かんつりって簡単な釣りの事じゃないの?
不定期更新です。
一日券を学割で買い、絢香と縁に手渡しながら霞は告げる。
「さぁ、第一回エリパは~じめ~るよ~♪」
「「おおっーー!」」
たった三人、されど三人、娘三人寄れば姦しい。まさに、読んで字のごとく、和気あいあいと各自のタックルで、ドライバーの鈴木にポイントを抑えてもらった場所へと向かう。
このエリアは、チケット販売前からポイントへの場所取りが可能である。が、一番楽に終日釣れ続ける様な流れ込みや、湧水スポットは既に常連らしき人に抑えられている。
それを見た縁は、首をかしげ霞に問う。
「ねぇ、霞ちゃん。流れ込みにさ、初心者の人って入れることあるのかな?」
「う~ん、無いとは言い切れないけど、少ないんじゃないかな?」
「でもさ、あんな誰でも釣れるポイントを抑えて楽しいのかな?」
「そこは、ほら、人によるから~、小さくても数だけを追う人とか、数よりサイズとか」
「あぁ、そっか。わたしって特殊だったんだ」
「特殊って?」
絢香が、よくわからない会話にようやく、入れそうな言葉を見つけ質問する。
「ん、大きいまたは、重いルアーで、大きな魚を狙う。これは、もちろんかなり釣れにくい」
「え?かんつりって簡単な釣りの事じゃないの?」
「「え?」」
絢香の中では、管理された簡単な釣り場。それが、かんつりと変な曲解を産んでいた。
「え~と、絢香ちゃん。かんつりってのは、管理釣り場の事よ?」
「うん、だから、釣れやすい様に管理してるって事じゃないの?」
「あぁー、それはない。釣りやすいようにと言えば、まぁ自然を釣るよりは簡単だけど、そこまで簡単か?と言われると悩むよ」
「ええっ~!?私釣れるかな?釣りしたことないよ?」
「大丈夫♪絢香ちゃんはわたしが、しっかり教えるから~♪」
「ん、霞ちゃん頼んだ。私はデカイのを狙っていくから、深場の方に少し移動する」
「はいは~い♪ネットは要らない?」
「何とかする。ならなかったら、こっちまで泳がせてくるよ」
「わかったぁ♪じゃ、絢香ちゃんは早速釣りをしよう!」
そうして、霞は自身のタックルケースのロッドホルダーから一本を取り出し、絢香に渡す。
「とりあえず、これが絢香ちゃんの今日のタックルね」
「ありがとうございます、霞先輩。へぇ、これが釣り竿なんだぁ。ここの、真ん中のデコボコはなんですか?」
「そこは、フェルール。繋ぎ目よ、そのロッドは穂先側、リール側の二つに分かれるの。それが、ツーピースロッド。分かれずにそのまま一本だとワンピースロッドね♪」
「なるほどぉ、で、どうしたらいいですか?」
「まずは、投げ方……の前に、ラインを通しましょう」
「ライン?スタンプ?」
「あぁ、メインライン、ようは釣糸の事よ♪」
霞は一瞬、この子大丈夫かしら?とは思うものの、なんとか堪え立て直す。
「そうそう、そうやってリールのベールを起こしてからゆっくりガイドに通していって……先の方になるとそのままだと通しにくいから、斜めに倒して、そうそう」
「むむむ、あっ!?」
絢香の手を滑り落ちたラインが、せっかく通したガイドからも抜けていく。
「あはは♪良くあることよ。ラインの端十五センチ位のとこを折り曲げて通していくと、やりやすいし、抜けた時にガイドに引っ掛かって止まるからやり易いよ」
「うぅ。早く教えてよ……」
そんな、こんなありつつ、なんとか糸を通し終え、スナップの結束に移る。
「これがスナップ。ルアーに接続する時に使うものね♪」
「小さいっ!」
「ん~これでも大きい方だよ?小さいのはもっとちいさいし」
「私に出来る?」
「とりあえずやってみましょう♪」
クリンチノット、ダブルクリンチノット、パロマーノットと見せては、カットしていく霞。
「全然わからない……」
「あぁ、ラインの結束しないと覚えられないからなぁ」
「うぅ、せめてナビして霞先輩」
「もちろん♪」
結局、絢香はパロマーノットだけを覚えることになった。理由は言わずともがな、簡単かつ強度が高い。そう、それだけである。決して、糸の巻き付けの時にスナップを落としたり、スナップの上下を間違えて結束したり、ヨレヨレになって、軽く引っ張るだけで切れたりしたからではない。そう、ないのだ。
ようやく釣りの準備が出来、スナップに自作のクランクをつけ、絢香は借りた霞のタックルを見る。銀のリールには、ST○LLA、ロッドはリールより体側に、まるでワインボトルのようなモノが付いてるようなそんな形で、手触りは少しざらつく。ロッド自体は黒一色で、可愛さがないなぁ、などと、考えているが、本人は高額のハイエンドタックルとは一切考えてなどいないし、思ってもいない。
それを知るのは、このエリパが終わり、数日後の事になるが、それはまた別のお話。
閲覧ありがとうございます。次回はようやく釣りが描写できるかと…………マジで長いな釣りまで……
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