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かんつり!  作者: 今澤 麦芽
ルアーを作ろう!
1/15

ルアーを作ろう!壱

 なんとなく、書き始めました。とりあえず、状況を見ながら更新になります。

 はたして、私はなぜ木を削っているのだろうか?木をというよりは、指で力を入れると凹むような、柔らかな木片で、カッターナイフで簡単に削れるのだが……

 正直に言って、私は器用な方ではないのだ。部室のホワイトボードには、大まかな完成形の展開図が貼られ、それを見ながら削っているのだが、削りすぎては、修正をするためまた、削るを繰り返すうちに、手の中の木片はかなり小さくなってしまった。

「これは……もう使えないかな?」

 どう見ても、長さが足りなくなり胴回りは太く、尻尾が寸足らずのものが手のひらの上に転がる。ため息と共に、ゴミ箱へ入れようとすると、それを隣で削っていた、同じ新入部員の(ゆかり)に止められる。

綾香(あやか)ちゃん、それまだ使えるよ?」

「え?縁ちゃん、でも、全然見本と違うんだけど……こんなメタボな見た目で使えるの?」

 手のひらの上で、まるっこくなった木片がコロコロと転がる。

「うん、その形なら、クランクかトップウォータープラグにちょうどいいかな。どっちにしたい?」

 後ろから不意に声をかけられ、びっくりして手のひらの木片が宙を舞う。

「おっと、綾香ちゃん。驚いて両手を挙げたりしないで……むしろ、カッターナイフは出来たら机に置いて!」

 (かすみ)先輩がそう言いながら長い髪をたなびかせ、フローラルの香りを撒きつつ、空を舞った木片をジャンプしながら掴みとり、音もなく着地する。

「部長、すみません」

「こら!部長じゃなくて、霞ちゃん!」

 部長、霞先輩はとにかく、部長と呼ばれることを嫌う見たいで、常に霞ちゃん呼びをさせようとしている。部員は今は霞先輩、縁ちゃん、私の三人だけなので、正直霞ちゃんと呼んでも良いのかもしれないが、霞先輩の見た目がそれを許さない気がしてならないのだ。


 切れ長で大きな瞳、すらりとした指先、大きすぎず小さすぎない形のいい胸、令嬢のような白磁の肌。そして、艶のある長い髪。どう見ても霞お嬢様。そうとしか思えない。


 うってかわって私と来たら、肩までのセミロングの癖っ毛持ちで、大分改善はしたもののストレートとは無縁の髪……体型も普通だし(胸も普通なはず……断じて貧乳では……ない、よね?)、唯一の取り柄は眼がいいこと位。

 そんなことを考えていたら、霞ちゃ……霞先輩はさっきの問いを重ねてくる。


「で、クランクかトップウォーター、どっちがいい?」

「えっと、なにが違うんですか?」

「え?綾香ちゃん、もしかして、わからずにルアー作ってた?」

 はて、魚を釣るための物がルアーと言うのはわかっているけど、なにかやらかした?

「えっと、縁ちゃん、教えてあげて」

「はい、霞ちゃん。えと、綾香ちゃんの削ったルアーはまだ分野分けされてない、どちらにもなれるって言うのはわかるよね?」

 さらりと、縁ちゃんは霞先輩のことを霞ちゃんと呼んでいる。入部初日の自己紹介からそうだったが、大人しい感じの子という見た目とは裏腹に結構物怖じしない。

 彼女の抱える問題のせいなのか、結構アグレッシブに来るのだ。見た目はロングの髪を束ね、すこしタレ目の目鼻立ちで、車椅子と、松葉杖で私より早く走る。謎のバイタリティーと見た目の不調和の産み出すよくわからない生物。いや、可愛らしいんだけど、松葉杖で私より早く走る(私が極端に遅いと言われたらそれまでだけど)ちょっとどう言えば伝わるのかが疑問な女の子なのだ。


「うん。たぶん、」

「ルアーは、総称であって実はまず二つに大きく分かれるのね。ソフトルアー、ハードルアーという二つ。で、今作ってるのはハードルアー。その中でもさらに分かれて、水面から順に言うと、トップウォーター、ミノー、クランク、バイブレーションのおよそ、四種に分かれるの。で、見本はミノーと呼ばれるもので、細長く、リップがついているものが大多数を占めるの。まぁ、この分別も結構面倒で、作った人がミノーといえば泳ぎがクランクでもミノーになるんだけどね……」


「え?なにそれ?わからないんだけど……」


「気にしないで。まぁ、見た目でそれなりに分かれるってこと。で、綾香ちゃんの作ったルアーはリップつけて、ウェイトボールを仕組めばクランクに、ちょっと頭の形状をいじってウェイトボールを仕組めばトップウォーターになるような形なの」

「うんうん。で、どっちがいいの?」

「うーん。それは使う人、つまり綾香ちゃん次第なの。だから、どっちがいいか?と聞かれてもなぁ」

「えぇー!どっちかにしかできないの?」

「いや、使い方とウェイトの量でクランクならトップとしても使えるけど……」

「なら、クランクにする!」

「早いなぁ……綾香ちゃんは決めるの早すぎる」

 さっき手にした、木片を見ながら霞先輩は縁ちゃんと共におしとやかに笑う。


 本当にどこかの令嬢様なんじゃ……というような、品のある綺麗な笑顔に目を奪われ私は木片の存在を再認識するまでにかなりぼんやりしていた。


 と、言うわけでクランクに決めたのはいいけど。そもそも何が違うのかがわからない。


 水面と水中の違いだけ?でも、クランクなら使い方で水面で使える?よくわからない。

「ねぇ、霞先輩、縁ちゃん。なんでそんなに種類がいるの?」

「「………………」」

「黙らないで!そんな可哀想な人を見る目で見ないでよっ!そもそも釣りしたこと無いんだからっ!」

「うん。それは、再来週の土曜日にわかるから綾香ちゃんはそのままでいていいよ」

 にこやかに笑いながら霞先輩はすこし遠い目をしながら私を見る。

「うんうん、綾香ちゃんはそのままでいて!」

 縁ちゃんは、縁ちゃんで励ますように力強くそのままでいてと言うし。

「霞先輩も縁ちゃんもなんか酷くない?」

「「酷くないよぉ~」」

 いや、絶対に酷いとおもうんだけど……

 そうこうしていると、下校のチャイムが鳴り、本日の部活動はここまでとなった。


 次の更新は早ければ明日の夜中?位かと……神チーと共にあげる予定です。

 続きが気になる!はよ更新!というかたございましたら評価、コメントなど頂けると嬉しいです。

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