軍人、洗濯機を作る①
翌日、レギオスが作業場に行くと既に鋳物の型は完成していた。
注文通り、見事な型である。
細かな部品も一つ一つ作ってあった。
「おお、もう出来たのか。すごいなコリンズ」
「もちろんじゃ。行っておくが徹夜なぞはしとらんぞ。早寝早起きがモットーじゃからな。晩飯前には終わっとったわい」
「流石だ。仕事が早いな」
「うむ、それでは早速型を流し込むとするかの」
既に作業場の炉には火が入っている。
ここで溶かした鉄を型に流し込み、冷やして固めれば完成だ。
「手伝おうか?」
「不要じゃ。まぁそこで見ておれ」
コリンズはレギオスを下がらせると、炉から真っ赤に溶けた鉄を取り出し、型に流し込む。
ジュウウウ、と砂の焼ける音がして白い煙が上がった。
次々と流し込み、終わる頃には砂場は煙で充満していた。
「ふぅ、終わったぞい」
「けほっけほっ……煙いな。外へ行こう」
「ほっときゃ煙突から出て行くがのう。まぁいい、酒でも奢って貰うとするかい」
「昼間っから酒かよ。まぁいいさ。来い、なじみの店に行こう……けほっ」
作業場から出たレギオスとコリンズは、町の酒場へと向かう。
昼は定食屋をやっているが頼めば酒も出てくるのだ。
「おばちゃん、酒二つ」
「一つはこの店で一番強ーいやつ、じゃ」
「あと定食を二つ。腹減ったし」
「一つは特盛り、じゃ」
「あいよ!」
店主はしばらくすると、定食と酒を二つずつ持ってきた。
一つは注文通り、一番強い酒に特盛りだった。
既に昼食のピークは終わっており、二人は静かな食堂でのんびりと食事を楽しむ。
「ほう、ちょっと甘いが良い酒じゃあないか」
「これで甘いのかよ。全くドワーフの舌はどうなってんだ?」
店で一番強い酒をぐいぐいと飲み干すコリンズを見て、呆れるレギオス。
とりあえず勢いで自分も酒を頼んでしまったが、一口でほろ酔いになっていた。
コリンズはあっという間に自分の分を飲み干してしまうと、追加を頼む。
「女将、酒のお代わりじゃあ!」
「あいよ、ドワーフさんにゃこれじゃ足りないかね。樽で出した方がいいかい?」
「がっはっは! まだ昼だからのう。仕事も残っとるし、また夜に改めて来るわい! ここは飯も美味いし女将も美人じゃ! 気に入ったぞい!」
「あらやだよ。口の上手い人だこと!」
そんな風に笑いながら、店主は付け合わせのサラダを出してくる。
目を丸くするコリンズを見て、店主は笑みを浮かべる。
「サービスだよ。サービス。また来ておくれよ」
「おう、毎日通うぞい!」
どうやらコリンズもこの店を気に入ったようである。
とはいえ毎日は通いすぎだろ、とレギオスは内心で突っ込む。
結局二人は夕方近くまで、ワイワイと騒ぐのだった。
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