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軍人、帰り支度をする①

「よぅし、ワシの荷物は大方運びこんだぞい」

「まだ荷車に空きはある。次は他の工房を……」


 ずずん! と天井が揺れ、パラパラと小石が落ちてくる。


「……と思ったが、少し外で様子を見た方がいいかものう。さっきから地揺れがしとるわい」

「そうだな。本格的に持ち出す前に、支柱を組んだ方がいいかもしれない」

「というか腹が減ったのう、ちょっと休憩にせんか?」

「賛成、ぺこぺこ」


 コリンズの腹がごろろと、シエラの腹がくるると鳴った。


「わかった。動きっぱなしだったからな。俺が用意するから二人は休んでいて構わない」

「ほ? いいのかのう?」

「あぁ、先日はご馳走になったからな。今度は帝国式をご馳走しよう」

「ほう! そいつは楽しみじゃ!」

「私も手伝うよ」

「ありがとう。ではシエラ、俺は食材を調達してくるから、薪を拾って火を付けていてくれ」

「うん」


 レギオスはそう言うと、森の奥へと入っていく。

 魔力を練り上げ、周囲に索敵の魔術を放つ。

 探知するのは生命反応。

 目を瞑ると、近くに丁度手頃な生命反応を見つけた。


「この反応……火蜥蜴か。よし」


 レギオスはそう呟くと、反応に向けて駆け出す。

 足音を消し、気配を殺し、近づいていくと……見つけた。

 分厚い皮に覆われ、小さな牙が無数に生えた大型のトカゲ。

 火蜥蜴は岩の上でのんびりと日を浴びていた。


「……悪く思うなよ」


 レギオスが指先から放った電撃が、火蜥蜴を貫く。

 火蜥蜴は一度びくんと震えた後、動かなくなった。


「よし、獲物確保。あとは……うん、匂い消しに香草を摘んでおこう」


 辺りの草を何枚か千切ってポケットに入れ、火蜥蜴を抱えてシエラたちの元へ戻る。

 丁度薪に火がついたところのようで、積み上げられた薪の中から白い煙が上がっていた。


「おかえり、レギオス。火、ついてるよ」

「おう、ありがとうな」


 早速レギオスは火蜥蜴の解体を始める。

 皮を剥いで内臓を取って、適当な大きさに切り分け肉に串を刺していく。

 終わる頃には炎は大きくなっており、摘んできた香草を中に入れて一緒に燃やす。

 その肉を地面に刺し、炙り始めた。


「なんじゃなんじゃ? 帝国式っちゅうから期待したが、見たところ普通の串焼きかね? こんな場所だし文句つけるつもりはないが……些か拍子抜けじゃのう」

「まぁまぁ、帝国式なのはこれからだ。きっと気に入ると思うぜ」


 レギオスは背負い袋から取り出した小瓶を中に振りかけていく。

 白と黒の粒が肉についた途端、香ばしい匂いが辺りに漂い始めた。


「ぬ……こ、これは……!」

「美味しそう!」


 二人が感嘆の声を上げる中、肉は赤から白、そして茶色に染まっていく。

 焦げ目が付き始めた辺りでくるっと半回転させ、また炙る。


「こいつはテイスティパウダーってもんだ。こいつを振りかけるだけでただの肉が見違えるほど美味くなるんだぜ」


 テイスティパウダーとは塩、コショウ、その他諸々の香辛料がブレンドされた万能調味料である。

 軍で支給され、緊急時はこれをかけて食べれば何でもそれなりに美味い。

 レギオスも軍人時代、補給が立たれた時などは野草や小動物の肉にこれをかけて飢えを凌いだこともある。

 戦争が終わったあと、レギオスはテイスティパウダーにさらなる改良を加え市場に出回らせた。

 するとすぐに評判になり、一般市民の実ならず帝国中のレストランまでも使い始めたという。


「むぅ! こいつは美味いわい! 火蜥蜴特有の臭みも消えているし、ぴりっとした辛みと塩っけが素材の味を抜群に引き立たせておる!」

「気に入ってくれて何よりだ」

「おう、帝国式も中々のもんじゃ!」


 コリンズは上機嫌と言った様子で串焼き肉をバクバクと食べるのだった。


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