魔窟の怪
あぁ、今回のは……後書きにちょっと補足します
縁は呆然と眺めていた。父親と釣具屋に来てもこんなレジに時間が掛かることはない。そして、金額もこんなバカな数値を叩き出すことは無いのだ。
「お会計は、七万四千八百円になります」
は?ルアーと小物、タックルボックスだけで約七万五千円だと……消費税抜いてもおよそ、七万近い金額の物をポンと買う?え?釣りはお金が掛かるけど、これは異常値と言える。霞ちゃんは令嬢かなにかなの?貴族様なの?
「はい♪カード一括で」
バカなっ!女子高生がカード!?しかも、なんか色がおかしい……え?あれ、金属製に見えるんだけど……前に聞いたことがある。チタン製のクレジットカードがあるとか……
あ、おやつにハンバーガー食べよう。
縁はなんとか、このあとモ○を食べようと決め心の安静を取り戻そうとする。しかし、ここで追い討ちが掛かる。
「あ、お客様、ライン巻き付け終わりましたのでこちらに運んで来ますね」
「はい♪お願いします」
そして、箱と竿袋を持ってくる店員。眼に入ったのは黒の箱に銀の文字でST○LLAの文字、竿袋にはlimitedの文字…………バカなのっ!?初心者に貸すのにハイエンドとか!リールだけで七人召されるのに、ロッドとあわせたら諭吉さんの団体さんが消えてなくなるのよっ!?
これはダメだ。見てはならない。そう、心に決める縁であった。
「あ、霞ちゃんは良いリールやロッド無かった?」
「え?ロッドとか見てないよ?」
「そっかぁ、もし気に入ったのあったら言ってね?」
「ん?」
「ここの店というか、系列うちの経営だから安くなるから」
待ってくれ。もう無理だ、え?うちの経営だって?てことは社販で買ってまさか、さっき約七万五千円使ったの?え?うん。無理だ、頭が追い付かないや……。通りで店員さんが気を利かせて下の階で買ったもの持ってきてくれるわけだよ。
もう、なんて言えば良いのかわからないよ……。
「縁ちゃんは帰りどこか寄る?このあと、良かったらファーストフードでも摘まんでいかないかな?」
「行くっ!とりあえず野菜モ○食べたい!」
「じゃいこっか、箱とロッドが少し邪魔だからちょっと待っててね」
霞はそう言うと、携帯を取り出し電話を掛ける。
「今、駅前の釣具屋なの。そう。ええ、よろしくお願いするね」
それだけ言うと電話を切る。そのあと数分で、国産の高級車が真横に停まり、中からスーツを着こなした若い男の人が降りてくる。
「お嬢様、お待たせしました。お荷物お預かりいたします。お連れのお客様も、お送り致しましょうか?」
「いいえ、これから二人で軽食を摂ってから帰るので先に戻っててね」
「はい、ではそのように致します」
荷物を手際よくトランクルームに入れ、車に乗り込んだ後、静かに走りだし、直ぐに見えなくなった。
「ねぇ、霞ちゃん。聞かないでおこうと思ったけど、やっぱり聞くけど、お嬢様だったの?」
「?え?うん。見ての通り普通の女の子だよ?」
質問の意図がわかっていない。確実にお嬢様だ!そう確信して、縁は首を振る。
「縁ちゃんだってお嬢様だよね?」
「いや、うちは本当に普通の一般中流家庭だから!」
「?うちも普通の家庭だよ???」
「なんか、ループしそうだからモ○行こう!そうしよう!」
首を傾げるお嬢様こと霞を置いて、縁は松葉杖とは思えぬ速度でモ○に向かい歩き出した。
閲覧ありがとうございます。
補足
霞はお嬢様だが、ただの金持ちではないので安心してください。(何を?)
少しずつ出していくので、よければ次回も閲覧よろしくお願い致します。
なお、更新は不定期となります。毎日は……きっと難しい。
今回のように文字数が1200前後だと進まないし……