第13話 色んな有難み
更新遅くなりました。明日は、急用があり更新がないかもしれません。誤字脱字、少しづつ修正していきます。大筋は変えずに加筆修正も予定しています。
ティトを抱きかかえギルドへと戻った。ギルドへ到着するとカレンさんが俺達に直ぐ気付いてくれた。
「ロ、ロアさん? ティトさんも血だらけで大丈夫ですか!?」
「俺は、大丈夫です。でも、ティトも眠っているだけだとは思いますが…… これ、クエストの納品分です。報酬は後程で大丈夫です。とりあえず、部屋にティトを寝かせます。」
「分かりました。お大事にしてくださいね。私に手伝えることがあれば何でも言ってください」
「ありがとうございます。では、失礼します」
外傷とHPは全快しているが、ティトは眠ったままだ。俺は部屋に戻り、ティトの服を脱がして血だらけになった体を水魔法で濡らした布でキレイに拭いてやる。裸にしてしまったが、全身の傷を確認するためには仕方がない。なるべく凝視しないように、肌をキレイにしていく。
妹だと思えば、変な気も起きない。俺の光の癒しでも、傷跡を残さずにキレイに治せていたみたいでホッとした。女の子の体に傷が残っては大変だ。ティトの全身を拭き終えた後は、自分の体もキレイにしなければ。血まみれで気持ち悪い。装備を脱いで体を拭いていく。
ガチャ!
「重傷の女の子がいるってのは、ここ!?」
大声と共にノック無しで勢いよく部屋のドアが開かれる。突然、部屋へ3人の来訪者が現れた。
「って、何やってんの!寝たきりの女の子に!この変態!ん、あんた横取り野郎じゃない!?」
「こ、これは!」
全裸の少女と上半身裸の男を見た赤いローブを着た少女が声を荒げながら、近くにあった物を次々に投げつけてくる。
一緒に入ってきたカレンさんは、手を口に当てて驚きの表情をしている。白いローブを着た女の子は、暴挙を止めようと手を掴もうとしているが、なかなか止められない。
「痛っ、いてっ、体を拭いただけで、変なことは!」
「ほら見なさい!体を拭いただなんて、自白したわ!衛兵に突き出してやる!」
「アーシャ、彼の足元を見なさい。」
「何?アーシェ姉さん?赤黒くて汚い布が何だってのよ!」
興奮して意味が分からないようだ。他の2人は状況を理解してくれたようだ。問題の1人が止まらない困ったもんだ。
「アーシャさん、ロアさんは彼女の体を清潔にしただけかと思います」
「え、あっ……」
カレンさんの助言で、最後の1人も状況を理解してくれた。何とか衛兵への突き出しは、逃れることができた。やっぱり、頼れるお姉さん最高だ。
3人の誤解が解けたところで、部屋を訪れた理由を聞いてみた。カレンさんが俺達のことを心配し、アーシェ&アーシャ姉妹にティトの容態を見て欲しいとお願いしてくれたのだという。ありがたい話だ。
「では、様子を見ますね。失礼します」
「はい、アーシェさんお願いします」
姉アーシェの職業はプリーストだ。外からは分からない内面の治療を行うことができる。ティトに手を伸ばし魔法を使う。
「光の透視!」
アーシェの手から光が溢れ出しティトの全身を包む。光が点滅し、ティトを包んでいた光がアーシェの手へ戻っていき静かに消えた。
「疲労が溜まって寝ているだけ。大丈夫よ。安心して」
「あ、ありがとうございます!お礼にこれを!」
ティトの体を診てくれたアーシェに金貨を1枚差し出すと手を振って断られた。
「アーシェ姉さん、何やってるの!貰っておきなさいよ!」
「いいのよ。彼には恩があるし」
「いや、妹さんの言う通りです。何かお礼をさせてください」
「分かりました。では、今後何かありましたら、お手伝いお願いしますね」
俺に優しく微笑んで、お辞儀をすると長い銀髪に青い瞳の姉アーシェは、礼を受け取らなかったことに文句を言う長い銀髪に黄色い瞳の妹アーシャと部屋を出て行った。カレンさんは、ホッとした表情で「良かったですね」と言うと部屋を出て行った。お礼を受け取ってもらえなかったが、3人には今度何かをプレゼントしよう。
3人が部屋を出て行った後は、突然の来訪者により途中だった全身の汚れを落としを再開した。体の汚れを拭き終わったがすっきりしない。シャワーを浴びて、風呂に入りたい。ティトは、ぐっすり寝ているようだし、魔法の複合で風呂場を作ってみるか。ギルド内に風呂場を作って良さそうな場所があるかカレンさんに相談してよう。
「カレンさん、先程はありがとうございました。ちょっと相談があるんですが……」
「あ、ロアさん、どうしましたか?」
風呂場作りを相談すると1階の使っていない部屋を改築して良いと返事を貰い案内してもらった。風呂の文化は貴族が嗜む程度で庶民には、あまり広まっていないらしい。
カレンさんは、前々から興味があったということで、ギルド長をさらっと説得し改築できるようにしてくれた。
「ここです。水路に面した角部屋なので排水の量を気にしないでも大丈夫だと思います。」
「ありがとうございます。では、やってみますね!」
「はい、完成したら教えてくださいね!」
「勿論です!一番に連絡しますね!」
カレンさんから、部屋の鍵を受け取り内外をしっかりと確認した。イメージが掴めたところで、一度部屋を出てイース商会へ向かう。
魔法で水をお湯に沸かすことができる俺はともかくとして、誰でも使えるようにするには、魔導具のサポートが必要だ。
日が落ちて暗くなっていたがイース商会は、まだ営業中だった。ドアを開けて店内に入るとイースさんはカウンターに座り売上を計算しているところだった。
「やあ、ロア君、あれティトさんは一緒じゃないのかな?」
「こんばんわ。イースさん、ティトに少し無理をさせてしまって、今は部屋でゆっくり寝ています」
「そうかそうか、それじゃフォレストワスプ退治は上手く行ったのかな」
「いや、何とかなりましたが、上手くと言われると返事に困りますね」
俺は、シェルターフロッグとフォレストワスプ退治について、イースさんに話した。うんうんと頷いて真剣に話を聞いてくれるイースさんは、やっぱり頼れる先輩だ。イースの兄貴!とでも、これから呼んでみようか。
冒険話がきりの良いところで、風呂場作りについて相談すると貴族御用達の湯沸かし魔導具や水源として使える水の結晶を紹介してくれた。いくつかアドバイスもくれたので、良い風呂場が作れそうだ。
「お風呂が完成したら私にも使わせてくださいよ」
「はい、勿論そのつもりです!ありがとうございました」
「いやいや、今日の売上に悩んでいたところだったから、お得意様の来店で助かりました。はっはっは」
「お力になれたようで何よりです。いつも良いものをありがとうございます。それでは、失礼します」
イースさんに、お礼を告げて店を後にする。水を供給するアイテムと風呂を沸かす魔導具が揃えば、誰でも気軽に利用できるようになるだろう。今から作るのが楽しみだ。
ギルドに戻り、さっと夕食を済ませ、風呂場を作るべく1階の部屋を訪れる。
「よし、まずは土魔法で浴槽や腰掛け、桶を作成しよう!」
この世界での魔法は、職業で習得可能な属性であれば魔法書を読むだけで、すぐに使えるようになる。習得すれば自身のレベルに応じた各属性の魔法をイメージするだけで発現することができる。炎・水・土・風・雷・氷・光・闇の8属性が存在し、魔法剣士は全ての属性魔法を取得可能だ。
1日1属性までしか、新たに習得できない。理由は、制限大好きな創造神【アンファン】のおかげだ。この世界に来てから、毎日コツコツ習得している俺は、氷・闇の2属性以外は使えるようになった。
考え事をしている間に、イメージ通りの風呂場の内装が仕上がった。あとは、イースさんの説明通りに魔導具を設置していく。
浴槽と洗い場に水の結晶をはめ込み、流れ出した水の通り道に水からお湯に変える魔導具を取り付ける。
「よし、完成だ。ちょっと使ってみるか」
水の結晶は、手で直接触れている間だけ水を発生させるアイテムだ。湯沸かし魔導具は温度を設定しておくだけで魔導具に触れた水分を設定温度に変化させて放出する。
一度魔力充填をしておけば、ひと月は充填不要の優れモノだ。冷やすこともできるから冷たい水から熱湯まで自由自在である。
「水からお湯に瞬間で変わるなんて、前世の風呂より便利じゃないか」
俺が前世で住んでいたアパートは、蛇口を捻ってお湯に変わるまで3分くらいかかっていたことを思い出す。風呂無し生活を嘆いていたが、風呂が出来たら前世よりも便利になるとは思っていなかった。
うん、温度良し、水量良し、換気良し、鏡良し、腰掛け良し、排水良し、浴槽の湯量良し!
「カレンさんに完成を報告して、ゆっくり入るか」
俺は、ギルドカウンターへ一旦戻り、カレンさんに完成を報告すると興味津々な様子だった。使い方などを簡単に説明した後、部屋に戻って風呂の準備を整え一番風呂へ向かった。
風呂に到着すると浴槽から湯気が立ち風呂場内も適温になっていた。水の結晶に触れるとお手製のシャワーから、適温のお湯が出てきて気持ちいい。全身を洗い流して、浴槽にじっくりと浸かる。
「いやあ、極楽極楽!」
思わず独り言も出てしまう。この世界に来てからの数日間を思い起こしながら、これからの事を考える。当面の目標はLv20にすることだが、今のままでは今回のフォレストワスプみたいに死に直面することも少なくないだろう。新しい仲間が早急に必要だ。何とかしなければ。
ガラガラガラ
銭湯や温泉と言えば引き戸だと思い作った入口が音をたてて開かれる。あれ、誰か入ってきちゃった。湯気でイマイチ誰か分からないが。小柄な人影だ。
「ロア!」
「ん、その声は」
すっぽんぽんなティトが、風呂場を走り俺に向かって走ってくる。元気になったのか。それは良かった。駆け出してきたティトは、そのまま浴槽にダイブする。ザブーンと小さな体が湯に浸かり勢いよく飛沫があがる。
「キャッ」
ティトが起こした飛沫を受けた誰かの声がした。えっ、他にも誰かいるんですか……
「わぁ、凄いですね。これをこうすると…… おぉ、温かい。気持ち良いです」
「カ、カレンさん、なんで入ってきてるんですか!」
「起きたらロアがいなくて、カレンに聞いた」
「うんうん、なるほどね。って、そこじゃないだろ!」
「ロアさん、ご一緒してはダメでしたか?」
俺は、カレンさんの裸をみないようにしながら仕方なく一緒に風呂に入った。男女は別れて入るものだと教え、今後は鍵を掛けるように話をした。
ティトは、すっかり元気になって浴槽を泳いだり、シャワーを俺に向けて掛けてきたりと遊び放題だ。風呂が気に入った様子だ。
カレンさんも、お風呂は素晴らしいと賞賛してくれた。嬉しい誤算だったが、童貞の俺は目のやり場に困り早めに風呂を上がることになった。
風呂から出ると腹ペコのティトに、好きなだけ夕食を食べさせて部屋べ眠りについた。ティトが元気になってよかった!明日は、錬金術ギルドへ行って錬金術を学ばせてもらおう。
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