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軍人、新たなる仕事②

「シエラ、今一番手間がかかる作業は何だ?」

「ん、それはやっぱり料理、かな」


 少し考えてシエラは答える。

 現状、朝一番に起きたシエラが最初にやるのはかまどに火を入れる事だ。

 しかし火事の危険があるので放置しておくわけにもいかず、使うたびに消さなければならない。

 火を起こすには薪が必要。火種は魔術による電撃で可能とはいえ、料理のたびにそれを行うのでは手間がかかって仕方ない。


「そうだな……スイッチ一つで熱を帯び、火を起こせれば随分楽だろう」

「そんな事できるの?」

「この手の電熱器の仕組みは知っている。帝都では試作品も作った事があるからな。まぁ色々試してみるさ」


 ――翌日、レギオスは道具屋へと向かった。

 乱雑に物を積み重ねられた建物の中に入ると、中はより散らかっており足の踏み場もない程だった。


「いらっしゃい! おっ、いつものにいちゃんじゃねぇか。今日は何を探しに来たんだい?」

「銅板が欲しくてな。他にも色々見にきた」

「あいよ、ゆっくり見ていきな」


 言われるまでもなく、レギオスは道具屋を漁り始める。

 鉄棒に鉄板、釘に工具に歯車……この道具屋は意外にも品揃え豊富である。

 店主がその時々の気分で需要の有無にかかわらず様々な物を取り寄せるからだ。

 おかげで探すのは大変だが田舎では考えられないほど品揃え豊富で、レギオスはこの道具屋によく通っていた。


「……あった」


 売り場から離れた場所に転がっていた銅板を引っ張り出してくると、軍手ではたいて埃を払う。


「とりあえずこいつを一枚、あとはネジを幾つかくれ。それと工作場を借りてもいいか?」

「あいよ、好きにしな」


 店主に了解を取ったレギオスは、奥にある工作場へと向かう。

 ここでは買った材料を加工出来るよう、金属鋸や製図板などの大型工具が揃えられている。


「さて、とにかくやってみるか」


 レギオスは自前の工具箱を開け、作業に入るのだった。


 ■■■


「おかえり、遅かったね」


 作業は夜までかかり、帰宅したレギオスをシエラが迎える。


「あぁ、だが完成したぞ。……こいつだ」


 レギオスが台車から引きずり下ろしたのは、大きな金属板の箱だった。


「わお、でっかいね」

「発熱機だ。ちょっとばかしデカくなりすぎちまってな……まぁ役目は果たすと思うぞ」


 レギオスは金属箱を担いで台所に運ぶと、そこから長く伸びた差込プラグをコンセントに挿し込みスイッチを押す。

 シエラは目を丸くして、不思議そうに発熱機を眺めている。


「それってカマドみたいなもの? そこから火が出るの?」

「いや、火は出ない。これは電灯と同じく、フィラメントに電流を通す事で熱と光を発させる装置だ。鉄板の下には電熱線を巻いて設置し、その周囲に銅板を置いて熱を反射させ上部の鉄板に熱を集めている。その上にフライパンを置く事で、調理に使えるんだ」

「なるほど、つまりここが熱くなるのね」

「そういう事だ」

「へぇ、火が出ないのに熱くなるなんて、なんだかワクワクするね」


 そう言っているうちに、鉄板がジワリと赤くなってきた。

 フライパンを鉄板に乗せたシエラが目を丸くする。


「わ、すごい。ほんとにお肉が焼けてる!」

「……ふむ」


 驚くシエラと裏腹に、レギオスは顎に手を当て唸る。


「……これじゃ使えないな」

「え? でも熱くなってるよ?」

「熱くなるまでに時間がかかりすぎるし、さめるのにも時間がかかる。デカすぎる弊害だな。掃除が大変だ。少し小型化したい」


 とはいえそこまで手先が器用ではないレギオスには、これ以上の小型化は難しい。

 どうしたものかと思案するレギオスの脳裏に、ふとこの辺りに住むドワーフ族が浮かぶ。

 非常に手先が器用で、帝都の腕利き鍛冶職人の殆どはドワーフだ。

 彼らの協力を頼めば、発熱機の小型化も叶うかもしれない。


「……行ってみるか」


 ともあれレギオスの、次の目的が決まったのである。

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