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トラブル発生です!

 ビーグリッドから帰って3日。


 平穏を謳歌していたリーシェの周りでトラブルが発生した。

 セルタの中心部から爆発が起きたのだ。


 自宅の窓際でうたた寝をしていた少女は大きな爆発音で意識を覚醒させた。

 足をもつれさせながらサンダルを指先にひっかけて丘を駆け下りると、住人たちがごった返して走り回っていた。


 爆発が起きたのは子供たちが通う学校だ。

 木造二階建ての建物からは、モクモクと黒煙が登っていた。


 子供たちが取り残されているのか、学校の周りには半狂乱になった母親たちが押しかけていた。

 日の中に飛び込もうとする強き母たちを父親たちが抑えていた。


 パニックになっている集団の横を走り抜け、リーシェは煙の中へ飛び込んだ。


 望むものだけを凍らせる「氷刻」だが、その最低条件は対象が全て視界に入っている事だ。煙に巻かれた校内のどこに子供や教師がいるかわからない以上、身を呈して救助に行くしか出来なかった。


 学校に入ってからすることは、視界に入る限りの炎を凍らせ、火の手を抑えることだ。

 火元を特定するのはまだ難しいので少しずつ炎の動きを止めながら進んでいく。


 マシになった視界の中央で人影が倒れているのを見つけた。

 急いで助けて息を確認すると、幸いまだ生きていた。

 腕に抱えてから、直ぐに外に連れていくべきか迷った。

 リーシェの腕で抱えられる子供は精々2人。教員が倒れていれば1人抱えるだけで精一杯だ。


 助けていちいち外に戻っていては、まだリーシェが火を止めていない場所にいる人達は最悪死んでしまうかもしれない。


 しかし助けて子を放置して行くのは、今すぐ必要な処置を出来ない事になり、火傷の治療や吸った煙への対処が出来なくなる。


 一瞬考え込んでいると、後方から人が追ってきた。


「リーシェ!!」


 家では姿が見えなかったアズリカだ。町に下りていたらしい。


 青年の姿を見て少女は閃いた。

 彼の「拘束魔法」の鎖で、外に送り届けてもらうのはどうかと。


「アズリカ!良いところに来ました!鎖でこの子を外に連れ出してください!あなたは私に追随する形で、被害者を見つけ次第、鎖で救助してください!」


 魔境谷で空に浮いていたリーシェをアズリカが撃ち落としたことがあった。

 鎖はどこまでも任意で伸びるのではないだろうか。


 リーシェの予想は正解で、すぐに意図を理解した青年は少女が抱えている子供を鎖で絡めとると、それを外まで伸ばして安全な所へ避難させた。


「とりあえずパニックになっていた住人のところに置いた。先を急ぐぞ」


 そこからはトントン拍子で事が進んだ。

 被害者を発見し鎖で救助をすることが何度か続いて、ようやく学校全ての火が凍り煙が収まった。


 確認した限り死亡者はゼロ。重度の怪我を負った人は何人かいたが、診療所の看護師たちが何とか治療してくれるだろう。


 火元と見られる家庭科室で息を切らして休んでいると、アズリカが言った。


「お前、町には『守護一陣』が張ってあるから守られてるとか言ってなかったか?」


 アズリカには最初のうちに、セルタに『守護一陣』の結界が張ってあることを伝えていた。

『守護一陣』は、言うなれば焔と氷の加護で、外部からの攻撃をある程度緩和または無効化するものだ。


 町の内部で起きるトラブル自体を抑えてしまうと、人々の危機管理能力が薄れると思い、内部に関しての被害には発動しない仕組みになっている。


 そのことをアズリカに説明すると、複雑そうな表情で呟いた。


「確かにいざと言う時動けないのは困るよな。でも、内部に適用されていれば被害者を出さなかったというのも考えると、やっぱり複雑だな」


「でも被害者を出すのは悪い事ばかりではありません。被害が出たからこそそれを教訓に再発防止を徹底できますから」


 もちろん良かったという訳では無いが、起きてしまった以上なるべく前向きに捉えなければならない。


 一際、炭化しているコンロに近づくために立ち上がって数歩歩く。

 ミシミシとどこからか嫌な音が鳴った。

 天井か床か、出処が判然としない音に首を傾げる。


「なんの音?」


 背後でアズリカが鋭く息を飲む気配がした。


「リーシェ!避けろっ!!」


 背筋を凄まじい悪寒が走る。

 戦慄に冷や汗を垂らす。


 しかし、反応しきれず足を止めることしか出来なかったリーシェの頭上が激しい音を立てて崩れ落ちてきた。


 アズリカが声にならない声で叫ぶ。

 崩壊の音にかき消された声は誰に届くことも無く、青年の目の前には瓦礫だらけの家庭科室があった。


 リーシェの姿は見えなくなっていた。


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