軍人、プラスティックを作る②
「……なにそれレギオス」
「牛乳だ。これでプラスティックを作る」
大量の樽を家に運び込んだレギオスに驚くシエラ。
その答えにもう一度、驚いた。
「プラスティックってあれだよね。帝都でよく見た、軽くてすぐパキッて折れる。でもあれの原料って石油じゃなかった?」
「あぁ、だが他にも代用出来るものはあるんだよ」
例えば樹脂など、石油を分解して作るのが効率が良いだけで、他にも作る方法は何種類か存在する。
その中の一つが牛乳だ。
「まぁ見ていろ」
そう言ってレギオスは買ってきた巨大鍋に牛乳を注ぎ始める。
沸騰したところへ酢を投入。するとじわじわと固形物が浮き出てきた。
「わ、何これ?」
「タンパク質だ。熱した牛乳に酢を入れると分離するんだ。これを固めてプラスティックにする。手伝ってくれ」
「ん、わかった」
レギオスから渡された網で、それを掬っていく。
白くてどろっとしたものが用意した桶の中にひとかきずつ溜まっていく。
しばらくやっていると、それは出なくなった。
「白いの、もう出なくなっちゃったよ」
「……このくらいが限界か。ではそれをふきんで濾してみよう」
次の行程は水分を飛ばすこと。
何度もふきんで濾すと、粘土のようになっていった。
「おー、それっぽくなった!」
「これがプラスティックの元となるんだ。シエラ、それで何か作ってみてくれ」
「いいの?」
「実験だからな。出来るだけ細かいものがいい」
「わかった」
今回は本格的に作る前の軽い実験である。
シエラは粘土のようになったそれを手で捏ねていく。
「……出来た。鳥さん」
シエラが作ったのは、翼を広げた鳥の模型である。
飾りに出来そうなほど、良い出来だった。
「ほう、結構器用だな」
「でしょ。昔はよく作ってたからね」
ふふんと得意げに鼻を鳴らすシエラ。
レギオスが仕事の時など、シエラは粘土細工をよく作って暇を潰していたのだ。
「ふむ、これならテストには十分だな」
そう呟くと、レギオスは鉄箱の中に鳥を入れた。
蓋を閉め、箱の外側に手を当てるとそのまま電撃を放つ。
ジジジ、と虫が鳴くような音がして、鉄箱が熱気を放ち始めた。
電子を両側から放ち、空気を振動させる事で鉄箱の中を満帆なく温めているのだ。
数分後、蓋を開けると中からモワッと白い煙が上がった。
「おー、熱くなってる。もしかしてこれ、電熱器の代わりに使えるんじゃ?」
「そうかもしれないが、使い分けだな。それにこの技は細かい魔力操作を要する。シエラにはまだ早い」
「むぅ、練習してみる」
「あぁ、じっくり見るといい」
レギオスが鳥をひっくり返し、また電子で温めるのをシエラはじっと見つめるのだった。