Ep.25 冒険者ギルドの受付嬢 その6
●前回までのあらすじ:
店をつぶし女房にまで逃げられた武器屋の店主。
酒場でバイトを始めて一年が過ぎた頃、客の若くて地味な女経営者の投資で武器屋を再開することになった。
そこに偶然元妻が現れ、抱いている赤子が店主の子供だと言う。
社長のはからいで、給与増額を条件に元妻と子供の面倒を見ることに。
冒険者ギルドを訪問すると、かわいい受付嬢がガラの悪い冒険者に絡まれていた。
助けに入った店主だが、返り討ちにあって気絶してしまった。
気がつくと、受付嬢の家で二人きりに。
身の上話をすると、受付嬢は子供は托卵ではと疑う。
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 気弱な武器屋の店主。一度は店を潰すが、地味な女社長の投資で再オープンさせることに
・地味な女社長: 地味な服装の若い女。どのような会社を経営しているかは不明
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことに
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
「だって、自分から出ていったのに、店長さんがお店を再開するって知ったら、店長さんの子供だって言ったんでしょ?」
「え、ええ。でもいやまさか。ああ、いや、そんな。じゃあ一体誰の……」
受付嬢の姐さんは、店長の言葉を遮るように事態の収拾を図ってきた。
「ううん、いいの。ごめんね、今言ったこと忘れて。なんか私、元奥さんに悪いことしちゃった」
だが、店主としては思い当たる節がないわけでもなかった。元妻と再開したその日の夜、彼女は「この子の兄弟を作ってあげよう?」と言って関係を迫ってきた。再会当日の上、まだ産後の回復も完璧ではないだろう時期に、何故そこまで急ぐのか疑問に思った。再婚の見込みも立ったし、給料も上がるから、彼女も気持ちが浮かれたのだろうと自分を納得させた。これがもし、赤ちゃんが他人の子供ゆえに、事実の露呈という不測の事態に備えて俺の実子を作っておく算段ならば辻褄が合う……。
店主の中に疑念の産声が上がった瞬間であった。
店主が起きあがろうとすると、すかさず受付嬢の姐さんが介助に入った。
「一人で起き上がれる?」
店主の肩に彼女のしなやかな指が絡み、背中を支える腕の感触と体温が伝わってきた。そして髪の毛が頬をかすめ、女の肉体から醸し出される甘い香りが店主の脳を打ったかと思ったら、彼女の胸の片方の丸い膨らみが店主の二の腕に触れた。柔らかい。彼女のブラにはカップやワイヤーが入っていないのか、いや、ブラをつけていないのか、柔らかいだけでなく、ゆさっと揺れる感じまで伝わってきた。
ま、まずい、これでは別の場所がひとりでに起き上がってしまう。すごい……!店主は掛け布団の股のあたりの変化を気にしながら慎重に腰を引いた。
店主の上体が起き上がると、彼女は枕を店主の腰の後ろに当て、ベッドの端に寄りかかれるようにしてくれた。
「店長さんて、失礼だけど、最初はちょっと頼りない感じがしたの。でも、講演はプロフェッショナルな知識がすごかったし、私が困ってた時にも助けに入ってくれたじゃない?だから……、なんか……格好良いっなあって。……。あ、言っちゃった。やだ、恥ずかしい、うふふふ」
今までクールだった彼女の笑顔とは違った。目元がはっきりと笑い、恥じらいと、はにかみが混じっていた。これが彼女の本当の笑顔なのかもしれない。店主には二人が分かり合えた気がして、彼女の心に触れても許される気がした。
そして受付嬢の姐さんは、片手で口元を隠し、肉体を密着させてしなだれかかってきた。当然、店主の腕には柔らかいものが更に押し付けられた。また、同様にゆさっと揺れる感じも伝わってきた。
ふああ、すごい……!こんな綺麗な人に密着されるなんて……!殴られ蹴られた甲斐があった!……痛いのはごめんだけど!
店主は堪えきれずに彼女の肩を抱き寄せた。
「あぁっ……」
今まで聞いたことのない、高く弱い「女」の声が漏れた。沈黙と緊張のの空気が二人の周囲に滞留するが、彼女は次第に自分の頭を店主の顎の下に入れ、胸から腹をゆっくりと撫でてきた。彼女の手のひらが服の布地を這う音と指の感触が脳にダイレクトに響き、店主の頭がおかしくなり始めた。鼓動は速く、呼吸が荒くなる。全身に力が入って彼女の肩を抱く腕は、さらに女の細い肉躯を抱き寄せた。彼女の髪に鼻を埋め、思い切り息を吸いこむと、女の匂いにヤられて脳がカーネルパニックを起こした。
もう片方の腕を回して、彼女をベッドに押し倒そうとしたその時だった。……力を入れた胴体にズキンと刺すような痛みが走って、脳がリブートした。
「あいたた……。回復の法術をかけてもらいましたけど、流石にあれだけ蹴られたらまだ痛みがでますね……あ、あああ、ごめんなさい」
「大丈夫?無理しないで」
受付嬢の姐さんはそう言うと、すかさず店主の体をゆっくりと自分のほうへと倒して膝枕をした。柔らかく、温かい。彼女の手が、ゆっくりと、そして優しく店主の頭と、痛みの走った体を撫でた。
そのまま二人の時は止まり、店主は母性あふれる癒しの水場で羽を休めた。
十五分かそこらが過ぎた頃だろうか、ドアがノックされた。
「すみません、武器屋の営業担当ですけど!店長さんを引き取りに来ました」
二人はハッとした。姐さんはスッと立ち上がると、髪と着衣を整え、上に一枚羽織ってドアに向かった……が、店主を振り返った。すると胸の前で両手の指をモジモジと絡ませ、もう一度本当の笑顔を見せながら女の声で言った。
「また……来て……ね?」
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営業マン風の男の助けを借りて魔道車の助手席に乗ると、武器屋に向かって走り出した。
「私、魔導車乗るの初めてなんですけど、結構ギュインギュインしてて怖いですね」
「ちょっと黙っててください。私、運転下手なん ですよ。もう六回くらい事故ってます。だから毎回歩きでお店に伺ってます……ああっ、ブレーキ!」
「ええ!?私、まだ死にたくありませんよ!ぎゃあ」だが、彼は急加速した。
「そう言えば、ハンバーグ。夕飯はハンバーグって言ってましたね。私の仕入れ計画を聞きながら、夕飯のこと考えてたんですか?」
「あ、いやそんなことは、いや、ごめんなさい!ちょっと、ぶつかる!ぎゃああ!」
魔導車は勢いよく西区へと走り過ぎた。
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