軍人、宴に招待される①
「ではレギオス殿、くれぐれも頼んだぞ」
「尽力いたします」
レギオスの言葉に長老は満足そうに頷いた。
「我らの荷物を運び出すのに荷車が必要であろう。馬と合わせて一台、貸し与えよう。納屋に両方あるので持って行くがいい。そしてお主らも疲れたじゃろうから、今日一晩ここで休んでいくとよいぞ。用意は明日までにやっておくでの」
「何から何まで……本当にありがとうございます」
レギオスは頭を下げ、シエラもそれに続いた。
だが長老は神妙な顔で言う。
「なぁに礼には及ばん。ワシらにとっても益のある事じゃしな。……ただし、一つ条件がある」
「?」
疑問符を浮かべるレギオスとシエラを見て、長老はにやりと笑うのだった。
――その晩、村は賑やかな声に包まれていた。
積み上げられた薪の中心を燃え盛る炎を中心に、男も女も、老人子供も集まっている。
どんがどんがと楽器を鳴らし、陽気な歌が辺りに響き渡る。
料理がところかしこに並び、人々の前には酒瓶が置かれていた。
「あー……おほん皆、よく集まってくれたの」
炎の前で長老が酒瓶を手に立つと、しんと静まり返った。
その横にはレギオスとシエラがいる。
「今日は新たな客人が村を訪れた。ギャレフの町から来たレギオス殿にその娘のシエラ殿! この二人は明日、火山に赴き我らの仕事道具を取ってきてくれるそうじゃ!」
おおおおお、とドワーフらにどよめきが走る。
期待と喜びに満ちた声。
その迫力にシエラはレギオスの服の裾を握った。
「言うまでもなく我らにとって仕事道具は命の次に大切なもの! 大事に手入れし、使ってきたものじゃ! だが先日の火山噴火で灰に飲み込まれてしもうた……それがようやく我らの手に返って来るかもしれん! 皆、勇者たちを拍手で讃えよ!」
ピーピーと囃し立てるような口笛も聞こえていた。
まさに盛り上がりは最高潮といった具合である。
長老は皆を見渡した後、勢いよく酒瓶を空高く掲げた。
「それでは勇者たちにィ……かんぱーーーい!」
「おおおおおおおおおおおおおおっ!!」
雄たけびと共に、その場の全員が酒瓶を口に付けた。
そして一気に中の酒を呷る。
ぐびぐびと喉を鳴らす音が聞こえてくる。
レギオスも同様に、シエラはジュースを口に付けた。
「……それにしても宴に参加しろ、とはね」
「ね」
ぐび、と盃を呷るレギオスと、くぴ、と一口ジュースを飲むシエラ。
二人の目の前ではドワーフたちが飲めや歌えや、食えや踊れやの大騒ぎだった。
まるでもう仕事道具が帰って来たかのようなはしゃぎぶり。
レギオスはそんな彼らを見て、むぅと唸る。
ちと安請け合いしすぎただろうか、と。
出来ませんでした、では済まなそうだな、と。
もちろん無策ではないし、掘り出せるだけの算段はあるが……確実に仕事をこなさねばと気合を入れ直した。