第3話 いざ! 初クエストへ
3話目の投稿です。 初クエスト始まります!
「ロア君!本当に、ごめんなさい!朝起きたら、まさか人様の布団の中に居たなんて一生の不覚です!」
「いえ、ボ、ボクもびっくりしましたが。役得というか、いや全然大丈夫です!気にしないで下さい!」
「ミリアの魅惑ボディに包まれるなんていいなぁ。俺なんて、起きたら床に転がってて体中がバッキバッキだよ。親切なナイト様が床に寝かせてくれたんだろうよ。」
「俺は、隣の部屋からの鼾が五月蠅過ぎて熟睡できなかったぞ。深夜に寝返りでベッドから落ちたような物音もして騒がしかった。自分から床に転げ落ちてそのまま熟睡したんじゃないか?」
朝食をとりながら、昨晩の睡眠について語り合った。朝食の献立を元の世界風に例えるなら茹でたジャガイモ、スクランブルエッグ、兎の干し肉、サラダ、リンゴジュースだ。この世界の食べ物は、元の世界とは少し違いがあるようだ。
料理研究をして、元の世界のメニュー再現で一攫千金てのも面白いかもしれない。朝食の後は、イースさんの店で装備を整える予定だ。今の村人みたいな恰好から、魔法剣士っぽくなるのを想像するだけで楽しみだ。
朝食を終えるとシウバさんの案内でイースさんの店に向かった。ギリルさんとミリアさんは、用事があるらしく今は別行動だ。シウバさんに、道すがら冒険者の装備とは何たるかを聞こうと意気込んでいたが冒険者ギルドから歩き始めてすぐに店に到着してしまった。
ギルドから、こんなに近いなんて、かなりの好立地ではないだろうか。イースさんは、以前から、この街への出店を狙ってギルドに交渉していたらしい。今回、他店の閉店に伴い空きが出来たと連絡が入り念願の出店にこぎづけたということだ。
年季の入った重い鉄扉を開けるとリンリーンとドアベルが鳴り、店全体に響き渡った。
「いらっしゃいませ!おぉ、ロア君か!お勧めを用意して待ってたよ。」
「イースさん、おはようございます。今日は、よろしくお願いします。先に、店内の商品見ても良いですか?」
「勿論、いいとも!気になった物があったら遠慮無く言っておくれ。」
店内の品揃えは豊富で、例えるなら何でも屋という言葉が一番しっくりくる。武器防具だけでなく、ポーションなどのアイテムや旅の便利グッズ、魔導具、魔法書など冒険者が必要な物は何でも置いてある。
商品には全てタグが付いており、商品名と価格だけでなく説明も細かく記載されている。俺は、神様の恩恵で文字が読めるのとイースさんの手書きタグにより、特に説明が無くても、殆どの商品について直ぐに理解できた。
「イースさん、品揃えも商品タグの説明も凄いです!一通り見終わったので、お勧めの説明お願いします!」
「褒めてもらえて嬉しいよ。ここに飾っているのが、ロア君へのお勧め装備だよ。」
イースさんが、カウンター横に立っているマネキンを指さす。マネキンは、上から下まで赤銅色の防具を着ている。武器も赤銅色の剣だ。触れて確認してみると、見た目通りど定番の銅の武器防具シリーズで間違いないみたいだ。人に触れた時と同様に、眼前に文字が現れた。
『ブロンズアーマー+5』
効果:防御力アップ
特殊効果:なし
品質:S
装備可能Lv:10~
『ブロンズソード+5』
効果:攻撃力アップ
特殊効果:なし
品質:S
装備可能Lv:10~
+5で品質S、それよりも装備可能Lvってなんぞや。
「ロア君が、Lv10って聞いたから、装備可能Lv10の範囲で、品質S、+5の最上級品用意したよ。お眼鏡にかなったかな?」
「えぇ、カッコいいです!ちなみに、装備可能Lvって何ですか?無知ですみません。」
「創造神【アンファン】様が分不相応な力は世界を滅ぼすと仰って、身に着ける全ての物に装備可能Lvを付与した事から生まれたみたいだよ。」
「神様の取り決めですか!それは、抗えそうにないですね。」
肉体のLv上限と装備のLv制限とは、この世界の神様は、Lvを制限するのが好きらしい。序盤から、貯金1000万で最強装備揃えて、俺TUEEEE!の道は閉ざされたみたいだ。まさに、宝の持ち腐れってやつですね。
「俺の剣は、装備可能Lv35だ。ちょっと持ち上げてみろ。」
イースさんとの話を横で聞いていたシウバさんが、銀色に輝く剣をカウンターに置いた。
「えっ、全然持ち上がらないんですけど?こんなの振り回せないですよ!」
「不思議なことに、装備可能Lvに達すると簡単に振り回せるようになるんだけどな。」
シウバさんは、片手で楽々カウンターに置いたが、俺の力では全く持ち上がらない。装備可能Lv設定恐るべしだ。ちなみに、職業が商人だとスキルにより持ち運びする事が可能でLv32のイースさんはカウンターに置いた剣を軽く手に取ってシウバさんに返却した。
「頭の装備だけ、魔法使いのとんがり帽子みたいなのに変更できます?他は、お勧めを購入します!」
「これは、どうかな?羽根つきとんがり帽子+5だよ。」
ブロンズ装備一式では、魔法剣士感が薄かったので魔法使い風のおしゃれ帽子をお願いした。羽根つきとんがり帽子+5は、イメージに近いデザインだったので即採用しブロンズ装備と一緒に購入した。他にも旅の必需品と魔法書を購入して店を後にした。
種族:人間
名前:ロア
Lv:10
職業:魔法剣士
ステータス
HP:999
MP:999
攻撃力:100
防御力:100
素早さ:100
魔力:100
運:999
種:熟練度1 ランダム(神の三つ目が指示した能力を得る) 3/3
スキル:初級風魔法Lv10 初級雷魔法Lv10
装備
【羽根つきとんがり帽子+5】【ブロンズアーマー+5】【白腕輪】【ブロンズソード+5】
これが今のステータスと装備だ。
ギルドに戻ると別行動だった2人も用事を終えて、俺達を待っていた。これから昨夜、受注したクエストを達成する為に街の外へ冒険だ。
「ロア、聞いていなかったが君の種は、どんな能力だ?戦力を把握する為に教えてくれ。」
「シウバさん、俺の種は、使ってみないと分からないというか毎回違うんですよ。ランダムって呼ぶみたいですが、似たような種を知っていますか?」
シウバさんに聞かれ、パーティ内で隠す事でも無さそうなので素直に答えてみた。能力が毎回違う種を持つ人間は過去に存在したことがないらしく、貴重な存在だと言われた。話の流れで、授かった種によって1日に使える回数や効果時間が違う事も知れた。ステータスの種欄3/3というのが1日の回数制限を表していて俺は1日3回みたいだ。熟練度は、種の成長レベルで熟練度が上がると能力も向上するとのことだ。
俺達は、街の北西にある廃鉱へ向かっている。クエストで討伐依頼を受けた魔物が住み着いているらしい。街の周辺は森で囲まれていて魔物があちこちに生息している。駆け出し冒険者風のパーティがあちこちで魔物と戦っている。
「シウバ!前方から、ポイズンマッシュが4匹来るぞ!」
ギリルさんが、職業限定スキル【探索】で魔物の接近を告げる。
「ギリル、ミリア、各自1匹頼む。ロアも1匹倒してみろ!」
「分かりました!」
「ロア君、毒キノコなんて雑魚だから楽勝よ!頑張って!」
ポイズンマッシュは、lv1~Lv8の雑魚モンスターだ。スライムやゴブリンみたいな立ち位置らしい。昨日貰った冒険者入門書に書いてあった。
プシュープシュー
紫色の煙をカラフルな色をしたキノコ傘から吐き出しポイズンマッシュが突進してくる!
「風の球!」
俺が魔法名を唱えた瞬間、左手から緑色の光球が放たれる。ポイズンマッシュの腹に当たった風の球は、奴をそのまま近くの木に叩きつける。
「雷纏剣!」
俺は、ポイズンマッシュへ駆け出しながら覚えたての初級雷魔法で、ブロンズソードに雷属性を付与する。起き上がろうとするポイズンマッシュへ真上から紫色の光を帯びた剣で斬りつける。
バシュッ!バチバチ!!
焦げた匂いと共に真っ二つになった毒キノコが横たわった。死骸は、すぐに虹色の光に包まれ魔魂石となりアイテム袋に吸い込まれていった。アイテムの詳細が眼前に表示される。
【ポイズンマッシュの魔魂石】を入手した。
コンバートドロップ
1.【カラフルなキノコ傘】
2.【シード:毒煙 特殊系統】
魔魂石は、魔物が体内で精製した魔力結晶で魔力燃料として広く利用されている。また、コンバートドロップに変換すると選択したアイテムになる。これも冒険者入門書からの知識だ。
パチパチパチパチ、俺よりも先にポイズンマッシュを仕留めた3人から拍手を送られた。
「ロア君すごーい! 魔法もちゃんと使えてるし立派な魔法剣士様だね!」
「格下相手なので、そんなことないですよ。魔法もミリアさんが教えてくれたので。」
この世界では、魔法書を使用し加護を受けていれば属性名と具現化したいイメージを唱えることで魔法を使用することができる。イースさんの店で買った初級雷魔法書を使用しミリアさんに魔法のコツを少し教えてもらっただけで簡単に使えた。詠唱無しの魔法とは、ファンタジー世界の中でも実にイージーモードだ。
「次からポイズンマッシュは、ロアが全部担当でよろしく!」
シウバさんに、ポイズンマッシュ担当を任され、その後は複数いても1人で倒していった。単調な動きで防御力も低いポイズンマッシュは良い練習台になった。ミリアさんは、1匹倒す度に褒めてくれた。なんて優しいんだろうか。
「シウバ、この先にフォレストワスプがいやがる。直進か迂回だな。」
「ギリル、奴らは仲間を呼んで面倒だからな。迂回ルートで頼む。」
「了解!」
ギリルさんが【探索】で得た情報をパーティに伝える。シウバさんが、判断し迂回ルートに決まった。俺の視力では、どこに居るのか全く分からない。フォレストワスプは、50㎝程の毒蜂で大木に巨大な巣を作る。巣には1000匹以上が住み外敵を見つけると仲間を呼び攻撃してくる。敵を仕留めるか蜂達が全滅するまで戦い続ける恐ろしい魔物だ。これも冒険者入門の知識だ。
森の中を迂回しつつ廃鉱に向かって進んでいく。木々の隙間から山の中腹をくり抜いたような大穴が見える。この森を抜けて、山道を進めば廃鉱の入口だ。突然、先頭のギリルさんが足を止めた。前方を覗き込むと10m程先に巨大な銀色の蜷局を巻いた塊が落ちて道を塞いでいる。
「こりゃ大きな魔物のう〇こだな。邪魔で通れないからロア、風魔法で吹き飛ばしてくれ!カッカッカ!」
「え、糞の処理ですか・・・ えっと、はい!やってみます!」
「よし、行ってこーい!ガハハハ!」
大笑いしているギリルさんが気になるけれど、う〇こ処理班はこの世界の常識なのかもしれない。汚物処理は、やりたくないが先輩からの仕事では断れない。いざ、参る。巨大なう〇こ全体を風の壁で覆って吹き飛ばすイメージをする。
「風の壁!」
両手から緑色の壁が現れ、真っ直ぐに銀色の塊に向かって飛んでいく。銀色の塊は、風の壁に押しやられ吹き飛んでいく。はずだった。
「ちょっと、ギリル、あれシルバースネークでしょ!何やらしてんの!」
「やばくなったらフォローするから大丈夫だろ!う〇こだって、軽い冗談だったのに、ロアの野郎がアヒャヒャヒャ。腹がいてえ。」
「ギリル、う〇ことは下品だぞ。シルバースネークか、ロアには荷が重そうだが、やらせてみるか。」
銀色の塊は、幅1m長さ5m程の銀色の大蛇だった。風の壁の衝撃に目を覚ましたシルバースネークは、大きな口を開き威嚇してきた。
種族:蛇魔物
名前:シルバースネーク
Lv:20
職業:---
種:???
スキル:???
Lv20っていうと兄豚クラスか。攻撃が当たるとLvは分かるみたいだ。他のステータスは、どうしたら分かるか今の所不明だ。振り返って3人を見るが、まだ戦う気はないみたいだ。とりあえず1人でやってみますか。
「風の球!」
俺に噛み付こうと襲い掛かってくる頭目掛けて、風の球を放つ!シルバースネークの額に風の球がヒットし蛇頭が仰け反る。下に潜り込み、蛇の喉に向けて剣を突き上げながら魔法を唱える。
「雷纏剣!」
ブロンズソードがバチバチッと紫色の光を纏い蛇の喉元から頭を突き抜けてシルバースネークを絶命させる。はずだった。
ガキンッ!
剣が皮を貫く感触ではなく、金属通しの衝撃音が響いた。硬い物との衝撃で手がビリビリと痺れる。
ドンッ!
右脇腹に、鈍器で殴られたような衝撃を受けるが、踏ん張って耐え凌ぐ。
「ぐっ、雷の球!痺れろ!」
脇腹に重い一撃をくらわせてきた尻尾へ雷の球を直接叩き込む。蛇の全身が紫色の光に覆われる。痺れている隙に、側面に立ち何度も剣を振るう!
ガキン!ガキン!ガキン!
「風纏剣!」
ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!
風属性を纏った斬撃でも、シルバースネークの体を傷つけることができない。これは、倒せそうにもない。奴の痺れもそろそろ回復するころだ。一時撤退しよう。痺れが切れる前に、風の球を横っ腹にぶち込み3人が居る場所まで戻る。
「はぁはぁ、硬過ぎて歯が立たないです!どうやって倒したら良いですか?」
「よっしゃあ、ギリル様の出番だな!まぁ、見てな。」
ギリルさんは、鞄から中央に赤い宝石のような物が埋め込まれた丸い球を取り出した。
「種:一発必中! これでも食らえ!」
ギリルさんの右腕の種紋が赤く光り輝き、丸い球がシルバースネークの頭に向かって飛んでいく。飛んできた球をシルバースネークは素早く避ける。ギリルさんに注意を向けたシルバースネークは大口を開いて飛び掛かってきた。
「光の壁!」
衝突を避ける為、ミリアさんが光魔法を唱えたのだろう。シルバースネークと俺たちの間に白い光の壁が現れる。ぶつかる瞬間に、シルバースネークの大口に丸い何かが吸い込まれていった。
ドンッ!!!
光の壁に阻まれたシルバースネークが悔しそうに鋭い眼光で睨み付ける。後ろに下がり助走をつけて、光の壁を破壊しようと再び突進してくる。
パァーン!!!!
強烈な破裂音がして、目の前に宙を舞い銀色の蛇頭と銀色の肉片が落ちてきた。幸いなことに、光の壁に守られて身一つ汚れていない。蛇の死骸は虹色の光に包まれ魔魂石となりギリルさんのアイテム袋へ吸い込まれた。
「どうだぁ!これが、俺様の種よ!」
「必中なんだから、避けられずに最初から当たって欲しい所だがな。この、ノーコンシーフ!」
「うるせぇ!狙ったとこに当たるんだから、どこ投げてもいいんだよ!」
ギリルさんの種は、狙った所に必中の投擲能力らしい。地味だが投げる物によっては、凄い事になりそうだ。
「光の癒し!」
「ミリアさん、ありがとうございます!」
シウバさんとギリルさんが口喧嘩している間に、ミリアさんが脇腹の怪我を治療してくれた。可愛いし優しいし本当に素敵な女性だ。
「それにしても、硬くて中級冒険者でも相手にしないシルバースネークとロア君をどうして1人で戦わせたの?」
「身をもって敵を知るってのも冒険者の嗜みだ!ガハハハ!」
「自分の力量を知るのも大切だしな。」
「はい、勉強になりました!」
心配性、楽観的、生真面目、バランスの取れた3人の先輩からこれからも色々教わるとしよう。まさか、1発もらったら死ぬような相手に、1人で戦えとか言わないだろうし。
「ロア君、シルバースネークの毒牙は、光魔法で治せないからね!特効薬が無ければ即死よ!即死!」
「えぇぇ!マジですか!!!」
「そりゃあ、マジだぜ!ちなみに、俺達は特効薬持ってない!」
「万が一に備えて居たが徒労に終わったな。」
命に係わること目の前で起こってたらしい。これからは、ミリアさんの言葉だけ信じよう・・・
森を抜けると、廃鉱へ向かう山道が続いていた。山の中腹まで登ると廃鉱の入口が見えてきた。数年前までは、国有数の銅山だったが今では枯れ山と呼ばれ廃鉱となっている。
「入口にブロンズアーマーを着た衛兵さんですか?」
「いやぁ、あれが今回のターゲットだぜ。廃鉱を巣にして中にうじゃうじゃいやがる。」
「ブロンズアーマーというのは、間違いではないな。」
「ロア君、あれはブロンズアントの門番蟻よ。」
【ブロンズアント討伐依頼】*10等級冒険者と中級冒険者の混合パーティのみ受注可能
これが今回受注したクエストだ。ブロンズアントは、Lv15~Lv20の銅山に好んで巣を作る魔物で家畜や農産物を食い荒らす害虫魔物として認定されている。本来、枯れ山に巣を作ることはないが、目撃情報がギルドに寄せられ調査をした所、廃鉱に巣を作っているのが確認された。10等級冒険者と中級冒険者の混合パーティのみ受注可能なのは、駆け出し冒険者に勉強をさせるためらしい。
準備を整えて、蟻さん駆除やりますかね!
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