表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/63

Ep.18 給与増額の交渉

●前回までのあらすじ:

武器屋の店主は、店をつぶし女房にまで逃げられてしまい、酒場でのバイト生活を送っていた。

一年が過ぎた頃、酒場客の若くて地味な女経営者の投資で武器屋を再開することになった。

店舗回収が済んだ時、店主との子供だという赤ちゃんを抱いた元妻と再開する。

地味な女社長は、給与増額を条件に元妻と子供の面倒を見るよう店主に迫ると、店主は迷いの中復縁を決断した。

翌日、工房の親方が再開を祝って訪れ、修理費用の見積もりについて取り決めを行った。

そのとき、地味な女社長が店に来たのだが、給与増額の件で取違があることがわかった。


●主な登場人物:

・武器屋の店主: 裏通りで武器屋をやっていた店主。経営に失敗し、女房にも逃げられてしまった。地味な女社長の出資で武器屋を再開することになった

・地味な女社長: いつも田舎くさい地味な服装の若い女経営者。どのような会社を経営しているかは明らかでない

・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、なぜか向かいの道具屋に

・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役


「で、いくら欲しいのよ?」地味な女社長は言い放った。


「えっ……!?」


 店主はたじろいだ。どうして雇われの自分が給金を指値しなければならないのだろう。出来るだけもらえたら、そりゃ嬉しい。でも、こうして店を再開させてもらえた恩もあるし、非常識に大きく出るのは明らかに失礼だ。かと言って、あまりに変わり映えしない額では、現実の生活も変わり映えしない。これではそもそも論として無意味だ。はて、どうしたものか……。


「さあ店長。言ってみなさいよ」地味な女社長の語気は強まっていく。


 給与増額をエサに元妻を俺にあてがったのは社長のほうだ。言い出しっぺは社長なのだ。それのに、まるで自分が怒られているような口調なのは何故なのか。

 緊張で店主の額に汗が滲んできた。隣では元妻が両拳を握って店主を見守っている。


(あんた、ここは勝負だよ!ちゃんとした額をお言い……!)


 元妻の激励が伝わったのか、店主は腹を決めて思い切った金額を伝える決意を固めた。自分の年収が決まる大一番。腹に力を入れ、目をかっ開いて言い放った。


「では、さんじゅ」しかし、店主が数字を言い切る前に、地味な女社長が遮った。


「待ちなさい。一応言っとくけど、金額が増えるごとに店の売上のノルマもそれに比例して増えるわよ?良いわね?」


「そ、そんな……!?」


 条件は元妻を引き取ることだったはず。どうして違う条件がくわえられるのか。条件の是正にしろ、金額にしろ、店長が言い出しかねていたときだった。


「社長、それはおかしいのでは?」営業マン風の男だ。


 彼は元々の条件と、更に付加されるノルマの正当性について論理的に説いて見せた。地味な社長の顔が引きつっていく。


「な、なによ寄ってたかって……!」


 誰がたかったというのか。


「じゃあ、二〇%増し、つまり一.二倍でどうなの!?」


「え、ええと……」ノルマが気がかりな店主。


「何?不満なの!?じゃあ、一.五倍でどう!?」


「そ、そ、そんなに上がったら……」


 どうして社長は自分で釣り上げてるんだ。

 それにしてもやはり、気になるのはノルマだ。一.五倍にもなったらどれだけのノルマが課せられるのか。もし月給三〇万円なら四十五万円になるわけだから、まあまあキツめのノルマが吹っかけられてもおかしくはない。店主の額に汗が浮かんだ。とにかくノルマのことを確認したいが、地味な女社長の勢いのあまり言葉を詰まらせていると、彼女は更に吹っかけてきた。


「まだ不満だっていうの!?……く。こうなったら二倍よ!二倍でどうなの?」


「社長!?それはちょっと!!」


 営業マン風の男は驚き、止めにかかった。店主もまた驚きを隠せず、ついにノルマについて確認する。


「え、ええ!?に、二倍!?い、一体どれだけ過酷なノルマになるんですか!?」


 地味な女社長の瞳孔はカッ開いて、ブチ切れてきたのがわかった。彼女は左手の革手袋をぐいと脱ぎ地面に叩きつけると、手袋がスパァンという音を立てて床をはたいた。そして、店主を指さして言った。


「ノルマ!?ないわよそんなもん!だってノルマがおかしいんでしょ?そう言ったじゃない。ノルマ増減なしで二倍よ。どうなのよこれで!?」


「え!?え!?ノルマ増なし、で、二倍?け、結構です。結構ですそれで。ありがとうございます!」


 店主が驚いて固まっていると、元妻が肩に手を当てていった。


「あんた!やったじゃないの!」


「ばぶーばぶー」赤ちゃんも喜んでいる。


 こうして、店主に対して破格の給料アップが図られた。営業マン風の男は、ひとり頭を抱えたのだった。


「二倍って、どうするんだこれ……。仕方ない。店長さん、仕入れの計画は厳しめにやっていきますよ!?」


「えっ?」

最後までお読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ、↓から★★★★★をいただけるとよろこびます。

次回もご期待ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ