軍人、火山竜と相対する①
目の前に降りてきた火山竜は、レギオスらを睨みつけていた。
今にも炎を吐きかけんとしているようだ。
コリンズは慌てて一歩前に出て、声を張る。
「待て待て、ワシらはここは昔住んでた者じゃ。荷物を取りに参った。火山竜よ、お主に敵対するものではない」
「貴様……ドワーフか。そっちの二人は人間だな?」
「レギオスだ。彼らの手伝いに来た」
「シエラ。同じく」
火山竜は三人を見下ろし、ふんと鼻息を吹いた。
「……ふん、なるほど。荷運びか。そういえば山の麓に貴様らドワーフの村があったな」
「以前、火山の噴火に飲み込まれてしまったがの」
「あぁ……そういえばそんな事もあったな。残念だったが、我には関係のない事だ。そんな事より――」
言葉と共に、びりびりと威圧感を放ち始める火山竜。
レギオスらは思わず身構えた。
火山竜はゆっくりと口を開く。
「――その肉、食わせろ」
「……は?」
その言葉に三人は目を丸くした。
火山竜はもどかしそうに言葉を続ける。
「ええい、だからその肉を食わせろと言ったのだ。香ばしい匂いを漂わせおって。辛抱たまらんわ」
「あ、あぁ……どうせ食べきれないし構わないが……」
「匂いの元はその香料だな? それも忘れるでないぞ」
妙に注文のうるさい火山竜に戸惑いつつも、レギオスは肉を焼き始める。
パチパチと火の爆ぜる音に紛れて、コリンズにこっそり話しかけた。
「……なぁコリンズ、この火山竜って以前からここにいたのか?」
「ふぅむ、この村の伝承では古くからこの山に住んでおるらしいがの。ワシも見たのは初めてじゃ」
「それが何でいきなり? もしかして火山の噴火と関係あるのか?」
「さぁ……だが可能性はあるかものう」
「うぬら、聞こえておるぞ」
二人の会話に、火山竜が割って入る。
「噴火と我は何の関係もない。火口の中で眠っていたらこう、いきなりぐらぐらーっと来てな。気づいたら噴火しとったのだ」
火山竜の言葉にレギオスは拍子抜けしたと言った顔で答える。
「……なんだ、意外と話せるんだな。霊獣とはもっと乱暴なものかと思っていたよ」
「我を何だと思っとるのだ。敵か否かの区別くらいつける。……それより肉はまだか」
「わかってるって」
火山竜は小山ほどはありそうな巨体である。
少々では満足しないだろうと考えたレギオスは、火蜥蜴の肉を大きめに切って大量に焼いていた。
そしてテイスティパウダーをひと振り。
香ばしい匂いが漂い、火山竜がひくひくと鼻を鳴らす。
「はいよ」
「うむ……むぅ!これは中々……!」
火山竜はひと舐めで串焼きを平らげてしまった。
「次を出せ」
「わかったわかった」
要望のまま、レギオスは火山竜に肉を差し出していく。
その食べっぷりに三人は閉口していた。
あっという間に火蜥蜴の肉はなくなり、火山竜は物足りなさそうに舌なめずりをしていた。