Ep.12 女の共感
●前回までのあらすじ:
武器屋の店主は、店をつぶしただけでなく女房にも逃げられてしまった。
居酒屋でのアルバイト生活になった店主。
ある日、客として来ていた、若くて地味な服装の女経営者と知り合う。
彼女の出資により、元の場所で武器屋を再開することになった店主。
今度は雇われ店長ではあるのだが、心機一転を心に誓った。
店舗改装が済むと、その建屋の前で地味な女社長は、店主の手を取り激励する。
すると向かいの道具屋から出て来たのは、店主の元妻だった。
元妻は、若い女と手を取り合う元夫にけしかかった。
●主な登場人物:
・武器屋の店主: 裏通りで武器屋をやっていた店主。経営に失敗し、女房にも逃げられてしまった。地味な女社長の出資で武器屋を再開することになった
・地味な女社長: いつも田舎くさい地味な服装の若い女経営者。どのような会社を経営しているかは明らかでない
・武器屋の元女房: 店主とは離婚したが、なぜか向かいの道具屋に
・営業マン風の男: 地味な女社長の部下。武器屋と本社を繋ぐパイプ役
「何が違うってんだい!」店主の元妻はかなりブチ切れていた。
「お前!誤解だ!派手さはないけど、ここで地道にやろうって決めたんだ!そうですよね社長!?」
店主は慌てふためきながら、地味な女社長を伺い弁護を求めるが、彼女は殺気立っていた。
「派手さはない!?地味ってことよね!?あなたもそう思ってたの!?悪かったわね地味で!」
どうしてそ言う解釈になるのだろう、文脈的には社長の服の地味さを指摘したわけではないのに。恣意的にこじつけられてしまった。これはおかしい。
「えっ!?社長!?それは誤解です!」店主は焦りは語気にも現れた。
「あんた!なんだい社長って!この地味で若い娘が社長だって?嘘お言い!」
元妻は、またしても社長が地味だと言った。流石に少なくない金を出してくれた人に向かって、何度も地味だと指摘するのは失礼だし、機嫌を損ねてしまっては良くない。店主はフォローに走る。
「おいお前、社長に謝れ!このお方は、再びここで俺が店をやれるように出資してくださったんだぞ!」
「ど、どういうことだい?この娘さんは一体?」
元妻が地味な女社長に横目をやると、彼女は答えた。
「私!?私は地味な若い娘よ!悪かったわね地味で!でも若いわ!それに結構かわいいし!」
地味な女社長は表情をきつくし、両拳を握って悔しがっている。確かに怒った顔もかわいい。だが店主は、彼女の機嫌が悪くなっていくのを懸念した。
「しゃ、社長、落ち着いて……」
店主は社長をなだめようとしたが、逆効果だった。燃え盛る炎に水をかければ、火が消えるどころか逆に水蒸気爆発を起こす様に、すでに手遅れになっていた様だ。
「何よ!元はと言えばあなたが店をつぶしたり、元奥様の不倫を疑ったのが悪いんでしょ?ねえ、元奥様、その赤ちゃんは誰の子供なのかしら?」
地味な社長がそう言うと、元妻は小走りで駆け寄って来て、店主に詰め寄る。
「そうだよ!あんた!アタシは、元々ウチだったところに入ったここの店が遂に潰れたから、後ぐされもなくここに来れる様になって、泊まりがけで道具屋さんの奥さんに会いに来たんだよ!それなのに突然現れた上に、自分の子を目の前にしてアタシの不倫を疑うだなんて!あんたなんか知らないよ!もう帰る!」
この言葉を聞いて、地味な女社長がさらにヒートアップした。
「そうよ!店長、あなた最悪よ。元奥様!私が車で送ってあげるわ。こんな男、放っておきましょう」
「え……」何故だ、という思いが店主の心に走る。
店主は、いつの間にか二人の女性から攻め立てられて悪者になっている。これはおかしい。だが弁解や反論のタイミングなどなかった。すぐに元妻が反応したからだ。
「送っていただいて、い、いいんですか?」
元妻も地味な女社長に同調し始めている。店主は気がついた。先ほどまで敵対関係のようだった女二人が、いつの間にか自分を悪役にした協調姿勢になっていると。こんな理不尽なことがあって良いのだろうか。
「構わないわ。さ、荷物をまとめましょう」
地味な女社長はそう言うと、躊躇なく道具屋の扉を開けて入って行った。店主の元妻もこれに続き、しばらく経つと、地味な女社長が両手に荷物を持って出て来た。すぐ後に、やはり続いて店主の元妻も赤ちゃんを抱きながら帽子を被った姿で出て来た。地味な女社長は、魔導車の後部ドアを開けると荷物を放り入れ、助手席に店主の元妻を誘導した。そして、運転席に乗り込む前に店主に振り向いた。
「じゃ、そういうことで!」
地味な女社長の瞳孔が開いている。これは機嫌がよくない時の反応だ。だが地味な女社長は、それだけ言うと魔導車に乗り込んだ。そして魔導車からキーンという甲高い音が鳴ると、車が動き走り去って行った。
「一体、何だったんだ……内装のチェックもやってないし……」
店主が呆然としていると、武器屋のドアが開いて営業マン風の男が顔を覗かせた。
「あれ?社長は?さっき来てましたよね?社長のチェックがないと……。困ったなあ……」
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