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Ep.22 冒険者ギルドの受付嬢 その3

●前回までのあらすじ:

店をつぶし女房にまで逃げられた武器屋の店主。

酒場でバイトを始めて一年が過ぎた頃、客の若くて地味な女経営者の投資で武器屋を再開することになった。

そこに偶然元妻が現れ、抱いている赤子が店主の子供だと言う。

地味な女社長のはからいで、二倍の給与増額を条件に元妻と子供の面倒を見ることになった。

広告の掲出のために冒険者ギルドに広告の掲出と挨拶に行くと、初心者向けの講習会で講演をすることに。

武器屋ならではの視点での講演は好評を博したが、ギルドでは受付嬢がガラの悪い冒険者に絡まれていた。


●主な登場人物:

・武器屋の店主: 裏通りで武器屋をやっていた店主。経営に失敗し、女房にも逃げられてしまった。地味な女社長の出資で武器屋を再開することになった

・地味な女社長: いつも田舎くさい地味な服装の若い女経営者。どのような会社を経営しているかは明らかでない

・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、地味な女社長の取り計らいで再び店主と暮らすことになった

・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役

 受付嬢の姐さんの困り顔を見た店主はキリッと表情を固め、隣にいた営業マン風の男に言った。


「担当さん、刷ってきたチラシの束をください」


「え?はい、どうぞ」


 カバンから取り出した紙束を受け取ると、両手に持ってそのまま受付のカウンターに向かった。

 ガラの悪い冒険者の装備から解ることは、彼は戦士系のジョブで、初心者を脱してからある程度の経験を積み、中級に差し掛かったところだろう。背中に背負ってる盾は属性ダメージ軽減[弱]付きだから、素の魔法防御や魔力はそんなに高くない。おそらくエンチャントにもあまり頼らない純パワー系、武器もハンマーだし間違いない。だから、一見優男だけれども、体の鍛えはそれなりに仕上がってるだろう。そんな冷静な分析で、震えビビる脚を誤魔化しながら、受付へと近づいていった。店主は「受付嬢の姐さんに格好をつけて、彼女からチヤホヤされたい」その一心だった。


「すみません、ちょっといいですか?」


 店主は、ガラの悪い冒険者と受付嬢の姐さんの間に、チラシの紙束をバンっと音が立つように置いた。すると、ガラの悪い冒険者は顔を歪めながら店主を振り返った。


「あぁ?何だてめえ?そのナリは一般市民だな?何、冒険者様にタテ付いてんだコラ?」


 ガラの悪い冒険者は、顔を斜めに傾けて店主の顔を覗き込んでくると、その顔が店主のまさに目の前数センチまで迫った。店主は意図的に目を合わせなかったが、視界の端に見えたその顔は、普段なら結構なイケメンなのだろうことが想像できた。しかし怒りに歪み、いびつに変形し、清潭な顔つきの裏に潜む愚かな人間性が滲み出ていた。


「いえ、お仕事のお話です。受付さん、これが刷り上がった当店の広告チラシです」


 店主は、そう言いながら、引き続き目線を合わさないようにしてガラの悪い冒険者をスッと交わすと、受付嬢の姐さんを向いた。


「武器屋さん……」受付嬢の姐さんは、少しホッとした表情をすると、ガラの悪い冒険者に言い放った。


「ちょっとボク、こっちは仕事の話なんだから、ギルドに用がないなら帰ってくれるかな?」


 しかし、彼女の落ち着いたトーンの声が、ガラの悪い冒険者の精神を逆撫でた。


「なっ、ボクだと!?優しくしてりゃあツケ上がってんじゃねえぞクソアマコラ!」


 ガラの悪い冒険者は高揚してきた。しかし、店主は冷静に仕事の話を続けた。


「どこかに一枚張らせてもらって、そこにチラシの束を置かせて貰える感じですか?」


 店主がチラシの話を続けようとしたが、ガラの悪い冒険者は、さらにヒートアップして握り拳を胸の前にかざして割り込んできた。


「っせんだっつってんだろゴラァ!それになァ!こっちも仕事なんだよ!その姉ちゃんが独りなもんで、お股のダンジョンが寂しさのあまり大洪水で大変だっつうから、奥の奥まで冒険する重大クエストを受けてやろうっつってんじゃねえか!重大クエストだぞゴラァ!そのための作戦会議を酒場ですんだよ!」


「ちょっと、何勝手なこと……」受付嬢の姐さんが反論しようとしたが、店主が手のひらを挙げてこれを制した。


 店主が話を続けようとしたが、ガラの悪い冒険者がさらに詰め寄った。


「ああ?んだゴラァ?おい、ネエちゃん、テメェが無理なら紹介しろよ?そうだな、聖職者がいいな!女聖職者を紹介しろよ!シコたま上玉のご奉仕精神旺盛でヒーラーのくせに自分のメンタルは治癒不能の病みマゾヒスティックな女聖職者をよ!それがテメェの仕事だろゴラァ!?」


 ガラの悪い冒険者は、品のないセリフを捲し立て無理難題を突きつけてきた。姐さんも再び困惑の表情で目のやり場に困っている。

 店主もまた言葉に詰まりながらも、話を続けるべく姐さんのほうを向いた。

 しかし、二人が黙った少しの間が、ヤツの気分を更に逆撫でしたようだ。その声は、裏声に飛び激しさを増した。


「シカトしてんじゃねえぞギャラァ!」


 その叫びと共に、チラシの束が宙を舞った。

最後までお読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ、↓から★★★★★をいただけるとよろこびます。

次回もご期待ください。

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