと店主の元に歩み寄った。そして右手を上にかざすと一筋の光が空間を裂き、そこから一本の法術杖が出現して彼女の手に収った。


「おお……。あんな杖の出しかたは見たことないぞ。どう見ても二十歳そこそこだが、あの若さでどんだけ……」事務長が驚きの声をあげた。


 「こほん、少し離れていただけまして?」


 高貴な女聖職者は、そう言って医療スタッフを散らすと、杖を店主にかざした。そのままブツブツと詠唱を初めると彼女の全身が光り、そして、その光が杖の先の魔石に集まったかと思うと、店主に向かって放出された。そのまま数分時が流れただろうか。彼女が「さあ、魂よお戻りなさい」と言うと、店主の全身を包んでいた光が消えた。


「もうよろしくてよ。じきに目が覚めますわ」


 高貴な聖職者はそう言って、手に持っていた杖をどこかに消してしまった。そして営業マン風の男に近づき「送って上げて?」と言った。営業マン風の男は感じ取った。これはかなり高貴な言葉遣いだ。仮に「送って『下さって』?」では、彼女から見て相手のほうが目上になってしまう。だから「送って上げて?」と、彼女を送る行為を献上させるような言いかたになる。これは王族や一部の上級首領などの高級貴族かその家族でもなければ、さらっと出てくる表現ではない。だから、営業マン風の男は妙に改まってしまった。


「かしこまりました。ありがとうございます」


 受付嬢の姐さんや事務長、医療スタッフたちが唖然としている中、二人は部屋を後にした。

 その後、医療スタッフが脈を測ると「心拍、再開してます!」と声をあげた。

 受付嬢の姐さん、事務長、ギルドの女聖職者の三人は、廊下を歩く彼女の背中に感謝の言葉を叫ぶと、彼女は振り向かずに片手を挙げてそれに応え、颯爽と歩き続けた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ、↓から★★★★★をいただけるとよろこびます。

次回もご期待ください。

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