1魔 天魔オンライン開始?
とりあえずお試し。
完全な説明回です。
読みやすいように書いたつもりです。
1魔 天魔オンライン開始?
0時になった頃。
俺は急にベッドから身体を起こす。
「んー! 何か暇つぶしでもしたいなぁ」
普段、一日中ボケーっとしていても問題ない俺だけど、今日は何か暇つぶしをしたい気分。
「という訳でパソコン起動ー」
今年組んだばかりのハイスペックPCが静かに動き出して、モニターが映る。
デスクトップ画面まで僅か3秒。
「やっぱりパソコンは速くなくちゃね」
PCの速度に満足したところで……どうしよっかなー。
「うーん。とりあえず動画サイトでも回ろうかな」
ブラウザをクリックして、ブックマークから動画サイトに飛ぶ。
「まずはランキングからゲームでも……うん?」
動画サイトのランキングをクリックしようとして端っこの方に表示されている広告が目に入る。
「天魔オンライン……」
それは、今ではすっかり人気のなくなったパソコンでプレイする3DMMORPGの広告だった。
【天魔オンライン】っていうのは昔から何度か聞いたことのあるタイトルだ。
結構な長寿ゲームで、悪魔滅亡事件っていうのが一時期話題になっていたのを覚えている。
「オンラインゲームかぁ……たまにはこういうのも良いかも」
そう思った俺は早速、天魔オンラインの広告をクリックした。
すぐに天魔オンラインの公式サイトに飛んで――
「え? サービス終了?」
なんと、公式サイトのトップページにサービス終了のお知らせと書いてあった。
気になってすぐにサービス終了の文字をクリック。
「皆さまに愛され続けて15年。天魔オンラインはサービスを終了することになりました……か」
どうやら天魔オンラインは本当にサービスを終了するようだ。
しかも、今日がサービス終了日。
サービス終了の理由はプレイヤー人口の減少らしい。
「えー。完全に天魔オンラインやる気分だったのにー」
今日一日しかプレイ出来ないけど、プレイしようかなぁ?
そんなことを考えながら画面を下までスクロールすると、サービス終了記念キャンペーンという文字が。
「サービス終了記念キャンペーン? サービス終了なのに記念キャンペーンなんかやってるの?」
気になってクリックすると、無駄に飾り付けられたサービス終了記念キャンペーンのページが開く。
「なんでこんな飾り付けてんのさ。まぁいいけど」
気になるサービス終了記念キャンペーンの内容はプレイヤーの獲得経験値100倍にURスキルチケットが1枚。
それにゲーム内通貨の金貨が1万枚。
あとは初期種族が一段階進化した状態でゲームを開始出来ること。
「URスキルチケットとか金貨1万枚は価値がよく分からないけど、経験値100倍っていうのは凄いよね。初期種族進化はどうなんだろ?」
サービス終了だからって獲得経験値100倍なんて随分と思い切ったことをするなぁ。
でも、これなら本当に今日一日だけプレイして遊ぶのも悪くないかも。
「とりあえずクライアントをダウンロードして、情報を集めよっか」
俺は公式サイトのゲームの説明ページを開く。
天魔オンラインはプレイヤーが最初に天使になるか、それとも悪魔になるかを選んでプレイするゲーム。
天使はNPCの人間を救うことでレベルが上がり、悪魔は魂を吸収することでレベルが上がるらしい。
NPCを救うか殺すかはプレイヤー次第だって。
「いいねー……でも、これだけ見たら悪魔滅亡事件なんて起こらないと思うんだけど」
悪魔滅亡事件っていうのは何年か前にネットで話題になったやつだ。
その名の通りゲーム内で悪魔が滅亡。
つまり悪魔のプレイヤーが居なくなってしまったらしい。
別にこの世から悪魔でプレイしていたプレイヤーが物理的に消えたとかのラノベみたいな展開ではなくて、理由はあんまり覚えてないけど何故か誰も悪魔でゲームをプレイしなくなったとか。
「なんだっけ? 悪魔が不遇だとかいう理由だったかなー?」
でも、2つしかない種族の片方を誰もプレイしなくなるって相当だよね。
「まぁ調べていれば理由も分かるか」
次は年表ってのを見てみようか。
このゲーム、今までのことが年表として公式サイトに載ってるんだって。
珍しいね。
早速クリックして――
「うわぁ……これはキツイ」
表示された画面には、とてつもない長さの年表が。
これを全部読んでいたらそれだけで今日一日が終わってしまう。
流石にそれは嫌なので、隣にあった主要な出来事だけの年表に切り替える。
「うん。ちょっと長いけど、これなら読めそう」
上から順番に読んでいこう。
まずは……。
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旧暦
1000年 プレイヤーがビレアに現れる。
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「旧暦ってことは、今は暦が変わっているのかな?」
旧暦1000年がゲーム開始っぽいね。
ビレアっていうのは多分ゲームの世界の名前だと思う。
じゃあ次。
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1009年 第一次天魔大戦が勃発。
権天使の【セミラミス】が悪魔側のトップである下級悪魔の【フランシア】を討ち取り、天使側の勝利で終戦。
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「え? いきなり天使と悪魔の戦争が起きたの?」
訳が分からない。
それとゲーム開始から9年経ってるけど、リアルだとどの位なんだろう?
それに権天使とか下級悪魔も分からない。
多分、天使と悪魔の種族だと思うけど。
「これは天魔オンラインの攻略wikiと一緒に見たほうがいいね」
ブラウザを新しく開いて天魔オンラインの攻略wikiを検索して開く。
「来訪カウンターは2かー」
まぁ今時PCのMMOなんて流行らないし仕方がない。
それよりも今は情報だ。
「ふーん。なるほどねー」
攻略wikiを見て色々分かった。
どうやらリアルの1ヶ月がゲーム内の約1年なようだ。
つまりゲーム開始から約9ヶ月で天魔大戦が起こったことになる。
「ゲーム開始してすぐ戦争って訳じゃあないんだね」
次に権天使と下級悪魔について。
これはやっぱり天使と悪魔の種族のようだ。
攻略wikiの種族ページに書いてある。
しかも、このページには悪魔の不遇っぷりがまとめられて書いてあった。
まずスタートからして天使と悪魔は大きく違うようだ。
天使は人間から好かれてる。
一方悪魔は人間からとても嫌われていて、悪魔だとバレたらすぐに争いになるとか。
その所為で悪魔はNPCと取引すら出来ないらしい。
「酷い」
悪魔が人間に嫌われている理由は魂を求めて人間を殺すからだそうだ。
しかし、レベルを上げるのには人間やモンスターを倒して、その魂を吸収しなければいけない。
逆に天使は人間を救うだけでレベルが上がり、人間好かれる。
「これは酷い」
そして更に酷いのは初期種族の違い。
天使は下級天使という種族から開始する。
悪魔は小悪魔という種族だ。
ちなみに小悪魔が一段階進化すると下級悪魔となる。
そう。
名前から分かるように天使の初期種族の下級天使と悪魔の下級悪魔は同格である。
つまり悪魔は天使の初期種族よりも一段階下から始めなくてはならない。
「めちゃくちゃ酷い」
悪魔不遇まとめはまだ終わらない。
次は進化種族だ。
ここで天使と悪魔の種族進化チャートが表示される。
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【天使】
下級天使→天使→守護天使→大天使→権天使→
熾天使
→能天使→力天使→主天使→智天使
座天使
【悪魔】
小悪魔→下級悪魔→悪魔→上級悪魔→大悪魔→
→???
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見比べたら一発で分かるが、天使の進化種族が悪魔と比べてかなり多い。
そのお陰で天使は悪魔よりも短期間で進化してお手軽にパワーアップ出来る。
逆に悪魔は一段階進化するまで時間がかかる。
あと悪魔の進化先が???なのは大悪魔以上に進化出来たプレイヤーが居なかったからだ。
天使は最高位まで判明しているのに……。
「悲しいなぁ」
こんな不遇の悪魔だが、一応天使よりも優れた部分がある。
1つ目は一回のレベルアップで上がるステータスの数値が天使よりも高いこと。
2つ目は一段階の進化が天使よりも強力なこと。
下級天使と下級悪魔は同格だが、天使と悪魔では悪魔の方が強い。
3つ目は天使よりも最終的に個としてかなり強くなれること。
これは天魔オンラインのサービス開始前にあった運営ディレクターへの雑誌のインタビューで判明した。
インタビューで運営ディレクターは最高位の天使より最高位の悪魔の方が圧倒的に強力だ、と述べていたらしい。
「悪魔にはロマンがあった訳だねー。でもまぁこれだけデメリットがあれば天使の方が多くなるだろうし、悪魔は減っていくかー」
段々と悪魔の数が減っていって居なくなっちゃったのかな?
「とりあえず年表に戻ろうか」
あとの種族詳細とかは簡単に流し読みして年表に戻る。
第一次天魔大戦のことだ。
天魔大戦っていうのはその名の通り天使と悪魔の戦争で、一定数の天使と悪魔が戦争に了承することで発生するシステムなんだって。
天魔大戦が発生すると、天使と悪魔の中からそれぞれシステムに一番強いと判断されたプレイヤーが代表に選ばれる。
代表が殺されると負け。
その天魔大戦中に死んだプレイヤーは戦争には参加出来ないようだよ。
それで戦争が起きたキッカケは天使のトッププレイヤーだったセミラミスと悪魔のトッププレイヤーだったフランシアがぶつかり合ったことらしい。
そうして2人を中心にした天魔大戦が起きた。
でも、当時権天使だったセミラミスと下級悪魔だったフランシアでは力の差があり過ぎて、すぐに天使側の勝利で終わったようだ。
「そりゃそうだよねー。種族が違い過ぎるし」
じゃあ次。
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1010年 初めて能天使に進化したプレイヤーが現れる。
1014年 初めて悪魔に進化したプレイヤーが現れる。
1015年 初めて力天使に進化したプレイヤーが現れる。
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1010年から1015年までは種族進化だ。
多分、力天使はセミラミスで悪魔はフランシアだろうね。
ちなみに能天使からは中位天使となるらしい。
とんでもない速さの進化だ。
次ー。
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1016年 闘技大会で力天使の【セミラミス】が優勝。
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闘技大会っていうのは運営の公式イベントで、特別サーバーで天使悪魔混合で行われたようだ。
準優勝はフランシア。
3位は能天使のプレイヤー。
フランシアが準優勝ってことは3位の能天使に勝ったってことだよね。
この人、キャラクターも強かったんだろうけど、とんでもなくPSが高かったんじゃないかなー。
だって中位天使の能天使に悪魔では普通勝てないでしょ。
この人なら悪魔の最高位種族にいけそうだと思うんだけど。
まぁいいや。
次ー。
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1025年 初めて主天使に進化したプレイヤーが現れる。
1031年 初めて上級悪魔に進化したプレイヤーが現れる。
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また種族進化。
天使はとうとう中位天使最上の主天使に進化したようだ。
悪魔は上級悪魔。
どうせセミラミスとフランシアでしょー。
はい次。
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1032年 第二次天魔大戦が勃発。
1035年 第二次天魔大戦は主天使の【セミラミス】が悪魔側のトップである上級悪魔の【フランシア】を討ち取り、天使側の勝利で終戦。
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「お? また天魔大戦か」
今回の天魔大戦は起きたキッカケが不明らしい。
周りはとりあえず戦争が起きたから戦ったのかな?
今度はすぐには終わらずに3年くらい戦っていたようだね。
「まぁ結局悪魔が負けちゃってるけど」
次ー。
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1035年 初めて熾天使に進化したプレイヤーが現れる。
1036年 初めて座天使に進化したプレイヤーが現れる。
1037年 初めて智天使に進化したプレイヤーが現れる。
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天魔大戦が終わってすぐに天使が進化したみたい。
しかも、熾天使、座天使、智天使っていうのは、最高位天使で天使の最上位種族。
3つの最高位天使の簡単な説明を読む。
熾天使
3対6枚の翼を持つ姿の最高位の天使。
武器も魔法も扱える万能型種族。
智天使
3対6枚の翼を持つ獣の特徴がある姿の最高位の天使。
天使の中で一番賢く、魔法での遠距離戦が得意な魔法型種族。
座天使
3対6枚の翼を持つ額に第三の目がある姿の最高位の天使。
天使の中で一番力があり、近接戦も武器での遠距離戦も出来る力型種族。
「天使の到達点だね」
俺の予想だけど多分、天使側は第二次天魔大戦をどうやってか利用して進化を早めたんじゃないかなー。
完全な予想だけど悪魔にわざと人間を襲わせて、そのピンチを救ったりね。
もしかしたら第二次天魔大戦は天使側の策略かもしれない。
「なんてね」
俺には分からない。
次いこ。
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1038年 天使プレイヤーと人間のNPCたちによる悪魔狩りが激しくなる。
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「悪魔狩り?」
どうやら第二次天魔大戦が起きた1032年から悪魔の活動が激しくなったのを問題視した天使側が人間と協力して悪魔を狩り始めたらしい。
「最高位天使が揃った途端に悪魔狩り。天使が悪魔を殺しても経験値を貰えないのに……おかしいなー」
そんなに悪魔を滅ぼしたかったのかな?
とりあえず次。
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1040年 初めて大悪魔に進化したプレイヤーが現れる。
1041年 第三次天魔大戦が勃発。
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とうとう悪魔の確認された中で一番上位の種族が誕生。
そして翌年に第三次天魔大戦が発生。
戦争のキッカケは、天使たちの悪魔狩りによって心を折られた悪魔たちが次々とゲームを辞めていってしまうのを我慢出来なくなった大悪魔のフランシアが悪魔の存亡を賭けて天使たちに挑んだらしい。
「なんかここだけ読むと完全に悪魔側が正義になってるよねー」
当時を知らないからどうだか分からないけど。
そして次。
=================================
1080年 第三次天魔大戦は熾天使の【セミラミス】が悪魔側のトップである大悪魔の【フランシア】を討ち取り、天使側の勝利で終戦。
=================================
「分かっていたけど、結局悪魔側は負けちゃったんだね」
でも、39年も悪魔たちは天使たちと戦っていた、戦えていたんだ。
凄いね。
なんでも、戦争開始時に圧倒的に有利だと思われていた天使側が油断していたところにフランシアが奇襲を仕掛けてセミラミス以外の2人の最高位天使を殺すことに成功したらしい。
「いくら油断していたとはいえ……やっぱりフランシアっていう人はとんでもないね」
それで次。
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1081年 悪魔のプレイヤー数が0になる。
熾天使の【セミラミス】が世界統一宣言。
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第三次天魔大戦に敗れたことによって、とうとうフランシアがゲームを辞めてしまう。
フランシアというリーダーを失った悪魔たちは統率が取れなくなって次々とゲームを辞めていき、やがて悪魔は滅亡してしまった……という訳か。
「これが悪魔滅亡事件の真相かー」
一応ちょくちょく悪魔でゲームを始めるプレイヤーは居るそうだけど、1ヶ月持たないとか。
まぁもう天使には勝てないからね。
後のインタビューで運営ディレクターは以下のように語っていたらしい。
『天使の数が悪魔よりも多くなるのは予想していた』
『デメリットが多い代わりに悪魔はとても強力になる筈だった』
『まさかここまで悪魔が追い詰められるとは思わなかった』
『フランシアのような悪魔のプレイヤーがあと1人でも居たら結果は変わっていただろう』
確かにフランシアレベルの悪魔プレイヤーがもう1人居たら変わってたかもね。
それか天使側にセミラミスが居なければ良い感じに拮抗してたかも。
「それで天使側のリーダーであるセミラミスが世界を統一かぁ」
これを狙ってたのかな?
これで暦が聖天暦っていう暦に変わって……。
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聖天暦100年 天魔オンラインのサービス終了。
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特に問題も起きず、数多くのイベントがあり、約100年が経って現在。
今日がサービス終了という訳だね。
「ふぅー」
これで年表は終わり。
ちょっと疲れたから画面から目を離して身体を伸ばす。
「あー」
公式サイトと攻略wikiを見ている間に俺はすっかり天魔オンラインをプレイして遊ぶ気になっていた。
たった一日しかプレイ出来ないけれど、俺は全力で遊びたいなー。
「クライアントのダウンロードも終わってるし、インストールしよっか」
インストーラー起動ー。
容量はアップデータも合わせて約54GB。
それなりの容量かなー。
インストール画面には天魔オンラインのストーリーが表示されている。
「まぁ年表を読んだし、これは読まなくてもいいでしょ」
それよりも気になるのは天魔オンラインの課金要素だ。
どうやら天魔オンラインはサービス終了まで課金が出来るっぽい。
といっても課金イベントやキャンペーンなどは、ほとんど終了している。
なので、現在課金出来るのはキャラクターメイキングに使用出来る追加パーツだけだ。
「とりあえず見てみよー」
課金ページをクリックして移動。
すると、画面にずらーっとキャラメイクに使える追加パーツが表示される。
「うわー多いなぁ」
頭部パーツだけでも、髪型や顔の輪郭に目の形それに各種カラー。
他にもいくつもの追加パーツの項目がある。
「これならキャラクターが被ることはなさそうだね」
でも、俺ってキャラメイクあんまり得意じゃないんだよね。
大丈夫かなぁ。
「あ、終わった」
課金ページの追加パーツを眺めていたらインストールが終了した。
インストーラーが終了してランチャーが起動する。
どうやらアップデータのダウンロードも終了していたみたいで、すぐにゲームを起動出来るっぽい。
「じゃあ、早速ゲーム開始ー」
ゲーム起動ボタンをクリックするとランチャーが消えて全画面表示でゲームが始まった。
そして表示されるログイン画面。
「あ……ID登録忘れてた」
久し振りにPCのオンラインゲームなんてやるからID登録するのをすっかり忘れていた。
今時のスマホゲーなんて登録なしでプレイ出来るからね。
幸いなことに、このログイン画面からもID登録出来るみたいだから戻る必要はない。
新規登録から普段使っているメールアドレスとパスワード、それと誕生日とかを入力するとすぐにID登録が完了した。
「よーし、ログインだー」
IDであるメールアドレスとパスワードを入力してログインする。
キャラクターの新規作成のみが表示された。
もちろん、それをクリック。
すると、画面に2つの選択肢が表示される。
右が青白い画面で天使。
左が赤黒い画面で悪魔。
いきなり天使か悪魔かの種族を選択するようだ。
「うーん。やるならやっぱり悪魔かなー」
天使ばっかりで悪魔なんて居ないだろうし、今日しかプレイ出来ないからPKはされないと思うしね。
「それに俺って悪魔の方が好きなんだよねー」
という訳で悪魔を選択。
そうすると下級悪魔の文字が。
サービス終了記念キャンペーンで初期種族の小悪魔じゃなくて下級悪魔から開始なんだね。
そこから画面が切り替わり、本格的なキャラメイク画面になる。
真ん中に下着姿のキャラクターが表示されて、両隣に各種パーツが選択出来るやつが表示されていた。
「キャラメイクかー」
まずは性別の選択。
男性か女性か。
普段、ゲームの性別は気分で決めている。
人によっては普段から選んでいる性別があるんだろうけど、俺は特に決めている性別はないんだよね。
「今回は女性キャラの気分」
そういう訳で今回は女性でキャラメイク開始。
♢♢♢
数分間、キャラメイクして女の子を作ってみた。
「うん。ショボイ」
デフォルトで選択出来るパーツで頑張ってキャラメイクしてみたけど、モブっぽい女の子しか出来ない。
しかも、下級悪魔という種族に制限があるっぽい。
その所為で大人っぽい女性は作れず、少女しか作れない。
「しかも、胸はなだらか……いや、つるぺただ」
こんなところにも悪魔の不遇っぷりが発揮されているとは。
もしかして小悪魔のままだったら幼児しか作成出来なかったりして……。
「まぁ俺はつるぺたでもいいけどね」
別にセクシーなキャラクターを作りたい訳でもないし、可愛ければいいや。
「そう。どうせならめちゃくちゃ可愛い子を作りたい」
という訳で課金決定。
追加パーツは可愛い子を作るには必須だねー。
「がんばろー」
♢♢♢
課金の追加パーツでキャラメイクを始めて約2時間。
「やっと出来たー」
苦手なキャラメイクに悪戦苦闘しつつもキャラクターは完成した。
肩まで伸びた赤いメッシュの入った黒髪。
透き通るような白い肌。
金色の瞳。
人形のように整った顔立ち。
そして種族特性で強制的に追加された背中の1対2枚の小さな翼。
側頭部から生える2本の小さな角。
瞳の本来だったら白目の部分が全部赤く染まっている。
「うん、可愛い。自分でもよく出来たなー」
つるぺたで12歳くらいにしか見えないけど。
ロリコンじゃないんだけどなぁ。
それに人形のような美しさと種族特性で追加されたパーツが相まって人間には見えない。
「可愛いんだけど、これじゃ人間に怖がられてもしょうがないね」
まぁ可愛いければオッケー。
俺は好きだし。
ちなみに追加パーツすべてで、お値段28,000円なり。
一番高かったのは全身のお肌のパーツかな。
このパーツのお陰で美しく可愛くなったと思う。
「流石は10,000円のパーツだよ」
今日しかプレイ出来ないサービスの終了するゲームに、お金を使うのは普通は馬鹿らしいんだろうね。
でも、俺は妥協したくない。
何時だって遊ぶなら全力だ。
「それにお金には困ってないしねー」
という訳で早速このキャラクターでゲームを遊ぼう。
俺は決定をクリックする。
すると『最後に名前を付けてください』と表示された。
「名前かー。特に決めてる名前ないんだよねー」
困ったなぁ。
しかも、家名も付けなくちゃいけないらしい。
「そうだなー。じゃあ【ルシドナ・サタゴール】で」
めちゃくちゃ適当だけど、一応有名な悪魔とかの存在から名前を取った。
ルシドナはルシファーとエキドナ。
サタゴールはサタンとベルフェゴール。
何故このチョイスかというと、サタンとルシファーは元天使で悪魔の王様的な存在でカッコイイから。
ベルフェゴールは魔神かなんかで、神みたいに強くなりたいなーとか思って。
エキドナは元女神の怪物で伝説の母。
取った理由は前に遊んでいたゲームに出てきたっていうだけ。
中学生みたいな名付けかただけど、俺のセンスではこれが限界。
「はい決定ー」
決定ボタンをクリックすると『本当にこれで良いですか?』との文字。
「オッケー」
『はい』をクリックする。
『ゲームを開始します』と表示されてロードが始まった。
「やっと遊べる。楽しみだなー」
ワクワクして待っていると画面が白く輝きだす。
「なんか光りすぎじゃない?」
画面の光りが強くなっていき――
「なにこれー」
俺は画面の光りに飲み込まれた。