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Ep.34 オープン直前 その9

●前回のあらすじ:

店主が暴行に倒れ一命を取り留めたが、急変し大量の血を吐いた。

女聖職者は祭殿に行き、より上級な回復術を使える者を呼ぶという。


●主な登場人物:

・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに

・地味な女社長: 地味な服装の若い女。どのような会社を経営しているかは不明

・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに

・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役

・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?

 女聖職者と営業マン風の男が中央大祭殿に向かい、医務室では店主の応急処置が進められていた。「呼吸と脈は大丈夫そうだな……!?」懸命な対応で、店主の呼吸は何とか確保されたようだ。


「店長さん……」


 受付嬢の姐さんは心配の表情をしながら、両手で店主の手を握った。どうか死なないで、彼女の背中からはそんな願いが滲み出ていた。棍棒で店主を撲殺しようとした男は、その背中を敏感に感じ取ったのだった。


「な……!姐さん、やっぱり店長とデキてるのか!?」


「こんな時に何言ってんの?私のせいでこうなちゃったんだから、心配して当然じゃないのよ!そんなんだから後先考えず一般人をボコボコにしちゃったんじゃないの?信じられない!」


 受付嬢の姐さんは、微妙にぼかした返答をしながら相手を叱責する女性的な話法でやり過ごした。


「す、すまん……」


「とにかく、君は一旦食堂ででも待機しててくれ。また話ができるようになったら呼ぶから」


 事務長が間に入り、棍棒の男を医務室から追いやった。事務長が店主が横たわるベッドまで戻ると、店主が痙攣し始めた。


「が、がが……、ぐぼぁっ!」


 店主は再び咳き込み、顔を真っ赤にしながら大量の血を吐いた。流れた血液が店主の胸元とベッドを赤く染め、一部が床に滴っていた。


「きゃあ!」受付嬢の姐さんは両手で口元を押さえて叫んだ。


「ちょっと下がって!気道を確保する!」


 異常を察した医療班が走ってきて店主の周りを囲み、すばやく応急手当てを始めた。しかし、すぐに彼の脈を測っていたスタッフが深刻な表情で警告した。


「脈が弱くなってる!このままだと危ない!」



 一方その頃、魔導車で大祭殿へ向かった営業マン風の男と女聖職者は、すでに祭殿のすぐ近くまで来ていた。


「そこの角を右に曲がってください」


「真っ直ぐじゃなくて?」


「ええ。正面ではなく、聖職者用の寄宿舎の出入り口から入ります。私のような同業がいる場合、そのほうが早いですから」


「了解です!」


 大祭殿の正面は、有難い参道を演出するために階段が敷かれていた。祭殿には医療棟もあるが、王都中央大祭殿という言わば国内の総本山を厳かに見せるために、病人や怪我人でさえもこの階段を登って訪れなければならなかった。ところが、裏手の寄宿舎入り口ならば、上り坂を魔導車で駆け一気に上がり、そこは事実上のスタッフ出入り口であるから、聖職者同士の会話で話も早いと言う訳だ。

 営業マン風の男は、寄宿舎入り口付近まで魔導車をかっ飛ばし、女聖職者「ここです!」という言葉で停めた。


「ここで待っていてください。部外者がここから中に入ると、追い出されますから」


 女聖職者はそう言うと、勢いよく門の内側へと駆け入った。そのまま中庭を突っ切り、医療棟の建物まで足を止めなかった。建屋の扉を勢いよく開け、受付の聖職者に詰め寄った。


「すみません、緊急で重篤負傷者を回復させなければならないんです!」



 ギルドの医療室では、店主は尚も危険な状態にあった。


「心拍停止!聖職者はまだ来ないのか!?このままだと死んじまうぞ!てか、この人に家族はいるのか?連絡したほうがいい!おい、あれもってこい魔導力を使った新しいやつ!」


「そ、そんな……!」受付嬢の姐さんは顔が青ざめた。


 医療助手が何かの機材を運んできた。左官の小手のようなものからケーブルが伸び、魔石が光る箱上の機材に繋がっている。事務長は気がついた。


「そうか!少し前に稟議を通した魔導心拍再開装置だな!」


「そうです。雷属性の魔力で心臓にショックを与えて再始動させます。いくぞ、チャージ量、二百だ!」


 医療スタッフリーダーの眼光が鋭く光り、機器を捜査する助手の目にも力が入った。


「チャージ・二百、開始します……!」


 魔石が光り始め、キーンという高い音がしてきた。他の医療スタッフ達は手早く店主の衣服を脱がし始め、彼の胸を露わにした。そして数秒が経つと、箱上の魔導機器からブザーのような音がけたたましく鳴った。


「チャージ・二百、完了しました!」

最後までお読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ、↓から★★★★★をいただけるとよろこびます。

次回もご期待ください。

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