5魔 俺のソウルポイントは3億です
5魔 俺のソウルポイントは3億です
「どこでしょうか?」
「墓地に行きたいんだよね」
「お墓参りですか?」
「いやー違うよ。場所も知らないしね」
目的は魂の吸収だ。
墓地になら魂が漂っていてもおかしくないだろうしね。
いい加減にソウルポイントが欲しい。
「ほっほっほ。ルシドナさんらしい。ですが、この街の墓地は大きくルシドナさん1人で行くのは危険ですよ」
危険?
何かあるのかな。
「この街の墓地にはアンデッドが出現する可能性がありますから」
アンデッドかー。
「ゾンビとかスケルトンとかゴーストが出るってこと?」
「詳しいですね」
「まあねー」
ファンタジーの定番だし。
「墓地が広いので管理しきれないので、たまに冒険者や聖職者が退治しに行くくらいです」
「へー。そんなに広いんだ」
行くのが楽しみだ。
「本当に行く気ですか?」
「行くよー」
「危険ですよ。本当に墓地に行くなら私も付いて行きます」
「えー大丈夫だよー。これでも力には少し自信があったりー」
むんっ!
両腕で力こぶを作る。
「そうは見えませんよ。それにルシドナさん1人じゃ墓地には入れませんし」
「そうなんだ」
どうしよう。
魂を吸収するところなんて見られたら……あれ?
よく考えたら別にいいかな。
だってグーゼフは見ても分からないだろうし。
「よし、いこー」
「分かりました」
グーゼフと一緒に応接室から出ると、1人の女性が近付いてくる。
見たところ、グーゼフよりも若い聖職者だね。
グーゼフの部下かな?
「グーゼフ様、終わったのですか?」
グーゼフ様?
「ええ。ですが、用事が出来たのでこれから墓地に行ってきますね」
「分かりました。グーゼフ様なら大丈夫だと思いますが、アンデッドにはお気を付けてください」
「ありがとうございます。ではルシドナさん、行きましょうか」
「うん」
グーゼフと教会を出ると、外には数人の人が居た。
さっきは教会の外に人は居なかったんだけど。
時間が違うからかな。
「墓地は西門の外にあるので、まずは西門に行きましょう」
そう言ってグーゼフが歩き出した。
俺はグーゼフに付いていく。
「墓地は街の外にあるんだ?」
「ええ。街の中でアンデッドが出現したら困りますし、墓地は大きいので街の中には作れないのですよ。なので、普通墓地は街の外に作られますね」
「へー。そんなに墓地って大きいんだ」
「はい。それにこの街の墓地はこの国で一番大きいのですよ」
「そうなんだー」
それは良いね。
魂の量に期待できそう。
「王家の墓もありますから、この国の貴族も亡くなったらこの街の墓地に埋葬することが多いです」
それはますます期待できそうだね。
「なんで王家の墓があるの? この街ってお城とかもなさそうだし、王都じゃないよね?」
「ええ。このシーナスカは王都ではありません」
「だよねー」
「ただ、この国が出来たばかりの頃はこの街が国の中心だったそうです」
「そうだったんだ」
「はい。それでこの街の墓地が大きく、王家の墓があるんです。今でも王族が亡くなるとそこに埋葬するんですよ」
「歴史がある訳だねー」
「そういうことです」
なるほど。
国が出来た頃からの墓地かー。
そりゃ大きくなるよね。
「他にもこの街が学園街だからという理由もありますね」
「学園街?」
「シーナスカには世界でも有名な【カガリ学園】という学校があるんです。なので、シーナスカは学園街と呼ばれています」
「へー」
「カガリ学園に入学する為に世界各国から子供たちが集まってきます。基本的に入学は簡単なので王族も貴族も庶民もやって来ます」
「そんなに有名なんだ。身分関係なく入学出来るって凄いね」
「そうなのですよ。入学費を払えれば誰でも入れますし、その入学費も普通に働いていれば払える金額ですからね。それに入学費が払えなくても学校に借金をすることで入学することも可能です」
この街にそんな有名な学校があったんだね。
誰でも入学出来るって凄い。
しかも、借金まで。
そこまでして学校は大丈夫なのかな?
「それで人が集まれば集まるだけ亡くなる人も増えます。他国から来た方の遺体は遺族が持ち帰ることもあるのですけど、身寄りのなかったり身元が分からない遺体はこの街の墓地に埋葬されるのです」
「墓地が大きくなる訳だねー。でも、そんなに死んじゃう人って増えるの?」
「学校の授業には危険なことも多いですからね。例えば、冒険者志望の子供たちは授業で魔物と戦うこともあって、毎年亡くなる子がいます」
魔物か。
やっぱり存在するんだね。
天魔オンラインにも存在したっぽいし。
まぁプレイヤー同士の争いが目立ちすぎて影が薄かったけど。
「夢や希望を抱いてシーナスカに単身で来る子供も多いですから」
そっか。
身寄りがなくて身元が分からない子供がシーナスカに夢を見て来るんだね。
でも、カガリ学園には冒険者になる授業もあるんだね。
学校は面倒だけど、意外と面白そう。
「あそこにちょうどカガリ学園の生徒たちは居ますね」
「おー?」
グーゼフが見ている方向を見ると、同じ緑色の服を着た数人の子供の姿があった。
「あれが生徒かー。あの服って制服?」
「そうです。あれがカガリ学園の制服です」
「へー」
カガリ学園って制服なんてあるんだ。
なんか制服だけ見れば現代っぽい。
「そろそろ西門に着きますよ」
「分かったー」
確かに門が見えてきた。
ただ、門は閉まっていて数人の兵士が門の前と外壁の上に立っている。
「閉まってるね」
「西門は普段から閉じているのですよ」
「それってアンデッドが出るから?」
「そうです」
「外に出れるの?」
「小門がありますので、そこから出れますよ」
よく見ると、確かに小さな門があってそこは開いている。
これなら墓地に行けそうだね。
門の前に立っていた1人の兵士がこちらに気が付いて小走りで近付いてくる。
なんだろう?
「グーゼフ様」
またグーゼフ様だよ。
「何時もお疲れ様です」
「いえいえ。グーゼフ様は墓参りですか? そちらの……」
兵士が俺を見て固まった。
またかー。
「お嬢さんをそんなに見つめるものではありませんよ。兵士に見られたら驚いてしまうでしょう?」
「あ、すみません!」
兵士がグーゼフの言葉で再起動した。
うーん。
綺麗で可愛いのは良いんだけど、毎回固まられるのは面倒だねー。
そう考えるとグーゼフは凄い。
だって俺を見ても固まらずに自分から声をかけてきたんだから。
「こちらにどうぞ!」
そう言って兵士が門の方に歩いていく。
「行きましょうか」
「ねー。グーゼフって偉いの?」
「どうしてですか?」
「だって様付けで呼ばれているしー」
「ああ、そういうことですか。まぁそれなりですかね」
「ふーん?」
それなりねー。
少なくともこの街の教会の責任者ではありそう。
小門に着くと門の前の兵士がみんなこっちを見ていた。
「どうぞ。お気を付けて」
「ありがとうございます」
グーゼフと一緒に門を潜って街の外に出る。
外にも数人の兵士が警備していた。
空気がどんよりとしている。
「到着です」
「門の外がすぐ墓地なんだねー」
目の前には広大な墓地が広がっていた。
そして青白い人魂のような何かがいくつも浮かんでいる。
「というか、まんま人魂じゃん」
驚いた。
こんなに魂って分かりやすいんだね。
「人魂? もしかして……ルシドナさんには魂が見えるのですか!?」
グーゼフが驚いた表情で俺を見る。
この反応。
やっぱり普通は魂が見えないんだね。
「どうかなー」
「……たまに魂が見える人が居るとは聞きますが……本当に不思議なお嬢さんです。もしかして、それが墓地に来た理由ですか?」
「んー?」
どうしようかー。
隠した方が良いんだろうけど、グーゼフに見せたらどんな反応をするんだろうって気になる。
イタズラ心がムクムクと湧いてきた。
とりあえず、連れていこうかなー。
「ここじゃ兵士さんが見てるし、ちょっと歩こうか」
「分かりました」
グーゼフと一緒に歩いて門から離れる。
「少しお待ちを」
「おー?」
前に人型の骨が立っていた。
スケルトンかな?
「アンデッドのスケルトンです」
「大丈夫ー?」
「ええ。お任せください。【ターン・アンデッド】。」
グーゼフがそう言うと、身体が白く光ってスケルトンが崩れ落ちた。
「おおー。今のって魔法?」
「神聖魔法ですよ」
魔法かー。
あるのは分かってたけど、初めて見たなー。
感動した。
やっぱり異世界っていったら魔法だよ。
「凄い」
「ほっほっほ。簡単な魔法ですよ」
あとで教えてくれないかな?
そんなことを考えながら歩く。
「と、この辺で良いかな」
「結構奥まで来ましたね。ここで良いんですか?」
「ここが良い」
だって俺の目には数え切れない程の魂が浮いているのが見える。
数千どころか数万は超えているだろうね。
これ全部吸収したらどれ程のソウルポイントが得られるのか。
「楽しみだなー」
魂の吸収の仕方は……俺の中にあるね。
普通に魂を吸収しようとすればいいらしい。
でも、魂を吸収するには人間擬態を解いて本来の姿にならないとダメっぽい。
「そろそろルシドナさんの目的を聞いてもいいですか?」
「んー」
まぁ悪魔を知らない訳だし見られても大丈夫かなー。
それにグーゼフならバレても案外大丈夫そうだし。
「秘密に出来る?」
「分かりました。ここで見聞きしたことを秘密にすると誓いましょう」
「そ。じゃあ早速やりますか」
俺は人間擬態を解く。
「そ、その姿は!?」
グーゼフが驚いた表情で俺を見ている。
どうなるかな?
「グーゼフには俺のこと分かる?」
「わ、分かりません。ルシドナさんのような方は初めて見ました」
「ふーん?」
逃げたり攻撃してきたりはしないね。
思った通りだ。
「ここからだ。見えるか分からないけど、よく見ておきなー」
「は、はい!」
俺は右手を天高く上げる。
「彷徨える魂よ。俺の糧となれ」
周囲の魂が揺れ始めて、ゆっくりと俺の右手に向かって動き始める。
「おお! おおおおおおおおお!!」
グーゼフが叫び始めた。
どうやら吸収が見えているみたいだね。
次々と魂が俺の右手に集まり始めた。
そして集まった魂は俺の中に吸収されていき、ソウルポイント増幅炉で燃やされる。
「これはッ! 糧? 魂を力にしている? そんなことがあり得るのかッ!? 許されるのかッ!? しかし、それがッ! それこそが魂の救済ではッ!?」
なんか面白い感じにグーゼフが反応している。
このまま続けよう。
「おおー」
やがて、魂はこの場所からなくなった。
すべて吸収し終えたんだ。
合計ソウルポイントは……約320,000,000。
「うわー。3億を超えちゃったよ」
これならしばらくはソウルポイントに困らなそう。
さて、グーゼフは……。
こっちを見て茫然としているね。
「おーい。グーゼフ生きてるー?」
「……ハッ!」
どうやら気が付いたようだ。
「もしや……あなた様は神なのでは?」
「……ん?」
「あの光景。彷徨っていた魂が救われていくようでした」
「……んん?」
「実際は魂を取り込んでいるようでしたが、それも1つの救済でしょう。あなた様と1つになれるのですから」
「……んんん?」
「どうでしょうか?」
……。
…………。
………………。
「そうデース。俺が神デース」
「おお! やはりそうですか!」
なんかもう、めんどくさくなって適当に神だとか言っちゃったけど、まぁいっか。
「俺を崇めなサーイ」
「ははぁー」
グーゼフが両手を組んで祈り始めた。
いや、やっぱりちゃんと否定しておいた方がいいかな?
「というのは冗談で……」
「分かっていますとも。ルシドナ様の正体は秘密なんですね。秘密は漏らしません」
「あ、そう……」
手遅れだった。
「まぁいいや。じゃあメインに移ろうかなー」
「メイン……ですか。先ほどのは違ったのですか?」
「そーだよ」
「では、メインとは一体?」
「俺の子供を産み出すことさ」
「な、なんと! ルシドナ様のお子様を!?」
「俺は力を使うことで強力な潜在能力を秘めた子供を産み出せるんだー」
「ルシドナ様は命の創造まで出来るということですか。素晴らしい!」
「でも、今の俺じゃ産み出せるのは子供だけだから立派な大人になるまで育てなくちゃいけない。分かるね?」
「はい! 微力ながらお手伝いさせていただきます」
「よろしくー」
これで俺でも子育ては上手く出来そうかな。
「じゃあ早速、俺の子供を産み出すよー。グーゼフは少し離れててね」
「分かりました」
グーゼフが俺から距離を取った。
よし、やろう。
やり方は分かっている。
どれだけソウルポイントを使ってどんな子供を産み出すかを願うだけ。
俺はすでに産み出す子供を決めていた。
やっぱり最初は女の子かな。
限界の1億ポイントを使って最大まで潜在能力を高める。
あとは願うだけ。
「来たれ、我が愛しき子よ」
そう願うと俺のお腹に黒い光が産まれて段々と大きくなっていく。
一定の大きさになったら俺のお腹から離れて、目の前の空中に移動する。
そして――
「産まれろ」
黒い光が弾けて中から白銀の子供が産まれた。
子供の詳細は次回ですね。