ピースとデストロイと殺人許可証と
スキル調整できるタブさん、ブラジャーに変化できるペンタブ師匠、一応支店長のリグレット様すら完封できるマウス先輩、まだ可能性は未知数だけど胸の谷間に肩ヒモを通さない能力の鞄。
って、うちの子たちは皆優秀だなぁ。
もんどりうっているリグレット様をよそに、私はうちの子たちの能力に素直な称賛を送った。
あ、鞄だけまだ名前付けてないけど、どうしようかなぁ。
肩ヒモを胸の谷間に食い込ませない能力を真っ先に付けてくれた鞄だから、名前は付けたいんだけど……と、考えていたけど鞄からの反応がない。
「タブさん、鞄から反応がないよ」
「まだ、母上の呼び掛けに答えられるほどの意思は宿ってないみたいですね。そのうち宿ると思いますよ」
呼び掛けに応じるほどの意思がなくても、肩ヒモを谷間に食い込ませない能力を発現してくれたのか……凄くいい子じゃないか。
「名前は後で相談して決めればいいかな」
やっぱり話し合って、鞄が望む名前付けたいしね。
「それで大丈夫だと思います、母上」
「うーん、そうなると後は私がどんなスキルを覚えるかなんだよねぇ」
「でしたら母上、スキルポイントだけもらって、どんなスキルを覚えるかは下界で生活しながら考える、というのはいかがでしょうか?」
「そんなことできるの?
確かエルガルド人たちはここでスキルポイント割り振って、下界に降りるっていっていた気がするんだけど……
それにスキルポイントやステータスポイントは手動で割り振れなくて、本人の行動による自動割り振りだって聞いたような」
「普通はそうです。ただ、それはエルガルド人が下界に降りるとき、貸与されたタブの仲間たちが返却されるからなのです」
タブさんのその後の詳しい説明はこうだった。
下界でエルガルド人がポイントを手動で割り振れないのは、タブレットがないのが理由らしい。
なので下界に行っても、タブレットさえあれば、誰でもスキルやステータスポイントは割り振れるようになるとのこと。
ただエルガルド人が下界にタブレット持ち出すのは基本的に処罰の対象になるそうだ。
「えっ、じゃあ私もタブさんを下界へ連れていくのってアウトになるのかな?」
「それは多分大丈夫だと思います。そもそも母上は地球人ですし……
それに、そこのよく鼻血出す人が、タブたちは母上と一緒に行くしかない、といっていたではありませんか」
「あー、確かにそんな事いってたっけ。
それとタブさん……『よく鼻血出す人』はサーティス様っていう名前だから、次からは名前で呼んであげでね」
サーティス様も好きで鼻血出しているわけじゃないんだよ。
「分かりました、母上! では、後は下界に転移するだけですね」
「ごめんタブさん、転移するのはサーティス様からエルガルドで着ていてもおかしくない服をもらってからかな。さすがにこの服で転移したくないし」
地球からワンクッションおいてエルガルドに転移するんだから、Tシャツにハーフパンツで転移はちょっと遠慮したい。
エルガルドに行ったことのないリグレット様には頼めないしね。
「どんな服を着ていても、母上は母上だと思いますが……」
「タブさん、できる限り私はエルガルドで目立たず平和に暮らしたいんだ。この服はエルガルドで相当浮く目立つと、簡単に予想がつくんだよ。だから洋服もらっときたい訳なの。
それにまだスキルについて、説明が途中なんだよね」
最悪、認識阻害魔法のスキルを取って、周りの目を欺くって方法もある。
けど、服一枚で何とかなる問題のために、スキルポイント使うのは、もったいないと思うんだ。スキルポイントが一万Pあるとはいえ無限ではない、有効に使わねば。
そうだ、異世界転移ものによくある、取得経験値倍加や取得スキルポイント倍加みたいなスキルがあるか、サーティス様に聞いてみよう。
なければユニークスキル扱いで、もらえるように頼もう。
「うーん、タブには平和に暮らすために服を変えたいという、母上の気持ちがよく分かりません。だって母上の平和を脅かす者は皆殺しにすればいいのでは?」
おおぅ、なんていうサーチ&デストロイだよ。そんな物騒な平和はいらないから。
私たちの通った後はペンペン草すら生えてない、まるでイナゴのようなバケーション嫌だよ。
「それダメだから! 地球での私の知識持っているなら、殺人が地球では相当なタブーだって分かるでしょ!」
「それは知っています。ですが今から行くのはエルガルドで地球ではありませんし。
母上が不当に貶められるなら、タブ含め師匠も先輩も黙っていませんよ」
マウス先輩を見ると、その通りといわんばかりに、空中を跳ね回っていた。
きっと彼らは私のためを思って……うん、それは分かっている。
気持ちはありがたいと思うよ。
マウス先輩の戦闘力は充分理解しているので頼りにしているけど、そもそもタブさんって戦えるのかな?
タブさんは性格はちょっと難あるけど黙ってれば美形だ。
下界で一人にしたら、拐われて人買いに売られる可能性も……そうなったらスキル管理されている私の死活問題だ。
そう考えると、タブさんにはタブレット形態で鞄の中にいてもらう方がいいのかも……
「母上、タブは母上と一緒に外を歩けないのですか?」
タブさんが私のTシャツの裾を握り締めながら、うっすら瞳に涙を溜めている。
うう、タブさん、その表情はズルいよ。
「いや、ほらね……鞄の中のほうが安全かなぁ……って」
「タブは絶対、母上の側で母上を守ります!」
「うん、その気持ちは嬉しいんだけどね」
「大丈夫です、母上。タブはこれでも神器なので、下界の人間の大半は殺せますから!」
確かに神器なら、ある程度の戦闘力はあるのか。でもタブさん、そういうのはフラグだからイっちゃダメよ。
それはそうと、これだけはいっとかないと……
「私はあまり殺すとかの物騒な発想は好きじゃないなぁ、タブさん。それにそんなに簡単に人を殺していたら、ここの神様たちに目をつけられちゃうよ?」
私だって自分を貶める相手に無抵抗ではいたくない。
それに、世の中には自分より弱いと認識した相手には、何をしてもいいと考える輩がいるのも知っているけどさ。
「分かりました! 殺す時には、ちゃんと母上の許可を頂いてから殺すようにします。それにタブも鼻血様に聞きたいことできたので、早く鼻血様を起こしましょう」
あ、タブさんもサーティス様に聞きたいことできたのか。
とりあえず服は手に入りそうだし、これで解決かな?
それに殺す前に私にお伺いをたててくれるなら、最悪の事態だけは避けられるか……
「うん、それでお願い。あとタブさん、サーティス様の意識がある時は、鼻血様呼び方ではなく『サーティス様』と呼んであげてね。
そうしないと、めんどくさい事が起こる可能性大だから」
「分かりました、母上!」
サーティス様の名前の件、注意するのは二回目だけど、大丈夫かなぁ……ちょっと不安。
それはさておき、回復魔法のスキルは高レベルで取ることは決定だ。そうすれば一応、元に戻すことはできるもの。
殺人許可証はマーダーライセンスと読みます。
サブタイトルにルビ振れなかったです。




