Ep.27 オープン直前 その2
●前回のあらすじ:
回復の法術を施されたものの、暴行でヘロヘロの店主。
元妻は、店主の着衣に付着した女の髪の毛を問い詰めた。
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに
・地味な女社長: 地味な服装の若い女。どのような会社を経営しているかは不明
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
・ギルド受付嬢の姐さん: 元妻に隠れて店主と両想い?
朝一番でトラック型の魔導車が武器屋の前に止まった。それを見た武器屋スペースにいた店主と妻が外に出ると、魔導車にはそのキャビンには三人の男が乗っていた。その助手席から営業マン風の男が顔を出して言った。
「おはようございます。昨日言った例の湯沸かし器を持ってきました」
彼の言葉を聞いて元妻の目が輝いた。
「おはようさん!ありがとう!よろしくね!これで薪をくべてお湯を沸かす必要がないんだね!?」
昨日の帰り際、営業マン風の男は「湯沸かし器の手配ができてるから、明日の朝一番で持ってきます」と言って帰った。その言葉を受けて、店主と妻は店舗内で首を長くしてその到着を待っていたのだった。
「ええ。しっかり設置しますのでご安心ください」
彼はそう言いながら飛び降りると、続いて厳つい男二人が降りてきた。
「じゃあ、中に運びやすよ」「ああ、よろしく。場所は前回の部屋だから」「はい!」
筋肉ムキムキの男二人は、スロープを下ろしたトラックの荷台から、小型の湯沸かし器を運び出し「お邪魔します!」と言って武器屋に入って行った。
営業マン風の男も荷台に入っていくと、スロープから車輪のついた何かを降ろしてきた。
「ギルドで暴行を受けて、まだ動くのに支障があるでしょ?これ、持ってきました」
営業マン風の男がトラックの荷台から出してきたのは、小型オートバイ型の魔導車だった。店主と元妻は興味津々でそれを見つめている。
「これは?自転車ですか?ペダル……は、ありませんね。どうやって漕ぐんですか?」
「漕ぎません。魔導車のように魔石の力で走る自転車です。我々は魔導二輪と呼んでます。グリップを捻ると魔導モーターが回るんです。ブレーキは自転車と似たような感じです」
「似たようなもの?」
「少し違うんです。右手のレバーが前輪ブレーキで、右足の鎧のようなところについてるペダルが後輪ブレーキです」
「あ、え?何ですって?」
「後で練習しましょう。魔導モーターの出力は弱めてあるので安心して運転できます」
「だ、大丈夫でしょうか」
店主はいきなりの乗り物にたじろいだが、「でも、これを乗りこなせたら、受付嬢の姐さんに何度も会いに行けるじゃないか……!そうかよし……がんばるぞ!」と思いを新たにしたのだった。いつかの日本のパソコン市場がそうだったように、女はいつだって男の原動力になりえた。
武器屋店内は賑やかになってきた。湯沸かし器設置の水道工事が始まり、そして開店を前にして武器や防具の納入が始まったのだ。商品は一度本社に納品され、検修作業や帳票処理が行われた。それがトラック型の魔導車に積載されて武器屋まで運ばれて来る。屈強な男が商品を店内に運び入れると、どこに置くかの指示を出し、店内在庫の帳面に記載していった。
「あ、あれ、防具もやるんですか?」
「ええ。……やっぱり聞いてなかったんですね。ハンバーグのことを考えてて」
「うっ……。すみません……」
店舗は個人経営の武器屋そのもののスペースだから、大量の在庫は持てない。午前中のうちには商品の搬送は済んだのだった。また、最後のトラックの運転手が営業マン風の男に封筒を手渡していた。
「これ、チラシです。刷り上がった来たので持ってきました」
「早かったですね!頼み込んでおいてよかった!お疲れ様!」
昨日の午後に頼んだばかりなのに、もう刷り上がったとは、まるでネット印刷級の速さだ。店主はチラシを見て心躍ったし、目が輝いた。「あれをギルドに持っていくことにすれば、受付嬢ちゃんに会いに行ける!うほほ!」そう思ったら、自然と言葉が口から出た。
「じゃあ、担当さん。納入もそろそろ落ち着いてきたことだし、魔導二輪の練習をしましょう!」
営業マン風の男は、やけに積極的な店主に違和感を覚えたが、その背景にはまだ気が付いていなかった。
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