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師匠と先輩と五割増しと

 青い魔方陣内の憑魂人形にモザイクのようなテクスチャーが張り付きだした。

 最初は目の荒いテクスチャーだったのが、徐々に細かなそれになり、段々と肌色の人型をとるようになる。

 髪が、顔が、手が、胴が、脚が……憑魂人形は私へと姿を変えた。


 魔方陣内には私の姿をした人形が浮かんでいる。

 感動だ……だって装置の外見的には、ホムンクルス作成もしくは、悪魔合体って感じなんだよ!

 すごい、すごいよ!

 人って感動すると語彙力なくなるんだなぁ……だってすごいと、感動と興奮するしかいえないもの。

 欲をいえば中に入っているのは、私ではなく美形がよかったな……男女はどっちでもいいから。


 それにしても、この装置を作った開発者には感謝しないとなぁ。

 こんな便利なもの作るなんて天才だよ!お陰で身体のコンプレックスも解消出来そうだし!

 興奮は醒めやらないけど、早速、カスタマイズ作業を始めよう。


 タブレットを見れば、先ほどまで白かったキャンバスには、魔方陣内の憑魂人形が写し出されていた。


 サーティス様のいっていた通り、ペンタブを握っていると、頭に使用方法や知識がひとりでに浮かんでくる。

 しかもただ漠然と浮かぶのではなく、私がタブレット内で意識を向けた場所の機能情報が浮かぶのだ。


 お陰で膨大な情報量に苦しむことなく、スムーズに作業出来そうだ。


 客観的に自分の姿を見た印象は、やっぱり先ほど服を脱いだ時と変わらないなぁ……

 しかし客観的に見ると、胸の存在感えげつないわぁ。

 とりあえず胸は後回しにして、さっき見られなかったところを確認しつつ、頭からカスタマイズしよう。


 そうなるとまず、顔か。


 まず髪。ショートカットってことは、この体が18才以上ではないってことが分かる。

 成人式のために18才で髪伸ばして、終わっても髪切るのが面倒くさかったから、そのまま死ぬ直前に至っていたからね。


 やっぱりだ。髪が真っ黒過ぎな上、毛量が多いから重い感じなんだよねぇ。

 そのくせ、ねこっ毛だから生え際にボリュームないしなぁ。

 え?毛量増やせるし、髪色と髪質も変えられる?

 どうやらペンタブは、私が希望するカスタマイズが可能かどうかも教えてくれるらしい。


 なんて優秀!

 もうペンタブなんて呼び捨てにはできないわ。

 先生って感じなのはサーティス様だから、ペンタブは師匠だね、ペンタブ師匠だよ!


 そうと決まったら、私はペンタブ師匠の指示通り顔を拡大し、生え際の毛のボリュームを足し、髪質もハリのあるストレートヘアに変える。

 髪型はショートボブで、後頭部の形がそのまま髪型の美しさに出るが、そこは微調整をかける。

 サイドは少しレイヤーを入れた。もちろん髪には天使の輪も完備だ。


 髪の色はなぁ、異世界チックに赤とか青とかも憧れるけど、それが元で迫害されても困る。

 カスタマイズが終わって、サーティス様を呼ぶときについでに、髪と瞳の色のことは確認してみよう。今は黒髪黒目のままだ。


 次は顔立ちのカスタマイズ。

 顔はなぁ……別に不細工でもないし、極端にバランスが悪い訳でもないけど、美人って訳でもないんだよねぇ。

 かといって転生でもないのに、いきなり別人になって精神が耐えられるか分からない……でも、ある程度整った顔で、転移はしたいしなぁ。


 よし、ここはプリクラやSNSで女性たちがすることがあるという、盛る感じでいくか!

 目標は現在の容姿の五割増しだ。


 まず眉、意思の強そうなという表現がよく合う眉だ。

 太くて立派だ、ゲジゲジ眉毛とまではいわないけど、バブル時のボディコン女性くらいはある。

 という訳で、眉は整えて細くして……形変えてみたいけど、失敗すると怖いし……うーん。


 あ、ペンタブ師匠、なんでしょうか?

 失敗したら元に戻せると……

 ありがとうございます!失敗を恐れず頑張ってみます。


 それから何回眉を全て消してしまっただろうか。その度に眉を元に戻してやり直し。

 やっと納得できる眉を作ることに成功する、綺麗な柳眉だ。

 ふぅ……一仕事終えたって感じ。太い眉は結構コンプレックスだったんだなぁと、改めて実感。

 

 次は目元。奥二重だけど、黒目がちだし睫毛も多いから、目はこのままでいいかな。多分目を弄ると、外見の印象思いっきり変わるだろうし、五割増しどころの騒ぎじゃなくなる気がする。


 次は鼻だ。そこまで大きくもないけど、高くもない。やや団子状になってるかな?程度だ。

 ちょっとだけ鼻を高くして、丸みを消してみるか。

 あ、いい感じ。出来れば横から確認したいけど……


 なんでしょうか?ペンタブ師匠……

 憑魂人形の角度を変えるのは、マウスが担当なのね。

 細かな作業はペンタブ師匠が得意で、範囲が大きい場所を修正するのはマウスが得意だと。画面の拡大と縮小はどちらでもOKとのこと。

 では一回、マウスにバトンタッチしますね。


 おー、マウスもよろしくお願いします。

 え?出来れば自分も何か尊称が欲しいと……

 意外にマウス、人間っぽいぞ。

 うーん、先生と師匠は売約済みだからなぁ

 ……後は講師とか博士とか師父とか先輩とかだけど。


 あ、先輩が気に入ったと。

 でも今あげた候補のなかでは、尊称的に下位ランクのような気も……

 そこまで仰々しいと、なんか辛いって……親しみやすさのなかに、敬意が込められてるくらいが丁度いいと。

 まあ、分からなくもない。よし、君はマウス先輩だ。


 改めてマウス先輩、よろしくお願いします。

 ペンタブ師匠がいっていたように、マウス先輩を操作するとタブレット内の人形の顔が横向きになる。

 それと連動して魔方陣内の人形の顔も横向きになった。

 こういう風になるのか、面白いなあ。


 とりあえず、今は鼻の確認だ。私はタブレット画面に写る人形の横顔をチェックした。

 今のところバランス悪い、ってことも無さそうだから、このままでいいかな。

 顔型とか輪郭とか顎を弄ると、どうなるか分からないからとりあえず保留で。


 ついでに顎も今調整してしまおう。それではペンタブ師匠にバトンタッチだ。

 現状の顎は円みを帯びているので、出来ればもう少しシャープな感じにしたい。

 ペンタブ師匠のご指導の元、私は顎のラインを少し鋭角にする。

 あまりやり過ぎると、『ざわざわ』な人になるから注意が必要だ。よし、このくらいにしておこう。


 そしてマウス先輩で再び顔を正面に向けて、顔型と輪郭を確認する。

 顔型は丸型、輪郭は頬のラインが丸いなぁ。まだ若いからか大丈夫だけど、老いたら頬の肉が垂れ下がるタイプだろうなぁ。

 顔型は憧れの卵型にして、頬のラインももう少しシャープに……あ、顔型と輪郭弄ったら、目と鼻と口の配置バランス悪くなった。


 微調整、微調整……何か微妙に右目と左目の高さが違うし、両目の鼻からの距離も違うみたいで、違和感ありまくりだ。

 うーん、難しいよ……ひー。


 え、まず鼻の位置を確定させてから、目を配置した方がいいって?

 自分じゃ自分の体でもあるペンタブ動かせないから、アドバイスしかできないけど、ごめんね……って。ペンタブ師匠、そんな事ないから!

 調整は私がやるべきことだから、気にしないで。アドバイスだけでも、十分ありがたいよ。


 ん?マウス先輩も応援してるって……ペンタブ師匠はマウス先輩と意識が繋がってるのか。

 確かに情報共有してないと、同じ画面操作できないもんなぁ。

 マウス先輩も応援ありがとう!

 そんなペンタブ師匠のアドバイスと、マウス先輩の応援に励まされ、幾度となく試行錯誤を繰り返し、私は納得いく顔パーツの配置を成し遂げることができた。

 顎とのバランスも絶妙だ!

 

 次は唇ね。元々、厚くもなく薄くもなくで、そんなに悪い形ではなかったら、特に形自体は直す必要はないけど、口角が下がっているのが、若干気になっていたので修正。

 あとは唇の色をサーモンピンクに変えてみて、グロス塗った感じでツヤも出してと。


 おー、いいね。ちょっと笑ってみようか。タブレットの右上に表情を変えるツールがあると、ペンタブ師匠が教えてくれたので、画面内の人形を笑顔にしてみる。

 おー、悪くない!

 ちゃんと五割増しになってる。


 あ、でも口から覗く歯がちょっと気になるなぁ。

 ペンタブ師匠にお願いして、表情ツールで口を開けさせる。あ、やっぱりちょっと虫歯ある。

 ん、黒い部分消して、歯も描き変えれば虫歯なくなるって?

 アドバイスありがとう!がんばります。

 私はそれからしばらく、虫歯の黒い部分を修正し、歯を白く塗りホワイトニングに勤しんだ。


 とりあえず、髪と目の色以外の頭部の調整は終わった。

 次は胴体部の修正だ。


全裸回その2は次回です。

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