ルアーを作ろう!弍
翌日、私は縁ちゃんと共に部室へと入ろうと、扉を開けた瞬間に、謝ると共に扉を閉めた。
「すみませんっ!間違えました!」
目に入った光景があり得なかったからだ。だって、女の子がちょうど着替えていたからだ。スカートを脱ぎ、上着を脱いでいるタイミングだったために、顔は見えなかったものの、可愛いフリル多めのショーツは見えたのだ。
「危なかった。縁ちゃん、部室間違えたなら教えてよ……」
そう、非難しながら顔を横に向けると、扉に手をかけ、開くとこだった。
「待って!そこ部室じゃなくて、今着替えてる人いるからっ!」
首をかしげながらも、扉を開き、今度は上下お揃いのフリル多めの下着姿の女の子が目に入る。
鼻血でそう。そんなことを思いながらも、隣の縁ちゃんを見ると、既にそこにはおらず、中に入って椅子を引き、松葉杖を立て掛け腰かけているところだった。
「だから、縁ちゃん。ここ部室違う」
「合ってるよ。霞ちゃんお疲れ様」
「縁ちゃん綾香ちゃん、お疲れ様~。今日は昨日の仕上げ行程に入るからね~」
「え?霞先輩!?」
あまりにも可愛い下着に目を奪われ、さらに自分にない胸の膨らみに目を奪われ、顔をろくに見てなかったのを思い出す。
「あ、お疲れ様です。って、なんで脱いでるんですか?」
「だから、仕上げ行程に入るから着替えてるの~。臭い移ったり、かかってカピカピになりたくないもの~」
「じゃあ、あたしは換気扇つけときますね」
「ありがとう、縁ちゃん」
「なぜ、こうも噛み合わないのか……」
年頃の女の子なのに、同性とはいえほぼ裸を見られて、見てこの反応……あれ?私がおかしいの?
私なら悲鳴と共に赤面必須だ。例え胸が寂しく……寂しくない。少し小降りな平均的な胸だ。うん。
そこで、はたと気づく、もしかして霞先輩は本当にお嬢様で、家ならぬ、屋敷に帰ったら専属のメイドが付いて着替えや着付けをして貰ってて、見られるのは普通と感じているのでは?縁ちゃんは、単純に興味のないことはどうでもいい的な感じか?
そう疑問を抱きながら綾香が椅子に腰かけたタイミングで、先程の疑問を吹き飛ばす発言を縁はした。
「霞ちゃん、ただでさえ胸大きいんだからフリルはいらないんじゃない?むしろ、シンプルなリボンやレースに留めるべき。無い乳の綾香ちゃんが虚ろな目をしてたよ?」
「え~?そうかなぁ、フリル好きだからついフリルの可愛いの選んじゃうんだよねぇ。でも、綾香ちゃんは控えめであって無乳ではないとおもうよぉ」
「二人とも気にしてることを…………しかも、縁ちゃんに至っては無い乳とか酷い!」
「フッ、胸なんて飾りです、エロい男にはそれがわからんのです。くらい言えたら完璧なのに」
「なにがっ!?」
そんなやりとりをしていたら、霞先輩は着替え終えて戸棚からプラ板と、瓶、缶、針金や小物入れを次々と出しテーブルに置く。
「それなんですか?」
瓶にはすこし黄ばみがついたような液体と、缶にはでかでかと『シンナー 火気厳禁 要換気』の文字が見てとれた。
「ルアー作るときに必須のものだよ。こっちはウレタンコーティング液、本当は二液性のエポキシの方が好きなんだけど、数が少ないから今回はコッチなの」
「???????」
「まずは、綾香ちゃんのクランクのリップからだね、そのあと、ウェイト仕込んで浮力やバランスを見てからコーティングになるから。縁ちゃんはリップつける?」
「ううん、リップレスの予定で削ったから、アイワイヤーとウェイト仕込めばあとはコーティングだけ」
「???????なんの呪文??????」
「まぁ、やっていきながら覚えよう。わたしは綾香ちゃんにつくから、わからないことあったら聞いてね」
「あ、はい」
とりあえず頷くことしか出来なかった。
「ん、霞ちゃん。リュータどこ?あと、ステンワイヤーも六ミリ位のある?」
「棚の引き出しの一段目にあるよ~、あ、ウェイトはスチールボールしかないけど大丈夫?」
「ん、そこは平気。タングステンは使いにくい、鉛はやるなら流し込みたいから、スチールボールの方が手早くできていい」
もはや、なにを言っているのか下着と胸の話以降はわからず縁ちゃんの手元を見ても何してるのかわからない。
ワイヤーを曲げてるんだけど、ペンチや板に刺した釘を使って小さな輪っかを作ってはその根本を糸で結んでいる。あれは何を作ってるの?てか、私もするの?多分無理じゃないかなぁ。
そう、疑問を抱いて、眺めていたら霞先輩がフォローしてくれる。
「縁ちゃんは、大物狙いみたいだから貫通ワイヤーで作るけど、綾香ちゃんはこのネジのついた輪っか、ヒートンを使うから大丈夫だよ。まぁ、クランクの場合貫通ワイヤーにするのは結構熟練度いるしね」
「よ、よかったぁ……」
霞先輩の話を聞いて安堵していたら、突き落とされる。
「あ、でもクランクのリップ作りは結構大変よ?」
「え?」
とりあえず更新予定は明日?です。
章の振り分けうまくいかない(´Д`)