ドライアドと出会いました
ハウンドとの交戦を無事に終え、何とか怪我人を出さずに2階層を抜けた。
1階層は迷路のように入り組み多くのトラップが仕掛けてあったが、2階層はそこまで道が入り組んでいるわけでもなかった。
ただ1階層と比べると規模がやや大きくなっていてきっと下の階層に行く毎に広くなっていくのだろう。
隊列の真ん中を歩いているリーシェは、ふと少年騎士の名前を聞いていなかったことに思い至った。
「そういえば、あなたの名前をまだ聞いていませんでしたね」
顔の左側で、柔らかな金髪を鈴のようなもので一房纏めている少年はハッとなったあと自己紹介をした。
「失礼しました。僕に名前はキリヤです。リーシェ様をお守りするため、ここに馳せ参じました」
歩きながらなので軽く礼だけをする少年キリヤに、リーシェは優しく微笑んだ。
彼だけ装備している剣が違う点が気になったが、今は周囲に警戒を払わなければならないのでぐっと堪える。
1階層でリーシェが騎士たちの緊張を解したおかげで、雰囲気は引き締まりながらも穏やかなものになっていた。
モンスターと戦いながら、3階層、4階層と特に問題なく進み、半分地点である5階層へ到達する。
それまで岩肌ばかりだった壁が急に開け、5階層は深い霧に包まれていた
視界がはっきりせず、ここに来て味方同士の連携を妨害しに来たような場所だった。
しかしリーシェたちが連携を取れなくなるということは、同時にモンスターたちも互いの姿が見えなくなる。
だが、ゴブリンのように知能が低い訳では無い。互いの姿が見えなくても敵を排除できる力があるというころだ。
それぞれの方を左手で掴み、はぐれないように進んでいく。
霧があるせいで道が見えず、自分たちが今どこにいるのかも分からなくなってくる。
戦闘を歩く騎士は確実にまっすぐ進んでいるはずなのに、進んでいる気すらしない。
ザワザワとどこからが音が聞こえて、クスクスと忍び笑いが聞こえる。
前から2番目を歩いていたラピスが不意に立ちどまり、全員が前の人の背中に鼻をぶつけながら隊は止まった。
「厄介なことになった」
「ラピス様?」
「この階層を俺たちは1歩も進んでいない」
衝撃の言葉に一同は目を丸くする。確かに歩いていたはずなのに、1歩も進んでいないとはどういうことだろう。
「いや歩いてはいるが、階層自体が動いているせいで進んだことになっていないんだ」
「階層が移動?」
揃って首を傾げるが、少年は霧の向こう側へ声を投げた。
「いるんだろう!?遊んでないで出てきたらどうだ!森の管理者、ドライアド!!」
『クスクス。あーあ、見つかっちゃった』
立ち込める霧の奥から、神秘的な光を纏う妖艶な美女が現れた。
人間に酷似している。しかし尖った耳や、体から伸びる蔦や、頭から直接生えている花が、彼女がモンスターであることを示唆していた。
申し訳程度の面積の服で肌を隠している「ドライアド」は、呼びかけたラピスに向かって浅く礼をした。
本当に人間のような行動に気持ちの悪い違和感が付き纏い、知らないうちに全身の産毛が逆立つ。
『人の子が来るなんていつ以来かしら?忘れちゃったからどうでもいいわね』
「お前だな?階層を動かしているのは」
『ピンポーン!正解で〜す!』
どこからか出てきたらクラッカーがラピスを盛大に祝うが、当の本人は真顔でシュールな絵が出来上がった。
豊満な胸を揺らしながらスキップ混じりで上空を闊歩するドライアド。
尖った耳を隠し、蔦と花さえなければ人間だと言い張っても誰だって信じるだろう。
『ここは「惑わしの森」。自己を見つめ直す追憶の階層。ここを抜けたければ、右手に見える湖に身を投げて、魂の深淵に潜り込むといいわ』
「他に方法は無いのか?」
『んもう!我儘で欲張りな人の子ね!残念ながら答えはノーよ!自身と向き合い、新たな力を手に入れた者だけが6階層への道を拓くわ』
ラピスドライアドがしばらく会話を重ねていく。
やがて諦めた様子の少年が、顔を歪めながら湖へ向かった。
キリヤたちとリーシェとアズリカも後を追い、澄み渡った底なしの湖を覗き込む。
全員が地面に膝をつけて、モンスターが潜んでいないか水面を至近距離から観察する。
意外とせっかちだったドライアドが。
『水を張った皿に群がる子猫みたいなことしないで、早く落ちちゃってちょうだい!』
と言いながら草を操ってリーシェたちを一斉に湖へ落とした。
水中で騎士やラピスたちの姿を探すが、確かに一緒に落とされたはずの仲間たちは見当たらなかった。
焦燥にかられ始めたリーシェの頭に、自分とそっくりの声が直接響く。
『汝に問う。汝にとって汝とは何であるか?』
その問いかけにリーシェの頭は真っ白になった。
キリヤさん、今後も物語にたくさん出てくるので覚えておいてくださいね!
キャラクタービジュアルなどはTwitterの方に上げていますので、よろしければフォローお願いします!!





