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シード オブ ランダム ~決め手の異世界チートは賽子で~  作者: 明生 勇里
第1章 サイコロ振って異世界生活
8/17

第8話 奴隷と仲間

8話目投稿です。ようやく主人公ロアにもパーティメンバーが! 今は、毎日19時更新予定です。

 昨晩は、布団への侵入者が居なかったから久しぶりに熟睡できた。少し寂しい気もしたが独身生活35年の俺には、ここ数日のミリアさんの侵入こそイレギュラーだった。仕事休みに布団にくるまってぬくぬくするのもサラリーマン生活では隙だったが、今いる異世界では、冒険の方が楽しみだ。今日も元気にクエストをこなしていこう。


 「おはようございます。カレンさん、昨日はお付き合いありがとうございました。今日もお勧めのクエストありますか?」

 「ロアさん、おはようございます。こちらこそ昨日は、ありがとうございました。昨晩は、よく眠れましたか?人肌が恋しかったですか?」

 「えっ、は、はい。昨晩は熟睡できました。人肌は、恋しかったようなそうでもないような感じでした。ははは、カレンさんでも冗談言うんですね」

 「あら、ごめんなさい。ミリアから話を聞いていたから、少し揶揄かってしまいました。ポイズンマッシュの毒袋程お勧めではありまんが、今ご紹介できるのは報酬の高い【大蛇の銀鱗】を彫金ギルドへ納品するクエストと報酬は低いですが簡単な【笑顔兎の肉】を酒場へ納品するクエストがありますね。」

 「ミリアさん、何言ったんだ…… あ、その2つを詳しくお願いします」


 あの硬い鱗と毒牙を持つシルバースネークが【大蛇の銀鱗】、まだ未接触のスマイルラビットが【笑顔兎の肉】を魔魂石からコンバートドロップする魔物だ。【大蛇の銀鱗】1枚で銀貨5枚のクエスト報酬、【笑顔兎の肉】1個は銅貨2枚がクエスト報酬だ。


 「では、登録をお願いします。今日は、沢山持ってきますから!」

 「はい、いってらっしゃい!楽しみにしてますね」


 ギルドのクエストは、達成済みのクエスト件数で、一度に受注できる件数が決まるらしい。ブロンズアント討伐とポイズンマッシュの毒袋を達成したので、同時に2つまで今の俺は受注できるのだとか。



 さて、朝食をお腹に入れて蛇と兎退治頑張りますか。早朝なのにギルド内の酒場は冒険者で賑わっている。近くに空いているテーブルが見当たらない。お、テーブルの隅に座っている小柄な亜人は……


 「やぁ、ティト!おはよう!今日は一人?隣、失礼するよ」

 「あ、ロアさん、おはようございます。ウードさん達は、試練の塔。戻ってくるまで、ここに居ろ。言われてます。」

 「戻ってくるまでって。攻略には、ひと月以上かかることもあるって話だけど?」


 緊張なのか警戒なのか、ティトはたどたどしく返事をした。ウード達は、ティトに銅貨を1枚だけ渡して試練の塔へ向かったらしい。奴隷はギルドで単身クエストを受注することができない。主人の許可なく働くこともできない。わずか銅貨1枚=100円でひと月過ごせとは、酷いご主人様だ。ティトは、ここでずっと座って彼らの帰りを待つしかないと力なく話してくれた。


 「じゃあ、今日は俺の手伝いをしてくれないかな?」

 「え、でもボク弱くて何もできない。」

 「昨日、手伝ってくれて、とっても助かったんだ。やることが無いなら手伝ってくれないかな?」

 「うーん、荷物持ち位なら…… 今、武器も持ってないから……」

 「オッケー!そうと決まれば、朝食を食べようか。もちろん御馳走するよ」

 「え、朝ごはんを?あ、ありがとう!」


 ティトは、昨日のふかし芋から何も食べさせてもらえず腹ペコだった。俺にとっては味気ない朝食もティトにとっては御馳走だったようで3度もおかわりをした。お腹が満たされたら、先輩冒険者に相談だ。


 ティトを連れてギルドから徒歩数分のイースさんの店までやって来た。年季の入った重い鉄扉を開けるといつも通りリンリーンとドアベルが鳴り、店全体に響き渡った。


 「いらっしゃいませ。お、ロア君、今日は1人じゃないんだね」

 「おはようございます。イースさん、僕の初パーティメンバー、ティトです」

 「えっ、パーティメンバー?う、うんと名前はティト。よろしくお願いします」

 「おぉ、ロア君にパーティメンバーか、良かったじゃないか。私は、店主のイースだ。ティトさん、よろしくね」


 挨拶を終えると早速、先輩冒険者のイース店長に、シルバースネーク退治のコツやティトの装備など色々と相談した。流石、商人で物知りなイースさんは、的確なアドバイスとアイテムを紹介してくれた。


 「おー、似合ってるじゃないか。品揃え豊富なイース商会だから、サイズもぴったりだ」

 「ティト、似合ってるよ。俊敏に動き敵を蹴散らすシーフって感じだ」

 「え、荷物持ちだと思ってたけど、装備いいの?ボク、お金ない」


 襤褸を着ていたティトに、動きやすい皮鎧を中心とした装備を買ってあげた。ウード達の扱いが酷く、ティトは水浴びも碌にさせてもらえず服だけでなく身体中が汚れていた。イースさんに水場を借りて綺麗にするとガビガビだった耳や尻尾はモコモコフワフワになっていた。


 ティトは、コボルト族の亜人で、犬耳とモコモコフワフワな尻尾以外は、幼く可愛いらしさが残る少年の見た目だ。年齢は15歳で、ひと月前に成人の儀式を受けにジャニューの街へやってきた。シーフの職業(クラス)を得て一人前を目指そうとクエストを受け魔物を狩っていた所、ウード達に出会い騙される形で奴隷にされてしまったらしい。


 「綺麗になったから、余計に首輪と枷が気になりますね。イースさん、どうにかして外せませんか?」

 「難しいな。隷属の首輪と枷の開錠は、主人が解放を宣言しないとできない。神聖光魔法【魔法契約破棄(ディスペル)】が使えれば破壊も可能だが、それは難しいだろうな。なにせ……」

 「(シード):ランダム!」


 話の途中だったが、物は試しと(シード)を使ってみた。おかしい。いつも目の前に現れる3つの賽子(サイコロ)が出てこない。今日は、不調で(シード)使えない日なのか。考えを巡らせていると左手に硬い感触があることに気付く。掌に3つの賽子(サイコロ)が出現していた。


 「イースさん、カウンター借りますね」

 「ん、構わないが、(シード)使ったようだけど、ロア君どうしたんだい」


コロコロ……


 実体化した賽子(サイコロ)がカウンターの上を転がり、1つ、2つ、3つと目が決まる。杖、L100、T1が出た。3つの賽子(サイコロ)が赤く点滅している。俺の視界に、【発動】と【再投】の文字が浮かんでいる。【発動】を選択するように意思を込めると(シード)能力が発動した。


 「魔法契約破棄(ディスペル)!」

 「えっ!!!」


 ティトの首輪と手枷、足枷を眩い光が包み込み、一瞬、店内が真っ白に染まる。あまりの眩しさに目を覆う。目を細めながら、ティトの姿を見ると首輪と枷の黒い跡だけが残っていた。


 「なんか、使えてたみたいです。ははは」

 「ええええええぇ、なにせLv100の神聖光魔法だからと言おうとしたんだが、ロア君の(シード)は凄いね」

 「これで、ティトは奴隷から解放ですか?」

 「あぁ、隷属の印を失った者を再契約無く縛ることを禁ずる。創造神【アンファン】様の戒律だ」

 「創造神【アンファン】様は、取り決めが多いですね。何にしても、これで自由だ。ティト」


 一瞬で起きた出来事に呆然とするティトの頭を優しく撫でる。ティトは、次第に実感が湧いてきたのか小刻みに震えている。可愛いらしい少年の瞳には、大粒の涙が浮かび上がり、頬を伝って流れて床に染みをつくっていく。


 「あ、ありがとぉ。ろあざん、うぅ、うっぐ」

 「大丈夫だよ。これからは、自分がしたいことをしていいんだ」

 「う、うん」


 暫くして泣き止むと、晴れやかな表情で俺に微笑みかけてきた。流した涙の分だけ、気持ちが軽くなったのだろう。ウード達と再会した時には、一悶着ありそうだ。力を付けてねじ伏せてやろう。


 「イースさん、いつもありがとうございます。またクエストの報告に来ますね」

 「あぁ、新しい仲間との冒険話聞かせておくれ。いっておいで、ティトさんもね」

 「イースおじさん、ありがとう!ボク頑張るね!」


 すっかり元気になったティトも、イースさんに別れを告げた。俺達は、イースさんの店で身も心も整った。あとは、サクサクっと魔物を狩ってガッツリ稼ぐだけだ。


 「ティト、まずは【探索】で、スマイルラビットの居場所を教えてくれ」

 「ロアさ、ロア!了解だよ。えっと、北西に数十匹の群れがいるみたい」


 ティトには、パーティなら呼び捨てだろと言って、さん付けをやめてもらった。呼び捨ての方が、仲間っぽいという自論だ。俺達は、街を出て目当ての魔物を探して森へと入った。


 やっぱりシーフのスキルは優秀だ。イースさんから買った魔導具よりも広範囲の探索をできるみたいだ。さてさて、スマイルラビットとは、どんな姿なのだろうか。胸を躍らせながらティトの後を付いて行く。


 「ロア、あれがスマイルラビット」

 「え、ニコニコスマイルじゃなくて、フラフラヘラヘラ兎じゃね?」


 ティトが指をさした方向に、カラフルな毛で覆われた1mぐらいの兎が、2足で立ち上がりフラフラと歩いている。ニコニコスマイルの表情というよりは、酒に酔ったような表情でヘラヘラしていて千鳥足のように見える。


 「スマイルラビットはポイズンマッシュが主食。だから、ニコニコしてる」

 「へぇー なんとなく、分かりました。では、作戦通りに行こうか」

 「ロア、了解。ボク頑張る。(シード)幸運一撃ラッキーエッジ!」


 (シード)を使うとティトの首筋が赤く光り輝いた。首輪で隠れていて見えなかったが、ティトの種紋(シードシール)は首筋にある。首筋の光が落ち着くと、ティトは、腰のナイフに手を掛けてスマイルラビットに投げつける。


 バチバチ! ザクッ! バチバチ! ザクッ! バチバチ! ザクッ!


 紫電を纏ったナイフが次々にスマイルラビットに突き刺さる。合計8本のナイフは、標的を痺れさせている。両手に4本づつ構えて8本全て命中させるなんてティトは器用なもんだ。ギリルさんに教えてやりたい。


 「炎纏剣(ファイアソード)!」


 俺は、今日覚えたての初級炎魔法で剣を火炎で纏って痺れているスマイルラビットを斬り付ける。肉が焼ける香ばしい匂いとポイズンマッシュの嫌な臭いがしてきた。主食の臭いが体からしてくるとは、良い趣味してるぜ。呆れながら、スマイルラビットを真っ二つにしていく。


 「雷纏短剣(サンダーエッジ)!」


 後から追ってきたティトが、接近戦用に持たせている紫電を纏ったバゼラードで残りのスマイルラビットを斬りつけていく。切れない錆び付いた短剣でポイズンマッシュと戦っていた姿とは似ても似つかない。


 ティトは、素早く動き回り残ったスマイルラビットを斬り付けながら、倒したスマイルラビットから抜け落ちた投げナイフを拾い、腰の魔導具に戻している。イース商会で本日購入した魔力充填式の鞘が複数付いた魔導ベルトだ。ベルトに付与した魔法属性が武器に一時的に備わる便利アイテムってわけだ。


 「この奥に10匹」

 「ティト、了解。今と同じ手順で倒していこう。」


 不意打ちの投げナイフで動きを封じ、斬り伏せていく作戦は見事にはまった。サクサクっとスマイルラビットを100体程倒して【笑顔兎の肉】が大量だ。


  【スマイルラビットの魔魂石】を入手した。


 コンバートドロップ

 1.【笑顔兎の肉】2個

 2.【笑顔兎の毛皮】2枚

 3.【シード:跳躍 身体強化系統】2粒


 1匹の魔魂石がアイテム袋に吸い込まれる度に、ドロップアイテムの通知がされる。1匹で2個分入手できている。あっという間に200個分集まったらしい。ティトの(シード)のおかげだろう。


 「よぉーし、ティト、お昼ごはんにしよう。笑顔兎の肉焼いてみよう」

 「ロア、了解。ボク、笑顔兎の肉大好き!」


 尻尾をブンブン振っている姿を見ると本当に好きなのだろう。しかし、毒キノコが主食の兎肉を食べて大丈夫なんだろうか。森に転がっている適当な枝を集めて薪として炎魔法で火を起こす。


 「初めてやるけど、コンバートドロップの選択って、これでいいのか?」


 魔魂石に自分の(シード)を翳すとコンバートさせるアイテムのイメージが表示される。変化させたいアイテムのイメージに触れると魔魂石は、1キロ程の肉の塊2つ分に姿を変えた。


 「おぉー すげえ!」

 「おにっくー おにっくー」


 ティトが、不思議な肉ソングを口ずさんでいる。投げナイフを借りて適当な大きさに切り分ける。ナイフに突き刺して、火に掛ける。焼き始めこそ、ポイズンマッシュの嫌な臭いがしていたが、肉汁が出て、焼き目が付いてくる頃には、香ばしい肉の香りでいっぱいになった。


 「よし、食べよう。いただきます。」

 「いっただきまっす!」


 勢いよく齧り付くと口の中に肉汁が溢れ出す。柔らかな感触で、どんどん肉汁が口の中へ広がっていく。俺は、A5ランクの牛肉を食べた時を思い出した。


 「うまい!」

 「おぃひぃー!」


 2人で、美味しさに舌鼓を打って、あっという間に切り分けた分を食べ切った。まだまだ充分な量があるので、追加をして腹いっぱい2人でニコニコしながら食べた。魔物の外見ではなく、食べた時の感想がスマイルだから、スマイルラビットなのかもしれない。


 腹がいっぱいになった後も、魔魂石を兎肉に変えて手頃なサイズに加工した。イースさんによるとシルバースネーク退治に、この肉が役立つというので狩り前の下拵えというやつだ。


 さあ、お腹がいっぱいになった所で、次はカッチカチのシルバースネーク退治と行きましょう。


次回は、シルバースネーク退治です。カチカチの蛇と兎肉、どう倒していくのでしょう。


毎日更新頑張ります。評価・感想頂けると嬉しいです。ブックマークも感激してます。初コメント頂けるように頑張ります。

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