Ep.31 オープン直前 その6
●前回のあらすじ:
店主とギルドの受付嬢の姐さんは、愛の衝動に駆られた!
しかし、ギルドの男性スタッフが近づいて来た!
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに
・地味な女社長: 地味な服装の若い女。どのような会社を経営しているかは不明
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?
「な、何やってんだ?」
男性スタッフは異変に気がついた。だが、彼は幸い受付嬢の姐さんの背中側に位置し、スリットに顔を突っ込んでいることまでは見えない。店主はワンピースが揺れないようにそっと頭を引き抜くと、ゆっくりと立ち上がった。そして、何食わぬ顔を装い挨拶を始めた。
「……お世話になります、西区の武器屋です」
「ぶ、武器屋さん?」 男性スタッフは状況を理解できていない。
「え、ええ。今日はチラシをお持ちしたんです。それで、ついでと言っては何ですけど、先日、受付嬢さんが冒険者に襲われましたでしょ?私も暴行を受けましたけど。そこで、護身用の武器をと思いまして、今、この小型ナイフの装着の仕方をご説明していたところだったんです!」
店主が状況を説明している中、何気ないふりでワンピースを正して男性スタ風のほうを振り向いた。男性スタッフは、店主が差し出した手のひらに乗っている小ナイフに目を落とした。そして少し考えると、何か思い出したような表情に変わった。
「あ!ああ……!先日の武器屋さんでしたか。どうも申し訳ありませんでした、大変素晴らしい初心者向け講演をしていただいたのに、あんなおかしな揉め事に巻き込んでしまいまして!お身体、大丈夫ですか?」
「ええ。まだ全快ではありませんが何とか。それに回復をかけていただいたので、おかげさまで」
「そうでしたか!それにウチの受付嬢にそのような護身用具まで用意していただいたなんて、なんて言ったら良いのか……。」
男性スタッフは、ここまで言ったところで更に気がついたような表情に変わった。そして受付嬢の姐さんのほうを見た。
「あ、そうか、じゃあ今、応対中なんだね?あれ、頼んだよ?」
「うん。すぐやっとくから」
姐さんがそう返すと、男性スタッフはバックオフィスに戻って行った。彼がパーティションの奥に入って見えなくなると、二人とも向き合って目を合わせた。
「あ、危なかった!」店主は胸を撫で下ろした。
「もぉ。だから言ったじゃない、バカ。……じゃあ……一仕事片付けたら……ウチ行く?」
受付嬢の姐さんが、店主の袖を引っ張って耳打ちしてきた。しかし。
「おいてめえ」男の野太い声が響いた。
「え?」
店主がカウンターの外を振り向くと、ツルっぱげの屈強な冒険者が立っていた。
「なに姐さんに手ェ出してんだ?俺たちギルメンの間では、姐さんには手を出さねえのは暗黙の不文律だろうがよ?」
「は?冒険者?わ、私は武器屋ですけど……?」
「ふざけんなよ?そんな軽鎧を装備した武器屋がどこにいんだ?馬鹿にすんじゃねえぞ!?」
「軽鎧!?」はっ、今、私は胸当てと肩パッドを装備している!
冒険者は棍棒を振りかざすと、慌てて姐さんが制止を試みる。
「ちょっと、ちょっと待って。違うの、本当に武器屋さんなの!」
「姐さんは黙っててくんな!」
ズガァっ。冒険者が振り下ろした棍棒が、かなりのスピードで店主の左肩に直撃し、肩パッドが湾曲した。この鎧は、お店の商品なのに。そして、店主の肩に激しい鈍痛が走った。
「ぎゃああ!」「店長さん!」
「こんなもんじゃ済まさねえぞ!でりゃああ!」
冒険者はカウンターを飛び越えてきて、更に店主を滅多打ちにし始めた。
「ぐぼぁ、ぐぎゃあ、があああ!」「ちょっとぉぉぉ!?何やってんの!?誰か来て、誰かあああ!」
店主と姐さんの悲痛な叫びがこだました。すぐさま、その声を聞いた男性スタッフが駆け寄って来た。
「どおしたの!?え?あ!武器屋さん!君、何やってんの?何で武器屋さんをぶちのめしてんの!?」
すると冒険者は、一旦冷静になった。
「え?え?こいつ、本当に武器屋なの?」
棍棒ラッシュはおさまった。だが、店主は虫の息だった。
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