ズルと出来る男と爆弾と
とりあえずサーティス様に聞く前にタブさんに確認だ。
ある程度こちらで調べとけば、サーティス様との打ち合わせが短くて済むからね。
「タブさん、スキルに取得経験値倍加と取得スキルポイント倍加、もしくは必要経験値半減と必要スキルポイント半減ってあるかな?」
「うーん、どちらもないみたいです」
あー、そうか……一応エルガルド人は死ぬと、生前のスキル、ステータスの研鑽、功績、功徳などの結果次第で、ここに就職の可能性がある。
私が聞いたスキルは、ズルというかカンニングの可能性があるから存在しないのかも。
スキル有無の確認は取れたから、サーティス様を覚醒させよう、話はそれからだ。
「サーティス様、サーティス様!」
「……か、奏さん?」
私は肩を揺すり、サーティス様の覚醒を促すと、結構すぐに戻ってきてくれた。
「今まで悪魔の手下に誘われ、新たな世界に足を踏み入れていた気がするのですが……」
なんかちょっと劇場入っちゃってるなぁ……
やっぱり下界に存在していない女性用下着は刺激が強すぎたか……
「気のせいだと思います」
私は微笑んだ。
女性の微笑みには、何もかもを有耶無耶にする力があると聞いたことがある。私の笑顔にも、それが宿っていると信じて微笑むよ!
「そうですか……多分、気のせいではないのでしょうが、聞くのも怖いので気のせいということにしておきましょう」
うーん、笑顔が効いたのかよく分からない反応だ。
「察しがよくて助かります、サーティス様。それはそうとリグレット様が暴走して、色々回り道してしまいましたが、本題である転移関連で、いくつか質問とお願いがあるのですが……」
女性用下着を望んだ私が暴走のきっかけかも知れないけど、まあ元はといえばリグレット様が悪いんだし、罪は全部被ってもらおう。
「分かりました、リグレットが寝てる間に進めてしまいましょう」
「では、まずスキル関連なんですが、取得経験値倍加と取得スキルポイント倍加、のユニークスキルが欲しいんですけど」
「そう来ましたか、でも今までの奏さんの希望に比べたら、まともですね」
なんか酷い、いわれようなんだけど……そんなに突拍子もないこと要求してないよ。
私は生理と排泄とムダ毛が存在しなくて、女性用下着が存在する世界を求めただけだもの。
サーティス様が、ダメだこの子といわんばかりの様子で、ため息を付いた。その態度には、いささか不満が残るけど仕方ない。
「……とりあえず、ユニークスキル付与したので確認してもらえますか?
タブさんでも、確認できますが『私の内なる心の窓よ、我に宿りし秘めたる力を顕在せしめよ!』というと、ステータス画面確認できますので」
「タブさん、確認お願い」
私、余程のことがなければ、ステータス確認はタブさんに頼むことにするよ。
「母上、ちゃんとユニークスキル付与されてます!」
「あとエルガルドの場合、ステータスが文化として根付いているので、結構ステータスを開示する機会は多いのですよ。
平温に暮らしたいというのであれば、隠蔽スキルを取るのをお勧めします。
隠蔽スキルは高レベルになると、認識阻害魔法も使えるようになるので便利ですから」
「どれくらいのレベルで認識阻害魔法って取れますか?」
「7レベルですね」
さすがのサーティス様。
厨二チックな言い回しが過ぎるのが玉に傷だけど、有用なアドバイスはありがたい。私はサーティス様が教えてくれた通り、隠蔽スキルを7レベルまであげる。
隠蔽スキルは鑑定スキルと同じ、ポイント消費だったので、消費したスキルポイントは280Pだ。
「でも、7レベル以上の鑑定スキル持ちには効かないんじゃないですか?」
異世界転移ものに限らず、スキルのあるタイプのラノベだと、自分のスキルレベルより相手のレベルが高いと、持ってるスキルが効かないというのは、ありがちな設定である。
「それは安心してください。奏さんのスキルレベルより鑑定スキルが高い人物は、現在下界には十数人しかいませんので。
それくらいスキルレベルが高いと目立つので、こちら側でも一応ある程度は把握していますから」
「なるほど」
まあ数億人中十数人なら、ほとんど遭遇する機会はないか。あと念のため鑑定スキルも、7レベルまで上げておこう。これも消費スキルポイントは280Pだ。
「そういえば服の用意がまだでしたね、一応こちらで、下界の装備品に似せて装備品を用意しました」
出されたのは厚手の布で作られた、丈が太もも程度の上着と、少しだぼついたズボン、それに革マントとマントを留めるためのブローチだった。
どちらもファンタジー世界の一般人が着ていてもおかしくない印象だ。
「ありがとうございます!」
「全部用意してしまうと、手に入れる楽しみが、なくなってしまいますからね……」
サーティス様によると、私の場合、憑魂人形に相当防御力あるので、どんな防具を選んでも特に問題ないとのこと。
コスプレ感覚で選べばいいのかな。
ちなみに用意してくれた装備品はすべて神器で、更に隠蔽を施しているので10レベルの鑑定スキルでも『厚手の服』『厚手のズボン』『革マント』『銀細工のブローチ』としか表示されないようだ。
それとブローチは、こことの連絡用らしい。ブローチを手で握り締めて念じると、サーティス様と通信できる優れものだそうだ。
「じゃあ下界で降りた先の説明なんかは、現地で通信した方が分かりやすいですね」
「そうですね、通信機のテストも含めて、そうして頂けるとありがたいです」
なんだかんだでサーティス様は、気遣いの出来る男だ。先ほどの停滞っぷりが嘘のように話が進む。
「特に何もなければ、このまま転移してもらうことになりますが……」
「あ、ところで私は下界にどれくらい居られるのでしょうか?」
それによっては、やりたいことを取捨選択しなければならないからね。
「そうですね、予定では50年となってます。ただそこまで厳密でもないですし、何かあればこちらに戻って来ることも可能ですので」
思っていたより長いな。
でも、これならぐうたらしながら、やりたいことをやれそうだ。
「結構、下界と天界の垣根が低いですね」
「地球人を受け入れるのが初めてなので、こちらも手探りなので……」
サーティス様が苦笑いをする。
まあ、ケアが手厚いのは悪いことじゃないか。
「何かあればその都度サーティス様に連絡すれば、何とかなりそうですね」
「では、そろそろ……」
私とサーティス様で話が纏まりかけていたとき、横からタブさんが話しかけてきた。
「さーてぃす様、タブも質問いいですか?」
そういえば、タブさんが質問あるっていっていたっけ……たどたどしいけど、ちゃんとサーティス様といっていて偉いぞ。
「なんでしょうか、タブさん?」
サーティス様も屈んで、微笑みながらタブさんに目線を合わせている。
傍目から見ると非常に微笑ましい光景だ。
しかし、そのほのぼのとした雰囲気は長くは続かなかった。
「下界では、どれくらいまで人を殺しても大丈夫ですか?」
タブさん……それ聞いちゃうの? 発言が爆弾すぎるよ。
いや、確かに人殺しすると神様に目を付けられるといったのは私だけどさ。
違うんだって、そういうことじゃないんだよ。タブさん……
「奏さん……補足よろしいでしょうか?」
その言葉にサーティス様の微笑みが固まっている。
「は、はい……」
私はそう返事をするしかなかった。




