第15話 早起きは三文の徳?
今年も、あとひと月、年内50話目指して頑張ります!
「ふぅー。いい湯だ。朝風呂は良いね」
「朝風呂さいこー」
今朝は、早くから先日作ったお風呂に入りに来ている。カレンさんが、冒険者へ紹介をして大評判らしい。
おかげで、予定よりも魔導具や水の結晶の消耗が激しく、メンテナスついでに朝風呂へ来たのである。
利用者から、入浴一回に付き銀貨1枚をカレンさんが、しっかり貰っているらしく、俺は地味に儲かっている。
儲かっているのは、俺だけでなく、ちゃっかりイース商会から、入浴セットが販売されている。飛ぶように売れる入浴セットのおかげでイースさんも、仕入れているギルドも儲かっているみたいだ。
イースさんの商人魂には、脱帽だが、カレンさんの気遣いにも驚かされた。
「よーし、ティト、そろそろ出ようか?」
「うん。朝ごはん食べよー」
体のメンテナンスと風呂場のメンテナンスも終えたし、風呂から上がって朝ごはんを食べに行こう。
ガラガラガラ
おっと、鍵を掛け忘れていたか。朝風呂の良さが分かる人種が、この世界にも居るとは。いやいや、ギルドを経由しないと風呂へは来ないと思うが。
「姉さん。カレンさんオススメのお風呂って、凄いわ!部屋の中が暖かいわ」
「アーシャ、一人でどんどん行かないで」
トラブルメーカー登場というやつだ。俺は、一度上がった浴槽へ戻り、大きく息を吸い込み潜って様子を見る。
「アーシェ、アーシャ!おはよう!」
「きゃ!ティトちゃん?入ってたの?」
「おはようございます。ティトさん。お風呂は、どうですか?」
すっかりティトの存在を忘れていた。これは、嫌な展開だ。どうにか、バレずに風呂を上がらねば。
幸いなことに、アーシェ&アーシャ姉妹は初めての風呂だったようで、ティトに魔導具の使い方を教わっている。隙を見て、抜き足、差し足、忍び足で逃げ切ろう。
「なるほどね。ここで温度調節をして、水の結晶に触れるのね」
「うん!アーシェ、綺麗な身体!ここプニプニで気持ちいい」
「ちょっと、ティトさん、イタズラしたらだめよ」
「うーん、じゃあ、アーシャ!」
「うわっ、ティトちゃん、変なところ触らないで!」
よし、ティトが、謎の暴走をして2人が混乱している。今の内に脱出しよう。浴槽から、ゆっくりと音を立てないように上がり、2人の視界に入らないように脱出を試みる。
「きゃ、熱っ!」
「あっつい!ロア助けてー!」
「えっ、ロアさんも一緒なんですか?」
ティトにイタズラをされて、妹アーシャが魔導具の温度調節を間違えたようだ。熱湯がシャワーから噴き出して、風呂場一面が湯煙で包まれている。
このまま放っておけば、華麗に脱出も可能だが、名前を呼ばれている以上、助けないわけにはいかない。タオルで大事な所を隠して、魔導具へと駆け寄る。
アーシェ姉妹の裸を見ないように、魔導具に集中して、適温に戻す。調整が終わった所で、ティトを抱き抱えて、退散を試みる。幸いティトは火傷をしていないようだ。
「ちょっと!待ちなさい!この変態!」
「いやいや、今回も誤解だから!」
「カレンさんに、誰も使っていないと言われたんですが」
風呂場のタイルの上に正座をさせられて、妹アーシャに説教をくらう。タオルで、大事な部分を隠しているが、身体のラインがはっきりと分かる。
妹アーシャは、ほどほどの胸にしっかりとくびれた腰、胸よりも少し大きなお尻に、手足は白く透き通るような肌で綺麗な身体をしている。
姉アーシェは、立派な胸を持ち、妹に負けずと腰もくびれている。胸と同様に立派なヒップラインと白く透き通るような肌で美しい身体をしている。
女性の身体をまじまじと見つめる気は無かったが、ちゃんと顔を見て話を聞きなさいと言われては仕方ない。
妹アーシャが、説教に満足した頃には、俺の身体はタオル要らずになっていた。ようやく俺のターンが回ってきた。
冷え切った身体で、話の途中にくしゃみを交えながら説明する。お互いの話を噛み合せるた結果、どうやらカレンさんのイタズラだった事が分かった。
俺達が入っている事を知らされずに2人はお風呂にやってきて、今ココらしい。誤解が晴れた後も、妹アーシャから追加の罵声を浴びせられて、ようやく解放された。
風呂から上がって、ギルドカウンターへ寄ると、カレンさんが笑顔で仕事中だった。
「ロアさん、若い女性との触れ合いはどうでしたか?」
「カレンさん!イタズラも程々にしてくださいよ!アーシャさんに、こっ酷く説教されましたよ」
「すみませんでした。なかなか上手くいかないものですね。ふふふ」
「ふふふ、じゃないですよ!全く!」
先日の風呂場乱入といい、カレンさんは、仕事が真面目な一方、仕事から離れるとイタズラ好きな一面が現れるみたいだ。
カレンさんに苦言を呈した後は、いつもの朝食タイムに入った。
「ロア。今日は、狩りに出掛ける?」
「うん、何を狩りに行くかは、きまってないけどね。後で、カレンさんにオススメのクエスト聞かないとね」
「その必要は無いわ!今日は、私達のクエスト手伝って貰うんだから!変態覗き魔くん」
「アーシャ、その呼び方は、やめなさい」
声を掛けられ振り向くと、旅装に着替え、両手に朝食のトレイを持った姉妹の姿があった。ローブ姿だと身体のラインが隠されて、ちょっぴり残念だ。
妹アーシャは、無言で俺の対面に移動する。どかっと朝食の乗ったトレイをテーブルに置いて、俺を睨みつける。姉アーシェは、軽くお辞儀をしてから、ティトに微笑み席に着いた。
「えっと、クエストを手伝うってのは?」
「何!文句あるの!?」
「いや、もちろん手伝わせて頂きます!どんなクエストなのかと思いまして!」
「アーシャ落ち着きなさい。ロアさん、手伝って欲しいクエストというのは、千年亀の素材集めです」
「カメおいしいーよ!」
「えっ、ティトちゃん、亀食べたことあるの??」
ティトの相変わらずの食通コメントは、スルーして、姉のアーシャからクエストについて話しを聞く。2人は、昨日、千年亀の素材集めのクエストを受注したが、上手くいかなかったらしい。
お風呂から上がって、カレンさんに、相談すると俺達と一緒に行ったらどうかとアドバイスを貰ったらしい。
探索スキルで、目当ての魔物を見つけられる俺達と違って2人は、生息地域の情報だけで狩りに出掛けたが、全く見つけられずに一日を終えたらしい。
「分かりました!この間のティトの件でお世話になりましたし、力添えできるよう頑張ります」
「足引っ張るんじゃないわよ!ホントは、ティトちゃんさえいれば問題ないんだから!」
「はい、邪魔をしないように頑張ります!」
「ティトもがんばるー」
「では、ロアさん、ティトさん、宜しくお願いしますね。頼りにしています!」
きつい言葉ばかり投げ掛ける妹アーシャと違って、優しいアーシェには、癒される。朝食を終えた後は、イース商会に向かった。
数日間でレベルが上がったので装備の新調と千年亀について情報収集だ。
アーシェ&アーシャ姉妹を連れて、イース商会に到着した。店内に入ると、ギルドで販売中の入浴セットが、うず高く積まれているのが目に入ってきた。
「おぉ、ロアくん。いらっしゃい! おかげで稼がせてもらってるよ! 今日は、何をお探しかな?」
「イースさん、こんにちは。お風呂作りで、俺も稼がせてもらってるんで、お互い様ですよ」
「おや、美人さんを2人も連れて。ロアくんも隅に置けないね」
「初めまして、姉のアーシェと申します。職業は、神官です。宜しくお願いします」
「こんにちは。妹のアーシャよ。よろしく」
自己紹介を終えると、早速、イースさんに千年亀について、聞いてみた。流石、物知りのイースさんは、亀のことにも詳しく色々と教えてくれた。
亀のことに詳しくなったところで、続いて装備の相談をする。フォレストワスプとの戦いを終えた俺達のレベルとステータスは、こんな感じだ。
種族:人間
名前:ロア
Lv:19
職業:魔法剣士
ステータス
HP:3000
MP:3000
攻撃力:200
防御力:200
素早さ:200
魔力:200
運:999
種:熟練度3 ランダム(神の三つ目が指示した能力を得る) 3/3
スキル:初級 風雷光土炎水闇氷 魔法 レベル19
種族:亜人
名前:ティト
Lv:19
職場:シーフ
ステータス
HP:2680
MP:205
攻撃力:180
防御力:170
素早さ:500
魔力:120
運:80
種:熟練度2 幸運一撃
スキル:探索 ドロップ率アップ 開錠
俺は、魔法書を毎日コツコツ習得してきた甲斐あって、全属性の魔法を使えるようになった。ティトは、素早さに特化して能力が上がり、新たに開錠スキルを身に付けていた。
アーシェとアーシャも、同じLv19らしい。身体に触れていないのでステータスは分からないが、2人とも魔力特化型なのだろう。
「ロアくん、数日で、Lv10からLv19なんて、どんな狩りしてるんだ? 普通は半年以上かかるよ」
「ははは、何故か乱獲クエストばかり受けてしまい、気付いたら爆上がりしてました」
「はぁ?ロアとティト、数日前までLv10だったの?信じられない!」
「ロアは、只者じゃないと思ってましたが、そこまでだったとは、驚きです」
「ロアは、つよいよー」
ゲーム感覚で、日々過ごしてきたが、嬉しいことに普通ではなかったらしい。褒められるのもいいもんだ。
イースさんから、オススメ装備を購入し、4人の着替えが済んだところで、千年亀討伐に向かった。
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