軍人、家電を完成させる①
「ほれ、電熱器とやらの完成じゃぞい」
テーブルの上に、手で抱えあげられるほどの機械が乗せられる。
お披露目の場はレギオス宅。
レギオスとシエラがそれを見て目を丸くしている。
「へぇ、これが電熱器?」
「おぉ……これはすごいな!」
コリンズの作り上げた電熱器はレギオスの思った通り、いや、それ以上の出来栄えだった。
隙間もなくぴたっと埋め込まれた部品の数々、全くズレのない箱、およそ人の手で作られたとは思えない出来に、レギオスは舌を巻いた。
「レギオスが作ったのよりずいぶん小さいね。それに軽い」
「がっはっは! ワシにかかればこんなもんよ! さてさてそれではスイッチを入れてみるとするかのう!」
「そのプラグをコンセントに挿してくれ」
コリンズは頷くと、手近にあったコンセントへと突き刺した。
水の張った鍋を置き、本体に取り付けられたツマミを右に捻るとカチッ、と音が鳴る。
「……動かないよ、レギオス」
「温まるまで時間がかかるんだ。少し待ってろ」
電熱器は電気に抵抗を与え、直接熱を生み出す機械だ。
炎が出ない為、時間がかかるし火力も弱めなのである。
待つ事しばし、ぽこんと鍋の中から泡が浮く。
「おおっ!?」
続いて、ぽこぽこと泡が浮いてくる。
更に、湯気も。
レギオスが水面を指で触れると、熱が感じられた。
「成功だ」
「おおう! やったのうレギオスよ」
「あぁ、あんたのおかげだ。コリンズ」
「すごいねコリンズさん、レギオスも!」
三人は手を取り合い、喜びを分かち合った。
「それじゃ、お祝いに私がゴハン作るね」
「あぁ、頼むぞシエラ」
「下処理はしてるから、ちゃっちゃと作るね」
言うが早いか、シエラは早速調理を始める。
既に切っていた肉と野菜を鍋に入れ、調味料を入れて煮込んでいると、いい匂いが漂い始めた。
それを皿に盛り付け、テーブルに並べる。
「さ、召し上がれ」
「いただきます」
テーブルに並んだ季節の野菜の煮物、焼き魚、その他諸々は全てこの電熱器で作られたものだ。
レギオスがまず、レンコンを一口。
「うん、美味い。ちゃんと火も通ってるし、いつもの味だ」
「うむうむ、魚もちゃんと中まで焼けとるぞ。バッチリ美味いわい!」
レギオスとコリンズがばくばく食べるのを、シエラは嬉しそうにじっと見ていた。
「ありがとう二人とも、おかげで家事が随分楽になるよ」
「ふふん、この程度で満足していていいんかの?」
「? どういうこと?」
「他にも便利な道具を開発中なんじゃよーん。な、レギオスよ」
「あぁ、楽しみにしていてくれよ。シエラ」
悪戯っぽく笑う二人を見て、シエラはため息を吐く。
帝国にいた頃、様々な実験を行っていた時のレギオスの顔をふと思い出していた。