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バーチャル“リアリティ”

元【画面の世界】というタイトルでした。

「あ――……なんだこりゃ……意味わかんねー……」

とある部屋に1人の少年がデスクの上に置いてあるパソコンを目の前に頭を抱えるように座って唸っている。

その少年の名前は清龍寅といい高校を中退し今では立派な不良少年――ではなく外も出歩かない自宅警備員及びオタクの18歳である。

何故高校中退しなければならなかったのか、色々あって学校を止めさせられたと言っても過言ではないのだが、人の傷は抉るものでは無いだろう。

高校を中退したせいで、大学には行くことは叶わなかった。

彼自身の自慢は独学でパソコンの知識を頭に叩きつけている事だ。

そして彼は誰よりもパソコンに詳しい。

そのためパソコン系の大学に入りたかったのは言うまでもない。

そんな彼は、ごく最近パソコンに付属されてきている(と思われる)、アンドロイド型インターフェースという便利(?) なソフトがあるらしく、たった今インストールをした、のだが……。

「あの――ご主人様? 聞いていますか――……?」

 先程インストールした“それ”がパソコン内で喋っていた。

“それ”は何処かの少女漫画のように目が大きく腰まで伸びているストレートな髪。

そして何より目に焼き付いているのは、美女と思わせるかのようなスレンダーな体躯と等身何等分なのかわからない身長であった。

「聞こえてる、聞こえてる。んで、あんた誰?」

液晶の中、寅の目の前で“それ”は悠然と立っている。

“それ”に質問され寅は適当に会話を変えた。

「はい! 私はバーチャルコラルNo,8です! 以後お見知りおきを、ご主人様!!」

 するとバーチャなんたらは元気な声で、しかも爽やかスマイルで返答してくる。

「バーチャ……? つか、ご主人様は止めてくれ……、吐き気がする」

「す……済みません! ご主じ――はっ!?」

 ご主人様と言おうとしたバーチャを寅は睨みつけると彼女は身を竦めた。

寅はそんな姿の彼女に手を伸ばして、頭を撫でたくなったのだが目の前の液晶が邪魔して浮かせようとした手を反対の手で制した。

「まあ、とりあえず俺の名前は清龍寅、だ。どうとでも言えばいい。そんであんた、名前が言いづらいから、何かいいほかの名前は無いのか?」

 寅は軽く目を閉じると、バーチャコラルが名前を教えてくれたのだから彼自身言わないのは可笑しいと思った。

「あ……、それじゃあ、寅さんで。ええっと、ですねー。先程名前を申し上げたときにバーチャと呼んでいましたよね? それでいいですし、バールかエイトでも良いですよ」

 寅の提案にバーチャは頷くと、ニッコリと微笑む。

「そうか……。んじゃ、バーチャでいいな」

「はい! 寅さん」

 寅も頷くとバーチャは嬉しそうな声で笑いかけた。



 初めてバーチャと出会ってから既に2ヶ月が経った。

2ヶ月とは短くも長い時間で、お互い自身がよく知るには十分な時間だった。


「寅さん! 今日もオールはしないですか!?」

「ん~。そうだなぁ、今日はそういう気分じゃないかもな……まぁ、2日もオールしたから流石に疲れるな。それよか、バーチャお前はどうしてるんだ? 眠たくはないのか? 同じようにオールしてたから……」

「あ、はい。私はアンドロイドなので眠たくないんですよ~。やっぱり、寅さんは人間ですからね。睡眠とは人間の欲のうちの1つですし、私にはお気遣いなく寅さんは寝ていてください」

寅は毎日パソコンに向かって座っている。

そのためネットサーフィンをする御陰で寝ていない時が結構あり、睡眠時間をその翌日、丸1日ぐらい施さなければ過労で倒れてしまう。……と去年知り、両親に迷惑を掛けた。

だが、彼は両親を信用していない、親(人という人)はなにせ己の事しか目がないのだ。部屋に閉じこもって誰かと喋っている彼に怖気付いたのか双方とも無視を決めかねているらしい。

だからか、彼には親がいない存在に近かったのだが、朝昼夕の飯はちゃんと作ってくれ、そこだけ感謝はしていた。

それがなければ彼は餓えていた可能性が高いのだ。

バーチャは寅を見つめ、そんな彼女は微笑むので彼女は彼女なりに気にかけているのだろう。

「ふぁ……、んじゃ、俺寝るわ。そろそろ眠たくなってきたし」

「はい! お休みさない、寅さん」

 欠伸をしてベッドに潜り込んで目を閉じた寅にバーチャは優しく声をかけて来た。

何時も彼が寝る際、バーチャは母親のように接してきてくれる。

そんな、バーチャは彼に優しさを分けてくれているのか……。


「と……さん……。寅さん! 起きてくださいよ! 大変なんですよ!」

 夢現の中で、聞き覚えのある声が聴こえて来た。

彼にはその声がやけに近く聞こえて、それからいつも電子音なのにも関わらずさっきの声はやたらリアルで――……。

 普通に考えて有り得ない事が起きていると気がついた寅は勢い良く布団を捲る。


ゴッ!


「きゃ!」

「うがっ……! つぅ~……って、おい……お前……何で出てきているんだ?」

 行き成り起き上がった寅と何故か近くにいるバーチャと頭をぶつけたがそんなことは気になるような状況ではなかった。

「わ……分かりません。私も何でこのようなことになったのか――……」

「そ……そうか」

 寅は言葉を失うしかなかった。「絶句した」という言葉が相応しいかもしれない、バーチャは液晶の中の住人だ。

だからこそ考えて見ると、これは夢なのではないのかと思ったからか、彼は思いっきり頬を抓る。

「いっ!」

「寅さん! 大丈夫ですか!?」

 小さく悲鳴を上げてしまった寅の方を向き、バーチャがのぞき込んで来る。

彼女は何処からともなく鏡を出して寅の頬を見せてきた。

その頬は強く抓りすぎたお陰で爪痕が付いてしまった。

「私、実は治癒能力を持っているんですよ。直しますね!」

「いや……良いよ。抓り跡だしすぐ治る。それにバーチャの治癒能力は向こう側だけだろ?こっちの世界じゃそれは意味がないんじゃないのか?」

 バーチャは自信満々に仰け反るが寅は丁寧にお断りさせてもらった。……が彼女自身納得いかないかのようにむくれてしまった。

「いいですよ、良いですよぅ! 寅さんが壊れても直して上げませんから!」

「ちょっと待て!! 壊れるって何!? 怖すぎだろ!」

 バーチャそんなことをサラっと言い、寅は背筋が凍る感覚がした。

「え……? 怖い? 何処がでしょうか? あの世界はプログラムが飛ぶ、又は消える事を壊れるって言うんです。人様も同じことでしょう?」

「いやいや、何か勘違いしているみたいだけどさ、俺達人間は“モノ”じゃないし、そんなに壊れないから……」

 バーチャは不思議そうに首を傾げ、寅を見ている。

そんな彼女に寅は説明をする。

「人間は脆く壊れやすいのは確かだが、その壊れるというのは心身――もとい心の中が崩壊しているってことなんだ。人で言うと爪痕とかかすり傷だとか打撲だとかは怪我をする負傷する言葉を使うんだ。だから、壊れるという言葉はあんまし使わないな」

「そ……そうなんですか?」

 人間の摂理とも呼べる現象をバーチャは今ひとつ、全くと言っていいほど知らない。

人間の3大欲求ならばパソコンの情報ツールサイトから知れるが、それほど人間は未知で不思議で脆いものでもあるわけだ。

 不思議そうに首を傾げ、ガッカリしたように声を落としたバーチャに寅はそうだと頷く。

「まあ、そんなにガッカリしなくても……さ、パソコンが壊れたら一緒に直そうか。俺一人でも直せるのは直せるが時間が掛かっちまうからさ。そんな時間があればパソコンしたいから手伝ってくれないか? バーチャがそれでもいいなら手伝ってよ」

 そんなバーチャを見過ごせず、寅はバツが悪そうな顔をして彼女に振る。

「はい!」

 寅の提案にションボリしていたバーチャは笑顔になった。


 またそれから、バーチャは液晶の世界に帰らず(と言っても帰れない、の間違いだが)寅のベッドの上に正座して居座っている。

寅は通常パソコンに向かって座っているからベッドは使わない、寝る際は床に敷いた布団を使って寝ているのだが、寅はバーチャが寝ている姿――もとい寝顔を見たことが無いことに気が付いた。

「そう言えば、バーチャは寝ているのか?パソコンの中は時間が経っているのかどうかさえ解らないが、現世に出ているから眠くなるんじゃないのか?」

「あ……私は寝てないというかちゃんと寝ていますよ!寅さんが言う通り、向こうでは時間が経って無かったのですが、こちらに来てから時間が経つにつれて眠くなります。なので、私は寅さんが寝ているときに寝ているので、気が付かないだけですよ」

「ということは俺が寝ているときにバーチャも寝ているってことかよ……」

「まあ、そうなりますね。でも私の寝顔を見ても良いことないですよ――?」

 結局、寅はバーチャの寝顔は見られず仕舞い、あれからもバーチャの寝顔を見たことはなかった。無理して見ようとしても、バーチャも寝ることは無かった。

寝たふりも見破られ全く見れた試しがない、だからか寅は諦めていた。

だが――……、とある日、寅は友達の家に泊まるという置き手紙を、机の上に置いてあったのをバーチャは見つけた。

「寅さん……友達がいたのですね……」

 バーチャは驚きながらふふっと微笑んだ。


この後の展開が考えられず、断念した思い出……。

確か、ちょいホラー展開の予定でした。


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