第6話 美味しいクエスト!
6話目です。 更新時間が遅くなってしまいました。美味しい話には裏がある。
「ロア君!本当にごめんなさい!また私ったら人の布団に潜り込むなんて」
「いえ、大丈夫です。またお願いしますっ、じゃなくて、気にしないでください」
「今度会った時は、勇気を出してね」
「えっ!なっ、なんて!」
「ふふふ」
「おーい、ミリアぁ!もう行くぞぁー」
「ギリルが、呼んでるから、またね」
「あ、はい。お元気で」
ミリアさんは、衝撃発言で固まったままの俺に手を振りながら馬車に乗っていった。俺は、呆然としながら、シウバさん達に手を振って見送った。フェブレーの街までは、馬車で三日程らしい。冒険を続けていれば、また会えるだろう。それまでに強くなろう。
よし、そうと決まればクエストを受けに行こう。まだまだひよっこ冒険者の俺には、Lv上げ、冒険者等級上げ、やることは沢山ある。意気揚々とギルドへと向かった。
「カレンさん、おはようございます!お勧めのクエストありますか?」
「ロアさん、おはようございます。はい、ちょうど皆さんにお勧めしているクエストがあります。【ポイズンマッシュの毒袋】がコンバートドロップに付与された魔魂石をお願いします。」
「ポイズンマッシュがドロップするなんて、楽勝そうですね!では、受注します!」
「先着100個までの納品クエストです。1個イヤール金貨1枚が達成報酬です。それでは、登録しますね。」
「金貨1枚!はい、登録お願いします!頑張ります!」
金貨1枚というと元の世界の10万円だ。雑魚のポイズンマッシュを倒して金貨1枚とは、大盤振る舞いじゃないか。サクサク倒してお金を稼ぎまくろう。カレンさんが差し出した魔導具に種を翳してクエストの登録を済ませる。早速、毒キノコ退治と行きたい所だが1つ聞いておこう。
「カレンさん、パーティ募集中のシーフさんは居ないですか?」
「あぁ、ごめんなさい。法外な報酬にシーフさんが引っ張りだこで今はソロの方はいませんね。」
シーフの職業限定スキル【レアドロップ率アップ】を付けて毒キノコ狩りをしたかったが、人員不足では仕方ない。イースさんの店で、アイテム補充してから狩りに出かけよう。
ギルドから徒歩数分のイースさんの店までやって来た。年季の入った重い鉄扉を開けるとリンリーンとドアベルが鳴り、店全体に響き渡った。
「いらっしゃい!お、ロア君か。今日は、どうしたんだい?」
「イースさん、おはようございます。特定の魔物を探索する魔導具やドロップ率アップする武器なんてありませんか?」
「ポイズンマッシュ狩りかな?朝から駆け出し冒険者が色々訪ねてくるよ。これなんかどうかな?」
イースさんに紹介してもらったアイテムは、探索したい魔物の魔魂石を魔導具内に入れることで、レーダーに探したい魔物を映し出すという優れものだ。ドロップ率アップの武器は仕入れがないとのことで、他に光の魔法書や便利アイテムを購入し店を後にした。
「よーし、がんがんキノコ狩りするぞ!」
以前入手したポイズンマッシュの魔魂石を魔導具に入れ、起動させると円形のマップが自分を中心に表示され赤い光点がまばらに映し出された。おぉ、魔導具って便利!シーフの【探索】程ではないけれど、これなら充分に狩りができそうだ。
赤い光点に向かって、走り出しポイズンマッシュを探す。俺が、辿り着く前に光点は何度も何度も消えていく。辿り着いた先には、別のパーティがポイズンマッシュ狩りをしていた。
美味しい報酬に、皆がポイズンマッシュを乱獲していて、出現場所が分かっても着いた時には狩られている。雑魚のポイズンマッシュだから、見つければ剣を一振りで終わってしまう。
毒袋1個で金貨1枚=10万円貰えるのだからとイヤール銀貨10枚=2万円を惜しげもなく使って購入したが、魔導具の元が取れるか怪しくなってきた。
パーティを組んで四方に散らばり、後で報酬を山分けにする者達が大半で、ソロではまともに狩りもできなさそうだ。
お、赤い光が1つ俺の方に向かってくる。これは、チャンスだ。本日1匹目確実に倒そう!
「雷纏剣!」
正面から向かってくるポイズンマッシュを木に隠れて不意打ちで一刀両断する。真っ二つになったポイズンマッシュは虹色の光に包まれ魔魂石に変わってアイテム袋に吸い込まれる。
【ポイズンマッシュの魔魂石】を入手した。
コンバートドロップ
1.【カラフルなキノコ傘】
2.【シード:毒煙 特殊系統】
そう上手くはいかないか。地道にやるしかないかな。
「ちょっと!あんた!私達の獲物を横取りしないでよ!マナーが悪いわよ!」
「えっ・・・」
剣を鞘に納めていると頭上から女性の声が聞こえた。顔を上げて見ると、銀髪に黄色い瞳、真っ赤な魔法使いのローブを着た少女が杖を片手に立っていた。少し後ろにも、1人目の少女に似た銀髪、青い瞳、真っ白な神官のローブを着た少女が立っていた。
「アーシャが逃がしたのだから、横取りとは違うと思いますよ。突然、ごめんなさいね。」
「はぁ!何言ってるのアーシェ姉さん!これから魔法で焼き払う所だったのよ!それを、この剣士が横取りしたの!」
どうやらこの2人は姉妹で、俺と同じ駆け出し冒険者みたいだ。冒険者10等級の白腕輪をしている。取り逃がしたとはいえ、彼女達の獲物を横取りする形になってしまったみたいだ。
「えっと、すみません。突然目の前に現れたもので。良ければ魔魂石は差し上げますが?」
「いえ、気にしないでください。妹が失礼なことを言ってごめんなさい。」
「はぁ、何謝ってんの?けっ、どうせハズレだったから返すって言ってるだけよ。早朝から、100匹以上倒しても1個もドロップしないんだから!」
「そ、そうなんですか。えっと、横取りの件は今後気を付けますね。お互い、頑張りましょう!」
100匹倒してドロップ無しとか、金貨1枚出すだけはあるな。それとも、シーフが居ればサクサク落とすんだろうか。
「何が、お互い頑張りましょうよ!ふん、二度と私達の獲物を横取りしないでよ!」
妹のアーシャと呼ばれた魔法使いは、そう吐き捨てるとご機嫌斜めな顔で去って行った。姉のアーシェさんは、申し訳なさそうに軽くお辞儀をして去って行った。
これは、きっとフラグなんだろうな、だって2人共めちゃくちゃ美少女だった。
「横取りを気を付けながら狩りをするか。駆け出しが、あまり行かない廃鉱の方へいってみるか。」
街近郊の森がポイズンマッシュ大発生ポイントであるが、報酬目当ての乱獲が酷過ぎて狩りを始めて1時間で、さっきの1匹だ。
危険を伴うかもしれないが、昨日ミリアさん達と行った廃鉱近くの森へ狩場を移そうと思う。
おぉ、いるじゃん、いるじゃん。廃鉱近くの森には、予想通りポイズンマッシュが大量発生していた。森の奥までは、誰も来ていないようだ。100匹でも200匹でも狩り尽くしていくぜ。
「種:ランダム! 雷纏剣!」
今日、1回目の種は、身体強化系でレーダーに映ってくるポイズンマッシュ達をサクサクと乱獲していく。あっという間に100匹狩った。
種と雷纏剣の使い過ぎで筋肉痛と魔力切れだ。体力回復ポーションとマジックポーションを一気飲みする。
不味い。子どもの時に風邪薬用で貰ったオレンジシロップに似た味がする。錬金術ギルドでポーション作りを学んで美味しい味のポーションを自作しようと心に誓い狩りを再開した。
2回目、3回目の種も今日は身体強化系で、驚くくらいのスピードで狩りは進んだ。既に、500匹近くキノコ狩りをした。
それにしても、【ポイズンマッシュの毒袋】全然ドロップしません。カレンさん、美味しいクエストじゃないじゃないですか!
昼から始めたポイズンマッシュ狩りも気付けば夕日が眩しい時間帯になっている。もう、今日はドロップしないんじゃないか?
諦めて、今日の所は帰るか、もう少し頑張ってみるか悩み所だ。
ドゴォォォォン!突然、街に近い森の方向で轟音が鳴り響いた。鳥達が逃げるようにして空へ飛び立った。空高く煙も舞い上がっている。
大型の魔物でも現れたんだろうか。俺が、初日に召喚したドラゴンだろうか?うーん、今日は、もう帰ろうかな。来た道を戻りながら街へと向かう。
日が暮れてきたことで、他のパーティも狩りを終えて街へ帰っているようだ。狩り始めに探索した森まで戻ってきたが人の姿は殆どない。
近くに、綺麗な鎧を身に着けた戦士風の男達3人と汚れた襤褸を着ている獣耳の小柄な少年のパーティがいるくらいだ。
「よぉし、ティト!やれ!」
「は、はい!」
口の周りに泥棒髭を生やした大男が、亜人の少年に声を掛ける。少年の手には、錆び付いた短剣が握られポイズンマッシュに一振りする。
あの柔らかいポイズンマッシュを一撃では仕留められず、ポイズンマッシュの反撃を受けながら何度も短剣で刺している。
10数回、少年の短剣が刺さり、ようやくポイズンマッシュが息絶え虹色の光に包まれ魔魂石と変わった。少年の懐ではなく、大男のアイテム袋に魔魂石が吸い込まれていった。
ドロップを確認するとニヤっと気味の悪い笑みを浮かべて小太りの戦士とひょろ長の戦士2人に頷いた。
「うっし、これで50個目だ。帰るとすっかな。アグー、ビリー、リターンストーンを使え。」
「へい、ウードさん。」
はあ?50個!?なんだそれ。世の中の不公平さを恨みながら男達の様子を覗う。2人は声を揃えて泥棒髭の大男ウードに返事をした。
小太りがアグー、ひょろ長がビリーというらしい。亜人の少年ティトを含めた4人パーティのようだ。
4人が青い光包まれ転移する瞬間、亜人の少年は泥棒髭の大男ウードに青い光の外へ蹴飛ばされ。
「ティト、お前は歩いてギルドへ戻ってこい。手続きが終わるまでに戻ってこれなきゃ今晩は飯抜きだ!はっはっはっ!」
地面に蹴飛ばされ亜人の少年を残し、男達は青い光に包まれその場から消えた。俺は、無意識で少年の前まで駆け寄り。覚えたての光魔法で治療をした。
「大丈夫かい?」
「あ、ありがとうございます。で、でも、ボ、ボク、何もお礼できませんよ・・・」
「えっと、ポイズンマッシュを1匹だけ倒すの手伝ってくれない?」
動揺した様子の少年は、小さく頷いた。彼には鉄の首輪が嵌められ、手足には鉄枷が付けられている。彼は、奴らの奴隷なのかもしれないが酷い扱いだ。
種族:亜人
名前:ティト
Lv:10
クラス:シーフ
ステータス
HP:205/780
MP:50/108
攻撃力:30
防御力:40
素早さ:150
魔力:60
運:50
種:熟練度2 幸運一撃
スキル:探索 ドロップ率アップ
ティトに触れたことで、彼のステータスが表示された。自分よりもLvが低いと詳細なステータスまで見えるようだ。
昨日のブロンズアントとの戦いでレベルアップした俺は今Lv15だ。俺は、ティトの種が気になったので1匹だけポイズンマッシュを倒す手伝いをお願いした。
「よし、じゃあ、ティト、魔法で吹き飛ばしたポイズンマッシュに攻撃を当ててくれるかい?」
「ロアさん、は、はい!」
風の球で吹っ飛ばしたポイズンマッシュに、ティトの弱々しい一撃が当たる。やはり止めを刺せない程度の威力だ。
「雷纏剣!」
ティトの一撃が当たったのを確認して、雷纏剣で止めを刺す。まっぷたつになったポイズンマッシュは、虹色の光に包まれ魔魂石と変わりアイテム袋に吸い込まれる。
【ポイズンマッシュの魔魂石】を入手した。
コンバートドロップ
1.【ポイズンマッシュの毒袋】
2.【シード:毒煙 特殊系統】
キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!ティトの種のおかげだろう。あっけなくポイズンマッシュの毒袋をゲットできた。
幸運一撃とか、とんでもない種じゃないか。
「ティト!ありがとう!おかげで目当ての物やっとゲットできたよ。さて、帰ろうか?」
「いえ、これで回復魔法の代金は大丈夫ですか・・・?」
「えっと、うん。回復魔法の代金はいらないよ。じゃあ、ギルドまで一緒に帰ろうか」
「えっ!それは・・・」
ティトは、俺が手に持っていた青い結晶を見て目を開いた。俺はティトにお礼を告げて、彼の夕飯が無くなっては可哀想なのでリターンストーンを使用した。
便利アイテムは、ちょっと高くても使っていかないとね。ちなみに、リターンストーンは1個イヤール銀貨5枚=1万円だ。
俺達を青い光が包み込み、一瞬でギルドカウンターまで転移した。
さあ、カレンさんにアイテムを納品して報酬を受け取ろう。転移した俺達の前には、ウード達3人が手続きをしている最中だった。
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