軍人、宴に招待される②
そんな事を考えていたレギオスの横で、長老が楽しげに笑う。
「ほっほっ、客人よ。別にプレッシャーをかけようとしたわけではないのじゃよ。我らドワーフは無類の宴好きでの。こうしてなんやかんやと理由をつけては騒ぐものなのじゃ」
「理解しております。郷に入っては、といいますから」
「理解が早くて助かるのう」
ドワーフ族については元軍人であるレギオスはよく知っていた。
宴の事も、その気性についても。
彼らは宴を共にしてようやく真の仲間となる。
こうしてレギオスらを歓迎したことで、皆の協力を仰げるようにという事だろう。
故に今回の宴はレギオスにとっても僥倖であった。
つまりそれは本当の意味で歓迎されているという証なのだから。
「まぁ楽しんでいくとよい……おい、客人に料理を持って参れ」
長老が命じると、若いドワーフが大皿に乗った料理を運んでくる。
レギオスの前に置かれた大皿には、豚の丸焼きがどかっと乗っていた。
ダイナミックな料理にシエラはうわっと声を上げる。
それを持ってきたドワーフは、豚の皮の部分を切り取り、たっぷりとソースをかけてレギオスとシエラに差し出す。
「うわ、辛そう……」
あまりの赤々しさに、思わず口元を押さえるシエラ。
レギオスは構わず皿を取り、手を合わせた。
「いただきます」
ナイフとフォークを手に、豚の皮をそのまま一口で頬張る。
途端、レギオスの口内に電撃が走る。
辛い、それは確かにだが、それだけではなく旨味が舌の上にねっとりと残り、濃厚な味わいが広がっていく。
酒の甘みによるものだろうか。
しつこさを打ち消すように、ぴりりとする香味料が味のアクセントになっていた。
「こいつは美味い!」
「そうであろう!ドワーフ名物の辛酒を煮込んだソースを何重にも塗りたくり焼いた豚じゃからの」
「えぇ、特に皮が絶品です。パリパリとした食感も良い」
盛り上がる長老とレギオスをじっと見ていたシエラだったが、思い切ったようにぱくりと口に入れた。
シエラは目を丸くし、キラキラと輝かせるともう一口、もう一口と口に運んでいく。
腹が減っていた二人な食事をかき込んでいると、炎の前で女たちの踊りが始まった。
男たちが太鼓で鳴らす力強いビートに乗せた、水着のような格好をした美女たち情熱的な舞踏。
真っ赤に燃える炎と合わさり、それは幻想的な光景だった。
シエラはそれを見て手拍子を合わせ、身体を揺らしてリズムを取っている。
どうやら気に入ったようで、無表情ながらも顔色が明るい。
レギオスはそんなシエラを見て、良い気分転換になったな、と微笑を浮かべた。