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軍人、ドワーフ村を目指す③


 二人が案内された先は、村で一際大きな屋敷だった。

 それでもやはり掘っ立て小屋に毛が生えた程度のものである。

 小男は屋敷の前に立つと、声を張り上げた。


「長老! 長老! おるかいの!?」

「む、コリンズか。一体どうした?」


 出てきたのは白髪の老人である。


「客人じゃ。我々に話があるんだとよ」

「ほうほう、客人とは珍しいの」


 長老は興味深げに二人を見る。


「んじゃワシは見張りがあるからよ」

「ありがとうございました。コリンズさん」

「気にせんでえぇよ。はっはっ!」


 そういうとコリンズと呼ばれた小男はさっさと出て行ってしまった。


「さて、それで何の用かの?」

「はい。実は……」


 レギオスは事のあらましを語る。

 かくかくしかじかと、長老はそれを興味深げに聞いていた。


「……というわけで、電気機械を作る為に力を貸していただきたいのです」

「ふぅむ、電気、というのは聞いたことがある。確か帝都ではそうした技術が発達しておるらしいの。人間に協力している同胞もいると聞く。というか実はワシらも興味はある。よかったら設計図か何かを見せてもらえるかの?」

「もちろんです。えぇと、これが設計図です」


 レギオスは手にした紙を長老に渡した。

 長老はそれを見てううむと唸る。


「ふむぅ、どういった仕組みで動くものかは全く想像もつかんが……こいつを作るにゃかなりの技量が必要じゃろうな」

「えぇ、一度自分でも作ってみたのですが、どうにも不器用でして……これをとにかく小さく作って欲しいのです」

「なるほどのう。こいつは確かにワシらの領分かもしれん。ワシなら半分、いや、三分の一まで小さく出来るかの」

「本当ですか!」


 喜ぶレギオスに、しかし長老は曇り顔で答える。


「しかしのう、山の麓にワシらの道具や工房が全て埋まっておってな……」


 その言葉にレギオスはハッとなる。

 帝国にいた頃、ギャレフ近郊で火山の噴火があったのを新聞で見たのを思い出していた。

 当時は戦争中だったのですぐに忘れてしまったが、噴火したのは確かグレン火山と書いてあった。


「そういえばあなた方は火山に住まわれていたはず。ここに移り住んだのは……」

「うむ、そういうことじゃ」


 残念そうに頷く長老。


「十年ほど前じゃったか。グレン火山が突然噴火して、ワシらは何もかも置いて逃げるしかなかった。だが多くの者たちは故郷から離れる事を良しとせず、ここへ残って生活しておるんじゃよ。いつか帰れる日がくれば……そう思いながらのう」

「もう噴火は収まっているのでしょう?」

「あぁ、じゃが火山灰が未だ降り注ぎ、土地も灰に覆われてしまい作物も育たぬ。とてもではないが、住むことは出来んよ」


 火山灰の影響は大きい。

 灰に覆われた大地は作物も育たず、降り注ぐ火山灰は身体を蝕む。

 そこで生活するのはほぼ不可能だ。

 レギオスも他の土地で、故郷を追いやられる人々もを多く見てきた。

 長老は一通り話し終えると、大きなため息を吐いた。


「そんなわけで埋まった道具を掘り起こすのも難しくてな。それさえあれば電気機械だろうと何だろうと作れると思うのじゃが……すまんの客人よ」


 申し訳なさそうな長老に、レギオスは返す。


「――では、私が取ってきましょうか?」

「な、なんと……いやしかし、完全に山の中に埋まっておるのじゃぞ? それに灰にまみれた大地はまともに歩く事も出来んし、呼吸すらままならんぞ」

「大丈夫です。任せてください」


力強い口調でレギオスは言った。

山に埋まっていようが空洞部分を魔術で索敵し、塞がった部分を破壊すれば中に入る事は出来る。

そうすれば中に埋まった仕事道具を持ち出すのも可能。

快活に答えるレギオスを見て、長老はしばし考えた後、わずかに頷く。


「……ふむ、であれば是非ともお願いしたい。そうすれば電気機械だろうと何だろうと、たちどころに作り上げて進ぜよう」

「よろしくお願いします」


 レギオスが差し出した手を、長老が取った。

 まずは交渉成立、である。

 順調、とレギオスは内心呟いた。


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