貧乏なスーツと完封と確認と
今回は文章が少な目な上、ネタも少ないなぁ……
「これは一体どういうことなんですか?奏さん」
目を覚ましたサーティス様は、未だに怒りが治まらないペンタブ師匠とマウス先輩により、ボコボコにされまくっているリグレット様を見つつ、私に説明を求めてきた。
そんなサーティス様のスーツは、案の定赤く染まっている……半分だけ。
その染まりかたも、元お金持ちの貧乏なお坊っちゃまが着ていたスーツみたいに、胸側と背中側で赤白半分に別れていて、私は染まりかたも芸の域に達しはじめているなぁ……と、しみじみ思ってしまう。
そんなスーツを見ていると、若干は怒りが治まり、冷静にもなる。これもひとえにサーティス様のお陰だ。
まあ、それでもペンタブ師匠とマウス先輩がリグレット様をボコるのを止めない程度には怒っているが……
しかし、部屋に戻ってきたサーティス様が、鼻血出しながら倒れたときは大変だった。
私は一旦リグレット様を叩く手を止め、サーティス様の介抱に回ったが、意識のない神様って、意外に重かった。
マウス先輩の手伝いがなければ、サーティス様を椅子には座らせることはできなかったと思う。
っていうかマウス先輩、サーティス様の下に潜り込んで、持ち上げていたもんなぁ。
あんなに力があるんだって、びっくりしたよ。手伝うだけ手伝ったら、マウス先輩は再びリグレット様をボコる作業に戻っていったけど。
その間、ペンタブ師匠も実は、ずっとリグレット様の身動きを封じ込めていたんだよね。ペンタブ師匠も地味にすごいよな……
ちなみに鼻血を出した原因である私の裸人形は、マウス先輩がタブレット操作して、人形の周りにモザイクを掛けてくれたので、ひと安心だ。
私だけだったら、人形にモザイクかけられずに、サーティス様は確実に、あと何回か鼻血出していただろうなぁ。
あー、そうだった。
とりあえずサーティス様に事情を説明しなくちゃ……
「サーティス様に連絡したあと、調整を保存しようとしたら、リグレット様にタブレット取られて初期化されました。
私たち三人で一生懸命調整した人形が一瞬でパアですよ。なので、リグレット様には報いを受けてもらっています」
「奏さんが怒っている理由と、リグレットがぐったりしている理由は分かりましたし、怒りは正当なのでアレは、とりあえず放置しておきましょう。
でも、なぜマウスとペンタブがあんなことになってるんです?」
「ペンタブ師匠もマウス先輩も一緒に調整するの頑張ってくれたんで、多分調整かけた人形を台無しにしたリグレット様が、許せなかったんだと思いますよ」
「いえ、私がいっているのはそうことではないのですよ。なんで動いているのかってことなんですが……」
「え?あー、ペンタブ師匠が人形の調整中に自分では自分を操作できないっていってましたね、そういえば。
なんで動いてるんでしょうね、私もよく分かりません。
でもそのお陰でリグレット様に報いを受けさせられたので、私としては特に気にならないんですが……」
「ペンタブが『自分では自分を操作できない』っていったのですか?!」
「そうですよ。サーティス様、なにそんなに驚いてるんですか?
ペンタブやマウス握ったら、使い方は自然に頭に浮かぶっていったのは、サーティス様ですよね?
それだけじゃなく、マウス先輩もペンタブ師匠も、調整中に色々アドバイスくれたり、私が疲れてくると励ましてくれましたよ」
「あのですね、確かに私がそういいましたよ!
でも奏さんのいっているような『励まし』や『アドバイス』をするほどの意識は、そのペンタブやマウスには本来ありませんから!
それにペンタブやマウスが一応、支店長のリグレットを、あそこまで、完封できるのもおかしいんです」
サーティス様が指差した先には、なぜか私が報いに加わっていた時よりも、ボロボロになっているリグレット様がいた。
マウス先輩ってば、一人で体当たりによるストレート+ボディブロー+フックのゴールデントライアングルを形成してるもんなぁ……超アグレッシブ。
「奏さん、ちょっとタブレット見せてもらえますか?」
サーティス様が何かに気付いたように、私にそう聞いてきた。
「いいですけど、また何で?」
「ちょっと確認したいことが、ありまして」
「はあ……」
なんだろう……私はマウス先輩がリグレット様の腹部に体当たりした時、床に転がったタブレットを拾うと、サーティス様に差し出す。
サーティス様が私の差し出したタブレットを手に取ろうとした瞬間、見えない何かによって、サーティス様の手は弾かれてしまった。




