人間は裏切る
よし次は正面からだ。
ミスリルゴーレムに真っ直ぐ直進する。
「今だ」
ゴーレムがこちらに向かって手を組、振り下ろしてくる。
厄介なやつだ。胸部を守りながら戦っているのか。だが今回は近づくのが目的ではない。
俺が急停止した瞬間ミスリルゴーレムに向かって火炎弾が放たれた。
「デス」
デスは座標固定の魔法だから相手が動けない瞬間が大事だ。弱点を狙えば即死の確率は上がる。デススクリームは範囲魔法だが欠点がある。音を遮断されるか、そもそも聞こえない敵には意味が無い。だからこそデスかソールデスタッチしか無いのだ。
サラマンダー達のレベルではミスリルゴーレムを倒す事は不可能だ。HP自動回復がある以上火炎弾を撃ち続けてもMP切れになる。それにサラマンダーは接近戦が得意ではない。尾撃は強力だが隙も多い。
爆発の余波でよく見えないが、運が良ければ・・・
その時一体のサラマンダーが煙に突っ込んで行った。
「おい。いったいどうしたんだ?」
すると物凄い打撃音が響き渡った。
そこには無残にも殴り潰されたサラマンダーと拳を振り下ろしているミスリルゴーレムの姿があった。
しかしゴーレムが片膝をついた。良く見るとゴーレムの胸の外殻にヒビが入っている。相打ち覚悟で尾撃を当てたのか。いくら使役しているとは言え、自らの意思で相打ち覚悟で突っ込んで行くその心に震えた。人間には無い純粋な信頼のような行動。
その気持ちを無駄にしては行けない。その気持ちに答えなくては。
俺は真っ直ぐ突っ込んで行った。己の最速の速さで。今度は当てる。
膝をつき、右腕を地面に付けているミスリルゴーレムが左手を振り下ろしてくる。それを横に避けながら懐に潜り込む。すると地面が弾け魔力のこもった床の破片がふりかかる。
体勢を崩しながらも唱えた。
「ソールデスタッチ」
俺の右手はミスリルゴーレムの胸部に触れる。するとミスリルゴーレムはそのまま倒れて動かなくなった。俺を下敷きにして。
「すまん。助けてくれ」
サラマンダー2体が駆け寄りミスリルゴーレムを引きずり何とかはい出した。よし今のうちに。
「デットスピリット」
しかし何も起きなかった。ミスリルゴーレムは灰となり消えて、残ったのはミスリルの丸い核が残っていた。
「これがミスリルゴーレムの核なのか」
通常のゴーレムの核は魔石なのだが、ミスリルゴーレムの核はミスリルだったようだ。一応触れられるし、持って行くか。置いて行くの勿体ないし。
一応鑑定してみると魔純ミスリルとなっていた。これはミスリルとは違うのか?分からん。
そうして休憩してから更に下層へと向かった。