軍人、プラスティックを作る①
プラスティックの作り方は石油を分離させ、気体として放出された物質を集め、加工しやすいように固形化させる。
顆粒にしたそれを袋に詰め、溶かして使うのだ。
レギオスもその開発、研究には参加しており、成型工場を立ち上げたメンバーの一人である。
手順はわかる、しかし……
「流石に設備的に厳しい、か?」
田舎のギャレフでも石油は手に入るが、成型に必要なガラスやプレス機をわざわざ作らねばならない。
個人の力では難しいだろう。
「何か代わりの、もっと手軽な……」
考え込むレギオスがテーブルで唸っていると、コトンとコップが置かれた。
シエラだ。コップには白い液体が注がれている。
「はい、牛乳。ジークさんが持ってきてくれたよ」
「……あぁ、そういえばあいつの実家は農場だったな」
ギルドの魔獣ハンター、その取りまとめ役であるジークは、レギオスの友人の一人である。
この町に引っ越してきた時は少し絡まれたが、今ではたまに飲みに行く程度には良好な関係だ。
最近は牛乳を届けに来てくれている。
「牛乳、牛乳か……うん、代わりに使えるかもしれないな!」
「?」
一人で頷くレギオスを見て、シエラは首を傾げるのだった。
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「おーい、ジーク!」
「んお、レギオスじゃねぇか。お前がここへ来るなんて珍しいな!」
牧場を訪ねると、ジークが牛に餌をやっていた。
今の季節は魔獣が少なく、狩りはオフシーズンなので農場の手伝いをしているらしい。
太い腕でぐいと汗を拭うジークに、レギオスは駆け寄る。
「少し用があってな。牧場の牛乳で廃棄処分するのとか、ないか? あったら譲って欲しいんだ」
乳牛は毎日乳を絞らないと病気になる。
故に使いきれずとも絞る必要があり、余った分は廃棄処分されるのだ。
保存も出来ないので売り物にはならず、廃棄処分するしかない。
「あん? そりゃあ構わないがよ。もう大分日にちが経ってるから飲むのはお勧めしないぜ。腹を壊してもいいなら別だがな」
「心配しなくても飲むわけじゃないさ」
「ならいいけどよ……こっちに来な。廃棄用のが山ほどあるぜ」
連れて行かれた先は貯蔵樽がずらっと並んだ倉庫である。
樽には日付が書かれており、今日の分だけでも二つあった。
「こりゃ相当余ってるな」
「一週間で捨ててるんだ。もう飲めないからな。こいつは持って行って構わない」
「おお、ありがたい! しかしこんなに乳牛がいるんだな」
「……昔はよく牛乳が売れてたから買ったんだが、今は中々厳しくてな」
やれやれとため息を吐くジーク。
時代は移ろいゆくもの。いつまでも景気良く売れてくれるとは限らない。
それどころか、今となっては随分重荷になっているようだ。
「バラして肉にしたいところだが、乳牛の肉は乳臭くって売れやしねぇ。ガキどもも牛を可愛がってるしよ。どうにかいい方法はないかねぇ」
「それならチーズにしてみればどうだ?」
「だめだ。それでもここは気温が高いだろう? 保存が出来ねぇよ」
チーズは牛乳よりは保存が効くが、限度がある。
だがレギオスには一つ、思い当たる節があった。
洗濯機の次に作ろうとしていた、冷蔵庫。
食品などを入れ、低温にて保管する電気機械である。
「……そのうちなんとかなるかもな」
「ん? 何か言ったかレギオス」
「あぁ、その問題、解決できるかもしれない。期待して待っていてくれ」
「お、おう……」
レギオスの言葉に、あっけにとられるジーク。
ともあれ、レギオスは目的であった大量の牛乳を手に入れたのである。




