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Ep.17 湯沸かし器

●前回までのあらすじ:

武器屋の店主は、店をつぶし女房にまで逃げられてしまい、酒場でのバイト生活を送っていた。

一年が過ぎた頃、酒場客の若くて地味な女経営者の投資で武器屋を再開することになった。

店舗回収が済んだ時、店主との子供だという赤ちゃんを抱いた元妻と再開する。

地味な女社長は、給与増額を条件に元妻と子供の面倒を見るよう店主に迫ると、店主は迷いの中復縁を決断した。

翌日、工房の親方が再開を祝って訪れ、修理費用の見積もりについて取り決めを行った。


●主な登場人物:

・武器屋の店主: 裏通りで武器屋をやっていた店主。経営に失敗し、女房にも逃げられてしまった。地味な女社長の出資で武器屋を再開することになった

・地味な女社長: いつも田舎くさい地味な服装の若い女経営者。どのような会社を経営しているかは明らかでない

・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、なぜか向かいの道具屋に

・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役

 工房との交渉も順調に進み、ほっこりした雰囲気の武器屋店内の扉が荒々しく開いた。すると、筋肉だるまの無骨な男が立ち入ってきた。


「おらぁ!」


 先頭の男は武器屋の扉を蹴って開け、担架のような荷台の一方の端の持ち手を握り、もう一方の端を別の男が持っていた。荷台には謎の機械が乗っている。その機械の大きさは、現在の世界で言えばキッチンカーやイベント会場で使うディーゼル発電機を四つを二段積みして八台にした程度だ。機械本体からは配管がいくつも出ていて、いくつかは内部に入り込んでいる。男たちの腕の張りの感じからすると相当重そうな印象だった。二人ともノンスリーブのオーバーオールに身を包み、パンパンに隆起した筋肉の腕を汗でテカらせている。


「な、何ですか、あなたたち!?」店長が驚きと共に声を上げると、更に奥の扉が急に開いた。


「ちょっと!そっちじゃないって言ったでしょ!」地味な女社長だった。


「「しゃ、社長さん!?」」「社長!?」「何だいこいつら!?」


 店にいた全員が事態の把握ができていない。だが、地味な女社長はお構いなしに続けた。


「ここ、通るかしら?ダメなら一旦出て裏から入れ直して」

 

 筋肉だるまの二人は腕がぷるぷる震えてきて、発汗も著しい。先頭の男が声も震わせながら言った。


「そ、そんな社長……!」


「ダメね。通らないわ。外出て外。裏から回って」


「わ、わかりました……。」


 後ろの男は発汗だけなく、かなり目が血走っていて呼吸で肩が上下に動き、鼻から息の音が激しく漏れている。


「早くしないと、体力持たないでしょ?早くして」


 男たちは「はい……!」と喉に突っかかったような声で答えると、ぷるぷる震えながら店を出て行った。床には滴り落ちた汗のしみが残っていた。

 社長も奥に戻って行ったが、すぐにもう一度扉が開いて、はにかみ顔を覗かせた。


「突然ごめんね。ちょっと待っててね」地味な女社長はそう言うと、再び扉を閉めて奥に引っ込んだ。


 店主は営業マン風の男を見て尋ねた。


「あれは、一体……?」


「あれは湯沸かし器です」営業マン風の男は少し考えながら答えた。


「湯沸かし器?」


「ええ。魔石の力で水からお湯を沸かすんです。ですが……、ちょっと待っててください!大変だ!ちょっと奥、失礼しますよ?」


 営業マン風の男はそう言うと、地味な女社長を追って奥へと駆けて行った。そして十秒と少し経っただろうか。地味な女社長の叫び声が聞こえてきた。


 「えええ!?そうなの?早く言ってよ!」


 その声がして更に一分ほど経っただろうか。奥の扉が開いて、営業マン風の男と地味な女社長の二人が売り場スペースに戻ってきた。営業マン風の男はやれやれという表情で、その後ろから地味な女社長がうっすら笑みを浮かべている。


「あのね、開店と二人が新しい生活を始めるお祝いにと思って、湯沸かし器を持ってきたんだけど、ちょっと大きすぎたみたい。あはは」


 営業マン風の男は社長に釘を刺すように言った。


「社長、あれはお屋敷の地下に埋めて使うサイズです」


 どうやら社長は、高性能な湯沸かし器を武器屋の開店祝いに送ろうとしたが、それが武器屋には見合わない過剰な出力のものであったようだ。地味な女社長は、後でもう一度使いのものを設置に来させると言うと、営業マン風の男は、出力とサイズのバランスは私が選定します、と提言していた。

 湯沸かし器の問答が続いていると、工房の親方は「よくわかんねえけど、またオープンできて良かったな!つまらねえものだけど、これ開店祝い」と言い、店主に手荷物を渡して帰って行った。


 しーんとなった武器屋店内で、営業マン風の男とと店主の目が合うと、営業マン風の男は「はっ」とした表情で地味な女社長に話しかけた。


「社長そう言えば、店長さんの給与の増額のお話って……?」


 地味な女社長は、目をぱちくりさせながら答える。


「え?湯沸かし器をお祝いにと……。え?あ、あ、そ、そうよね。湯沸かし器じゃ、生活は変わらない、か。あれえええ、とぉ?」


 まさか、そう言うつもりだったのか!?店主と元妻は目を丸くした。

最後までお読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ、↓から★★★★★をいただけるとよろこびます。

次回もご期待ください。

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