第4話 ブロンズアント討伐!
4話目です。 ブロンズアント討伐! 少しクエストらしくなってきました。
ブロンズアント討伐の為、廃鉱入口へ到着した俺達だったが、入口には門番蟻が2匹いて容易には侵入させてもらえなさそうだ。どうやって突入しようか。
「ロア、雷纏剣ってのを俺の短剣にやってくれねえか?」
「これにですか?」
ギリルさんから差し出された2本の短剣に雷を纏わせる。ギリルさんは、2本の短剣を受け取ると門番蟻へ向けて投げつけた。この人、ノーコンなんじゃ?
2本の雷纏短剣は、バチバチと音をたてながら左右に別れて飛んでいった。
ザクッ! バチバチッ! カランカラン・・・
衝撃音と共に、門番蟻の頭が2つ切り離され地面に転がった。短剣は、バチバチと紫色の光を残したまま岩肌に刺さっている。ブロンズアントの死骸は虹色の光に包まれ魔魂石となりギリルさんのアイテム袋へ吸い込まれていった。
「え、種使ってました?」
「あん?言わなかったか?俺の種は、回数制限じゃなくて時間制限な。」
「ギリルの種は、一発必中なんて名前だけど1回使うと2時間投げ放題だ。」
「種能力が切れたら、4時間ノーコンシーフに逆戻りするけどね。」
シウバさんとミリアさんが解説してくれたお陰で疑問が解決した。短剣を回収し、廃鉱の中へと入っていく。放棄された鉱山だけあって灯りも何もなく真っ暗だ。
「光の球!」
3つの光球が周囲3m程を照らしている。ミリアさんが灯り代わりに光魔法を使ってくれた。光属性魔法は、傷の治療や、防御壁、灯りにも使えるとか便利魔法だ。魔法書で新たな属性の加護を1日1属性まで得ることができる。今日は、雷属性の加護を得たので、明日は光属性の加護を得ようと思う。まったく、この世界の神様は色々制限するのが好きだな。
「女王蟻の所まで、1本道で100匹ってとこだな?」
「ロアは、しばらく魔法で支援を頼む。ミリアは、いつも通りで。」
「はい!頑張ります!」
「はーい。光の鎧!」
ミリアさんの魔法により4人の全身が光に包まれた。防御力アップの魔法かな?これなら、自分の周りも明るくなって戦いやすいな。
「まずは、働き蟻が20匹位くるぞ。ロア、さっきの要領で俺の短剣にバシバシ魔法こめてくれ!」
「了解です!」
受け取った短剣に雷纏を掛けて、ギリルさんに渡していく。ギリルさんは、手にした短剣を暗闇に向けて投げていく。
バチバチ! ザク! カランカラン! バチバチ! ザク! カランカラン!
紫色の軌跡が闇を照らし何かに当たって衝撃音がする。入口で聞いた音がリズミカルに繰り返される。ギリルさん1人で全滅させる勢いじゃないか?ふざけたしゃべり方してるけど実は凄腕の冒険者なのかな。
「ギリルばかりに格好つけられては面白くない。ロア、俺の剣には強めに雷を纏わせてくれ。」
シウバさんの銀色の剣には、5回連続で雷纏を掛ける。1回の時と比べて紫色の光が増している。重ね掛けで威力アップするとは良い発見をした。
バチバチバチバチ!
剣を手渡すとシウバさんは、真っ直ぐに走り出し暗闇で紫電の斬撃が弧を描く。
ザッ! バチバチ! ザッ! バチバチ! ザッ! バチバチ!
「働き蟻20匹終わったわ。次は、兵隊蟻が20匹かな。ロア、1匹やってみっか?」
「もう20匹倒したんですか?次は、1匹くらい戦ってみたいです!」
「ミリア、1匹流すようにするからロアをフォローしてくれ。」
「了解!きつそうなら私が倒すから2人は、どんどん蟻を駆除していいわよ。」
坑道の奥からブロンズアント達が、ガシャガシャ足音を立てて上がってくる。兵隊蟻は、働き蟻の2倍の大きさみたいだ。1匹やりたいと言ったもののシルバースネークの二の舞になりそうだ。
「おらぁ!とりゃ!せいやぁ!」
流石に兵隊蟻は、短剣の一投では仕留められないみたいだ。ギリルさんは剣舞のように紫電を纏った短剣を二刀流にして斬りつける。接近戦もお手の物らしい。
「はぁ!とう!ふん!」
シウバさんは、先程と同じような動きで兵隊蟻を一刀両断にしていく。彼に大きさは関係ないようだ。戦う2人の間から1匹の兵隊蟻が俺達の方へ突進してきた。予定通り1匹流してくれたようだ。
「ロア君!頑張って!」
「はい!ミリアさん!」
兵隊蟻は、槍のような武器を構えて突進してくる。まずは、いつも通りやってみますか。風の球を兵隊蟻の足元に打ち込むと見事に頭から地面に転がった。起き上がる前に、雷纏剣をブロンズソードに掛けて首筋目掛けて一閃に両断しようと斬りかかる。
種族:蟻魔物
名前:兵隊蟻
Lv:18
職業:兵隊
種:???
スキル:???
転んだはずの兵隊蟻は、素早く起き上がり雷纏剣の一閃から逃れる。俺は、当てる気満々の斬撃を避けられて体勢を崩した。背中に衝撃が走り今度は俺が地面に転がることになった。追い打ちを掛けるようにブロンズアントの銅拳が体に打ち付けられる。これは、ヤバイかも。Lv差8で歯が立たないのか。
「種:ランダム!」
左手から赤い光が輝きだし種紋が浮かび上がる。同時に、3つの賽子が能力を決定する。これなら形勢逆転できそうだ。
ブロンズアントから打ち付けられる左右の銅拳をそれぞれ掴み引き寄せ胴体に蹴りを入れて投げ飛ばす。坑道の壁に激突するが、すぐに起き上がり槍を構えて突進してくる。
俺は、ブロンズソードを拾い上げ上段に構える。兵隊蟻の突進を直前で躱し背後から斬りかかる。雷を纏っていない斬撃がブロンズアントを両断した。
【ランダム→種: Lv補正 +Lv25 時間 30分】
賽子の目は人型、L25、T30だった。オークの時と同じような身体強化能力のようだが時間は30分ある。これなら、前線で活躍できそうだ。
「ロア君!凄いじゃん!加勢しようと思ったけど一気に強くなったみたいに形勢逆転しちゃうなんて!怪我治しておくね!光の癒し!」
「ミリアさんに格好悪い所は見せられませんから!治療ありがとうございます!2人のフォローしてきます!」
「いってらっしゃい!無理はダメよ!」
ミリアさんに首肯して、2人の下へと駆け出した。俺が到着すると紫電の光を失った武器を片手に坑道の壁に2人並んで寄り掛かっていた。中級冒険者からしたらLv20前後のブロンズアントは雑魚魔物らしい。
「お、1匹仕留められたんかい?ん、種で自力が上がってんのか?」
「はい、種使わずには倒せなかったので使っちゃいました!」
「ランダムで当たりを引いた感じか?」
ギリルさんとシウバさんに能力を説明し、2人の武器に再び紫電を纏わせる。Lv補正で雷纏も効果アップしているようで周囲が眩しいくらい紫電を纏った武器で照らされている。
「この先に広めのホールがある。魔法蟻が30匹、兵隊蟻が30匹待ち構えてるな。」
「了解。俺が正面突破で、中央で引き付ける。ギリルとロアは周りから叩け。ミリアは臨機応変に。」
「分かりました!頑張ります!」
「了解!シウバ、ロア君に格好良い所見せようと大怪我しないでね!」
坑道は、緩やかな下り阪となっている。光に照らされ少し先の様子が見える。採掘鉱石の一時保管場所として使われていたホールに、人影が蠢いている。ガシャガシャという金属音とブゥーンという羽根音が聞こえてくる。60匹に突っ込んで行くとか正気じゃない気がする。シウバさん大丈夫かな。
シウバさんは、振り向いて首肯すると駆け出して行った。
「光盾!」
シウバさんの左腕に光の大楯が現れ正面で待ち構えていた蟻達を吹っ飛ばしていった。勢いを緩めずにホール中央まで蟻を蹴散らしていく。
「光の煽動!」
シウバさんを中心に眩しい光がホール全体へ放たれる。目がチカチカする。光に誘われてブロンズアント達は一斉に中央へ向いて武器を構える。光と同時にギリルさんは、走り出しブロンズアント目掛けて短剣を投擲する。ガシャガシャっと2体のブロンズアントが崩れ落ちる音がした。俺も負けてられない蟻達向かって走り出す。
背後からブロンズアントを両断していく。1匹、2匹、3匹、4匹、5匹!シウバさんの光に気を取られている蟻達は俺の接近に全く気付かない。これなら、60匹居てもあっという間に片付きそうだ。ギリルさんは、短剣を投擲するだけでなく、接近して斬りつける二刀流を上手く使っている。既に20匹くらいは倒している。
「うおぉぉぉ! はっ! とぉ! ふん!」
蟻達に囲まれながらも一定の距離を保ちつつシウバさんがブロンズアントを紫電一閃薙ぎ倒していく。特攻して敵の注意を一手に引き受けるとかナイトって職業は格好良いな。シウバさんを囲んでいた蟻達も数を減らされ自分たちの状況を理解し始めた。槍を構える兵隊蟻と羽根をバタつかせて宙に浮く魔法蟻が俺の方に向き直った。
ギャギャギャギャ!
魔法蟻が顎をガチガチ動かして何かを叫んだ。瞬間、黄色の光がブロンズアントの両手に集まり三角錐の土塊が飛んでくる。魔法に合わせて、兵隊蟻が槍を構えて突撃してくる!
「光の壁!」
ミリアさんの魔法が俺の目の前に現れ、三角錐の土塊と槍を無効化した。危うくお腹に風穴があくところだった。油断大敵ですね。光の壁に攻撃を妨げられた蟻達が次の一手を構えるが、俺は懐に入り2匹同時に横一線に両断する。これで7匹だ。
「風の球!」
俺に狙いを定めた残りの蟻達を風で吹っ飛ばす。体勢を崩させた所に紫電の斬撃を縦横斜めにくらわしていく。8匹、10匹、13匹、15匹!
「まだまだ、いくぞ~」
調子が出て来た所で、周囲を見渡すと立っているブロンズアントの姿は1匹も無かった。あっという間に、60匹を駆除してしまったらしい。もうちょっと俺TUEEEE!やりたかったな・・・
「よっしゃ、あとは最奥のガーディアントと女王蟻だな。こりゃ楽勝だな。」
「だと良いが、廃鉱に住み着いたブロンズアントってのが、俺は気になる。」
「枯れ山になったのに気付かず巣を作ったとかじゃないですか?」
「女王蟻が、卵を産む栄養源が銅鉱だって話だけどね?」
3人にとっては気になる話でも、俺にはさっぱりだ。疑問が残るまま、俺達は坑道の最奥へと足を進めた。
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