初エリア!
不定期投稿です。
ええ、とりあえず神チーを不定期にかえ、こちらを進めていきたいと考えてますが、毎日更新はきついかとおもいます。
応援、閲覧よろしくお願いいたします。
眠い。まだ、陽も昇りきらない、空の白んできただけの早朝、駅のロータリーにあるバス停のベンチに腰を降ろし絢香は目を擦る。
こんなに早くに起きたのは初めてだ。そもそも、朝早く出ないと行けないほど遠いのだろうか?
ふと、何処へ行くのか聞いてない事に不安がよぎる。そして、たった今、目の前に停まったワンボックスカーの後ろのスライドドアが開き、霞と縁の姿を見て少し、ホッとする。あぁ、いつもの二人だ、と。
「おはよう♪絢香ちゃん」
「おはよう、絢香ちゃん。ちゃんと眠れた?」
「おはようございます、霞先輩、縁ちゃん。眠れた様な、寝たりないような感じ?」
「さ、早く乗って♪」
ご機嫌の霞は車内へと綾香を手招きする。社内に入ると、不思議な香りが漂っていた。
一つは、花や、柑橘系の香りは二人のシャンプーなどの香り、これは知っているのでいつもの香り。
だけど、もう一つの嫌ではないが、嗅ぎ慣れない香りはなんだろうか?少し首をかしげた綾香に霞は事も無げに言った。
「あぁ、この不思議な匂いは新車の匂いだよ。綾香ちゃん、別に悪いものじゃないから安心してね♪さぁ、早く座ってシートベルトをしてね」
手を引かれ、空いている席へと綾香は座りシートベルトをまごつきながらはめる。
それを、待って霞は号令を掛ける。
「さ、準備できたね?いくよ!いざ、エリアに向けて――」
「「「しゅっぱぁーつ!」」」
「かしこまりました、お嬢様方」
三人を乗せた車はゆっくりと加速し、朝の街の景色を置き去りにしていく。
景色を見ながら、綾香は霞に聞く事にした。
「ねぇ、霞ちゃん。どこまでいくの?」
「行けるとこまで♪」
会話にならなかった。霞はハイテンションで、綾香の今日どこに行くのかと言う質問の意図を汲み取ってはくれない様だった。
もう一度、聞き直そうとした綾香を遮るように縁が口を開く。
「綾香ちゃん。無駄。何処に行くのかわたしも聞けてない」
「えぇーーーー!」
「大丈夫だよ。二人とも、ちゃんと釣れるとこだから♪」
「心配しているのはそこじゃないっ」
「なら、いい」
「えっ?縁ちゃん、いいのっ!」
「問題ない」
「ね♪」
後ろの席がにぎやかになったのを、声とバックミラーで確認し、微笑んだドライバーの鈴木は横揺れに気をつけながら、交差点を曲がり高速道路の入口へと車を走らせた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
気づくと、車は停車し横を見ると、霞先輩、縁ちゃんも寝息をたてていた。ここは、何処だろう。駅にいたとき、徐々に明るくなって来ていた為、既に辺りは見通せるほど明るくなっている。
窓越しに見えるのは、山の中なのか、木々と平屋のような木造の建物が一棟。砂利の道、他の利用者だろう、車。それだけである。
運転席には誰もおらず、エンジンは掛かったまま、僅かにエアコンの吹き出し音が聞こえるだけで、あとはガラス越しに鳥のさえずりが聞こえる位だ。
のどかだなぁ、などと安心していたら、不意に大きな爆発音が響き、肩をすくませる。
「なにっ!銃声!?」
あまりの音の大きさに戸惑い、声をあげてしまった。
その声のせいか、霞先輩が目を覚ました。
「ん……、絢香ちゃん大丈夫よ。鳥避けの空砲だから、何分間かに一度夜間から朝まで鳴るのよ」
「え?鳥避け?なんで?」
「それは、マスって人が食べても美味しい魚だもの、狙う鳥も多いからよ」
「へぇー、そういうものなんだ」
「うん。そういうもの。特に、エリアは隠れる場所少ないから鳥にとっては狙いやすいからね」
魚も中々大変なんだなぁ。そんなことを思いながらも、次に鳴るのがいつなのかと身構えて、気を張る。
しばらくして、運転席のドアが開き、ドライバーの鈴木さんが帰ってきた。
「お嬢様、そろそろ受付が開きます。既にタックルはポイントへ運ばせて貰いましたので、受付へとお願いいたします」
「ありがとう♪鈴木さん。では、縁ちゃんを起こしたらすぐに行くわね」
「はい、では、わたしも自身の準備をしておきます」
どうやら、鈴木さんも釣りをするようだ。だけど、取り出した道具がなにやら不思議な形をしていた。いくら、初心者とはいえ、釣具の形位は知っている。
竿の手元にリールが付く。それは同じなのに、丸く薄いリールが、他の釣具よりもっと手前に付いていて、更に糸がすごく太いのだ。
「絢香ちゃんはフライタックル見るの初めて?」
「フライタックル?」
「そう、毛鉤を使う。もっとも歴史の古い疑似餌釣りってとこかしら」
「へぇー。毛のついた針で狙うの?」
「そうよ。毛鉤は、鳥の羽や繊維を針に巻いて虫や魚をイミテートするの、奥が深いわよ♪」
着々と準備をしていく鈴木さんを見ながら、どんな釣りなのか後で見てみようと心に決めた。
「さ、縁ちゃん起きて!受付するよ♪」
霞先輩に揺り起こされ、縁ちゃんはゆっくり目を開ける。
「ん。おはよ。じゃあ、受付いこう」
目覚めが良いのか、寝起きとは思えない早さで身なりを整え、スライドドアを開け、松葉杖を手に車から降りていった。
「さ、絢香ちゃん私たちもいきましょう♪」
縁の開けたドアから、霞、絢香と降り、受付へと向かう。少し靄の掛かる、朝の冷えた空気が、絢香達を包んだ。
釣りまでいく気が、なぜか受付にたどり着けない……これ、迷路だった?
次回は、二日、三日以内になんとか……。
どうか、お付き合いよろしくお願いいたします。