軍人、機械製作に着手する①
宴が終わって翌日、ドワーフらは村の引越し準備で大わらわだった。
そんな中、レギオスは長老の元へと呼び出された。
長老は改まった様子で、頭を下げる。
「――レギオス殿、色々と本当にありがとう。ワシらもようやっと故郷に帰ることが出来る。お主のおかげじゃ」
「いえ、自分は大したことはしていません。運が良かっただけですよ」
「そんな事はない。火山竜に相対し、全く怯えなかった胆力。岩を砕き、魔獣の群れを退ける魔術の数々、コリンズから報告は聞いておる」
どうやらコリンズが報告役だったようだ。
いや、あの男の事だ。勝手にやったのだろうとレギオスは考えた。
「……とにかくよかったです。では落ち着いたら是非、こちらの注文も」
「うむ、もちろんじゃ! 皆、恩人であるレギオス殿を手伝いたくて、自分にやらせろとうるさいからのう」
「おい長老、その話はワシがやる事になっとるぞい」
ひょいっと顔を覗かせたのは、コリンズだ。
ずんずんと中に入ってきて、どっかと座る。
「案内の時にそう約束したんでのう。他の者たちはまたの機会にしてくれんかい?」
「ふむ……レギオス殿がいいならいいが……コリンズよ、言っておくがドワーフ族の恥を晒すような仕事はするでないぞ?」
「なんじゃと!? 言っておくがワシの芸術作品は耄碌じじいには到底作れるもんじゃないぞ!」
「ほっほっ、若造が言いよるわい。そんな大口は十年早いと思うがのう?」
「ハッ、じじいよ、十年も経ったら死んどるんじゃないか?」
「ま、まぁまぁ」
コリンズと長老の言い争いを宥めるレギオス。
「別に心配などしていませんよ。ブラックアクスの親方なら分相応なくらいです」
「そうかのう」
「えぇ……だから頼んだぜ、コリンズ」
「当然じゃ! 受けたからには最高の仕事をするぞい!」
声を張り、任せろとばかりに胸を叩くコリンズ。
「ではコリンズよ、お前は村の再建はやらんでよい。その代わりにレギオス殿の仕事をしっかりやってくるのじゃぞ」
「わかっとる! 後世まで語り継げるほどの大仕事にしてやるからのう!」
どうやら無事、話がついたようでレギオスは安堵の息を吐く。
またきっと訪れる、そう約束をして、村を出るのだった。
「てなわけでよ、このままレギオスの町まで行こうと思う」
「ギャレフまでか?」
「おうとも。せっかく仕事道具を持ち出しておるしのう。機械製作とやらはワシにとっても初めての試みじゃ。お前さんの話も頻繁に聞く必要がありそうだし、しばらくは町の付近に工房を借りて住んでみるさ。時にレギオス、町に鍛冶屋は足りとるか?」
「ないからここまで来たんだよ」
「なら客に困る事はなさそうだの」
大笑いしながら、コリンズは荷馬車を引いていく。
三人はギャレフへと戻るのだった。